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息子には、自分の顔を好きになってほしい

娘が生まれたとき、正直ホッとした。「夫に似てよかった」と。

以前も書いたように、私はずっと腫れぼったい奥二重がコンプレックスで、母や妹のようなパッチリ二重になれえ……とアイプチを駆使していたことがある(ならなかった)。それだけじゃない。飛び出た耳も、ふっくら頬も、小さなそばかすも、全部好きじゃなかった。

けれど、それももう昔の話。好きってわけじゃないけれど、奥二重の目だって、少し前に飛び出た耳だって、まあいいか。これが私の顔なんだ、と今は受け入れている。それは単に年齢を重ねて「変えられないもの」を悟ったからかもしれないし、上の記事のように夫が私の顔を好きだと言ってくれているからかもしれない。

何にせよ、30歳過ぎて!ようやく!ありのままの自分を受け入れられるようになったのだ!!!やったーー!!

……と、思っていた。自分にそっくりの息子が生まれるまで。

生まれたばかりの息子は、しわくちゃで誰に似ているというより、猿かな?という感じだったのだけど。少し大きくなってきたら、こりゃあ間違いない、私に似ている……!

もちろん、私よりも澄んだ大きな瞳や長いまつげ、かわいい表情は全然違う。めちゃくちゃかわいい。食べたいほどにかわいいと思っている。実際、ときどき食べてる。

いや、それでも、やっぱり自分にそっくりなのだ。苦しいほどに。思いたくなくたって「ああ、私に似ちゃってごめんなあ」と思ってしまう。そして「そんなふうに思う母親でごめんなあ」と、さらに自己嫌悪に陥る。息子を見るたびに、自分のコンプレックスを思い出してしまう。


これは呪いだ、と思った。

「二重が素敵」という、30年かけて私に刷り込まれた呪い。だってそうだろう、「二重がいい」と、みんな言っていた。「ぱっちり二重がかわいい」「目が大きいほうがかわいい」……そんな言葉とともに、雑誌にはアイプチの使い方が載っていて、広告は二重整形のことばかり。なんで二重じゃないのだ、と遺伝子の仕組みを呪ったことがある人はきっと私だけじゃない。

そんなコンプレックスにまみれた思春期を過ごした私は、大人になった今、この呪いを次世代につないでなるものか!と湧き立つ使命感に燃えている。娘にも、息子にも、そんな何の根拠もない・誰が言い出したのかもわからないような文言で、コンプレックスを抱かせたくない。生まれたままのあなたの、すべてが完璧だと伝え続けたい。

息子のもっちり白い肌も、少し垂れ下がった眉毛も、ちょっと前に飛び出した耳も、もちろん私にそっくりの目も。息子の全部が、本当にかわいいと心から思う。息子にも、そんな自分を好きでいてほしいとも、心の底から、震えるほどに祈る。

そして、そう願うのであれば、私自身がコンプレックスという呪いを捨てなければいけないとも感じている。私が自分の顔を「好き」と思えなければ、息子だって自分を心から好きにはなれないのではないか。だってほとんど同じ顔だしね……。


息子が生まれてから、数ヶ月間、ずっとそんなことを考えていた。このnoteもずっと下書きに入っていたのだけど、実は最近おもしろい現象が起きている。

息子のあまりの可愛さに「私の顔のパーツ、かわいいな……?」と、これまでなかった方向での自己肯定感が爆誕した。どんな顔のパーツだろうと、愛ある笑顔はかわいい!という単純なことを、息子は日々、私に教えてくれている。

あとおもしろいのは、息子の顔を見て「男の子って感じの顔〜!!」と言う人が多いことだ。これは興味深い。なぜなら、(同じ顔の)私自身はずっと「女の子らしい顔」と言われてきたからだ。そして、それが嫌で嫌で嫌で嫌でしょうがなかった。ボーイッシュな服装が似合う子になりたかった。

それがどうだね、瓜二つと言っていい息子は「男の子の顔だね〜!男の子らしい服が似合うね〜!」と言われている。これは、一体……?

その途端、なんだかいろんなことが馬鹿馬鹿しくなり、自分の呪いが解かれていくのを感じた。みんな適当か?その褒め言葉も、その流行に乗った謳い文句も、なんとなく言ってるだけでは??

顔に良し悪しもないし、顔に男も女もないのだ。似合うとか似合わないとか、気にせずに好きなものを着れば良かったんだ。気にせずに好きな顔をしていれば良かったんだ。


私は自分にそっくりの息子が生まれたことで、少しずつ、自分の愛し方を教えてもらっている。いろんな呪いを「なんだよ関係ないじゃん!」と解いてもらっている。

自分がこんなだから、子どもたちに全部を愛せとは言わない。ただ、嫌いなところも含めて、素直に自分を愛せるようになってくれたらなあ……と切に願う。そういう世の中を、価値観を、私も自分の中に作っていかなければいけない。

だからもう、息子に対して「私に似てしまってごめんな」とは思わない。「完コピ」と言われるほど私にそっくりなあなたの顔が大好きだから、私は本当にようやく心の底から自分の顔が好きだと言えるようになったよ。ありがとう。

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