「泊まれる純喫茶」を訪ねたら、そこには”地域への想い”があった。
静岡にある、ちょっと素敵な場所や気になる人を訪ね、そこにあるストーリーをのぞいてみる ”子どもだけじゃない、大人だって学ぶ”。
いままで自分が知らなかった世界や、モノコトについて知るって、学びじゃないか、ということで、今月から投稿を始めます。タイトルが長いので、略して”おとまな”と呼んでください。
静岡の ”泊まれる純喫茶 ヒトヤ堂” って知ってる?
最近、静岡の街中のおしゃれエリアとして注目される ”人宿町” にある、「泊まれる純喫茶 ヒトヤ堂」さん。
昔懐かしい大正ロマンな雰囲気が漂う、まさに”純喫茶”な店構え。
しかし、ここはただの喫茶店ではありません。
なんとここは、「泊まれる」喫茶店。
1階に喫茶店と宿泊者用のラウンジがあり、2階~3階がゲストハウスとなっています。そういった形態は、全国でも珍しく、旅好き女性のためのメディア”ことりっぷ”などでも、取り上げられています。
このヒトヤ堂さんが開業したのは、今から約2年半前。
そして、開業をしたのはなんと、20代の女性お2人。
静岡県出身の村松さんと、東京都出身の小島さんによってオープンされました。
そして現在では、村松さんの友人である富永さんも加わり、3人で運営をされています。
ここには、どんなストーリーがあるのでしょうか?
ヒトヤ堂のみなさんにお話しを伺ってみました。
ヒトヤ堂のストーリーのはじまり
それは、村松さんの大学時代までさかのぼります。
たまたま海外旅行でゲストハウスを利用したことをきっかけに、ゲストハウスの魅力、そして秘めた可能性に、心を揺さぶられた村松さん。ほのかに「ゲストハウスをやってみたい」という想いが芽生えます。しかし、その胸の内をすぐに形にすることはなく、大学を出た後は地元に帰り、静岡市にある広告系の会社で営業職として勤めました。そして、数年程で退職。
退職後、「やっぱりゲストハウスをやってみたい!」という想いを、いよいよ具現化することを決断します。
その際に、一緒に取り組む決断をしたのが大学時代の友人である小島さん。
小島さんは当時、東京でCMや映画の美術スタッフとして働いていましたが、仕事に対して悩んでいた時期であり、転職も考えていたそうです。そんな中、久しぶりに近況報告をしようと、村松さんと再会する機会がありました。
大学時代に村松さんから、「ゲストハウスをやってみたい」という胸の内を聞いたことがある小島さん。近況報告をし合う中で、村松さんがまだゲストハウスに対する夢を抱えていることを聞きます。その想いを知り、「わたしも一緒にやってみよう!」と決意。自らも会社を辞め、ゲストハウス開業プロジェクトに加わることになりました。
ある素敵な喫茶店と、人宿町という街との出会い
こうしてプロジェクトが動き出しました。まず最初に、彼女たちは物件探しを始めます。どのエリアで開業しようか細かいことは決めず、自分たちにとって馴染みのある県内のエリアで探していたんだそう。
その中で、”ある素敵な物件” に出会います。それは、その場所で約40年ほど営業され、地域に愛されていた喫茶店でした。彼女たちは、その喫茶店のレトロな雰囲気に心惹かれ、「ここにしたい!」と一目惚れ。当初はゲストハウスだけを開業する想定でいたそうですが、せっかくなのでこの素敵な喫茶のスペースを活かしてゲストハウスをやってみよう!と、決めます。
物件を決めてからは、クラウドファンディングなどで支援を募りながら、改装作業を開始。塗装や看板作りなど、自分達でも出来る作業は、仲間にも手伝ってもらいながら準備を進めていきました。
また開業するにあたり、彼女たちはある想いを持っていました。
それは「この街の賑わいに、自分たちも貢献したい!」ということでした。
彼女たちが開業を決めた”人宿町”のエリアは、かつては映画館や劇場が立ち並び、多くの人で賑わっていた地域でした。
しかし、2011年に映画館や劇場が相次いで撤退したことを機に、空き店舗が増え、少し寂しい雰囲気が漂う街となってしまっていたのです。
そんな中「人宿町の街に再び賑わいを取り戻そう!」とする、まちづくりのプロジェクト(以下リンク)も動き出していました。
物件を決めた時点では、彼女たちはまだこのプロジェクトについて知らなかったそうですが、その想いに触れ、「ゲストハウス=地域と訪問者を繋ぐ空間」として、自分たちも人宿町の賑わいに貢献したいと感じるようになりました。
そんな想いを感じつつ、着々と準備を進め、物件探しから約1年後にヒトヤ堂は無事に開業をしました。
また同年、周辺には数々の飲食店や劇場などもオープンし、人宿町は静岡の街の”おしゃれエリア”として生まれ変わりました。
村松さんは人宿町周辺について、「私の相方(小島さん)は東京から来ているのでその目線もありますが、ここ(人宿町)は新しい人が入ってきたり、移っていくことにすごく寛容的だなと感じています。新しいことを始めるのに、とてもやりやすいなと思いますね。」と話します。
街を変えていこう!と、新しいことにチャレンジする人々のエネルギーと、古くからそこで営む方々のパワーが合わさって、新しい”人宿町”をつくりだしているのですね。
”泊まってみたい宿”となった、ヒトヤ堂
村松さんに、最近のヒトヤ堂についてお話しを聞くと、「開業した1年目は、静岡に泊まりで用事があり、安かったので、たまたまこのゲストハウスにしました、という方が多かったんです。でも、泊まってみたら思ったより宿も良いし街も良いね、と満足して帰ってくださる人が多くて。でも最近は、ここが面白そうだから泊まってみたいと、選んで来て下さる方が多いです。その分ハードルも上がったな、と感じていますが(笑)でも、今の情勢で外出する機会減っている中、そうやって目的地として来て下さる方に支えられていて、本当にありがたいことだなと感じています。それをもっと対地域とか、周りに喜んでもらえるよう波及させていきたいなと思います。」と話してくださいました。
いまでは、「一度泊まってみたい!」と、全国から人が訪れるようになったヒトヤ堂。
県外向けの情報発信をどのようにしているのか聞くと、村松さんが広告に携わる仕事をしていた時に培ったスキルを活かしながら、それぞれの媒体(各SNSや宿泊サイト等)の特徴を押さえた上で、試行錯誤しながら行っているとのこと。
特に、インスタグラム(@hitoya10)は、ヒトヤ堂の世界観がよく表れた、素敵な写真の数々が人気を集めており、投稿を見て多くの若い女性が訪れています。
またヒトヤ堂は、つい先日に、ゲストハウスから徒歩2分程の場所に、姉妹店となる「本とおくりもの ヒガクレ荘」もオープン。
ここには、喫茶店でゆっくり読んでみたい本や、誰かに贈ってみたくなる本、素敵なおくりものたちが並んでいます。
変わらず地域の人に来てもらえる”喫茶店”でありたい
新店舗もオープンし、ますます街の賑わいづくりを広げているヒトヤ堂。
今後の展望について聞くと、「そうですね。まず目先のことで言うと、新店舗が出来たので、ちゃんと内部を整えていきたいです。今後については、”変わらないこと”が展望というか、いかに長く続けていくか、ということを意識しています。私たちのような世代に経営が変わっても、前の喫茶店の時から通い続けて下さっているご年配の常連さんもヒトヤ堂に来て下さるんです。その後ろでインスタを見て来店した女子大生がいたりして。なかなか普通ではつくれない光景ですよね。いくらインスタなどで情報発信をしても、地域にある喫茶店を求めているおじいちゃんやおばあちゃん達は来てくれないですし、そういった方々にずっと来てもらい続けるってすごく難しいなと感じています。そういった方々が絶えず来て下さる場であり続けることが、いまの目標です。」と村松さんは話します。
開業した当時の2人体制から、2年目には3人体制となり、また新店舗ができたりと、この短期間の間にも日々変わり続けてきたヒトヤ堂。お店に変化がある中でも、地域の常連さんがいつもと変わらずお店でゆったりとくつろいでもらえる環境づくりについて考える姿が、印象的でした。
おわりに
”泊まれる純喫茶 ヒトヤ堂”さんを訪れると、
夢を叶えてゲストハウスを開業し、
”地域の人にとっても、訪問者にとっても”
心の拠り所であり続けるため、日々試行錯誤する。
そんな3人の素敵な女性の姿に、出会うことが出来ました。
ヒトヤ堂さん、ありがとうざいました。
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