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三宅香帆『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文』

忙しい先生のための作品紹介。第64弾は……

三宅香帆『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文』(河出書房新社 2022)

対応する教材    『伊勢物語』「芥川」、『枕草子』「宮にはじめて参りたるころ」など
ページ数      252ページ
読みやすさ     ★★★★☆

図・絵の多さ    ★☆☆☆☆
レベル       ★☆☆☆☆
生徒へのおすすめ度 ★★★★★
教員へのおすすめ度 ★★★☆☆

作品内容

 本書は河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズの一冊。大学院で国文学を学んだ著者が、「学校では教えてもらえない、古文のおいしい部分」(まえがきより引用)を詰め込んだ本です。

 ここでいう「古文のおいしい部分」とは人間関係の面白さであると著者は説きます。帯に「名作古典はカップリングだらけ⁉」とあるように、古典文学の登場人物や歴史上の人物二人を取り上げ、二人の関係性を基にさまざまな古文作品の魅力が書かれています。

 本書の内容は、古文作品の具体的な箇所を現代語訳で挙げながら、その意味や背景を解説し、著者の感じる面白さや突っ込み所を語っています。紹介されている作品は『枕草子』や『古今和歌集』といった定番教材から、『落窪物語』『有明の別れ』など、教科書ではあまりなじみの少ないものまでさまざまです。

おすすめポイント 馴染みの薄い古文を身近に

 本書の一番の魅力は、古文の魅力を、現代の言葉で、丁寧に説明しているところです。「そもそも古文は近寄りがたいし、解説も堅苦しい」という印象を持つ人も多いのではないでしょうか。しかし、「文芸オタク」を自称する著者が熱量たっぷりに綴る文章は、まるで好きなアイドルやアニメを語っているかのようです。このカジュアルさが、古文の近寄りがたさを取り去ってくれるのではないでしょうか。

 また、さまざまな作品の魅力を「カップリング」で語る点も特長的です。ある人物一人に焦点を当てるのではなく、二人を取り上げるのは、人間関係が魅力だと語る著者のメッセージが込められています。二人の人物を取り上げることで、その関係性から作品の魅力が垣間見えます。

 「萌え」、「妄想」、「カップリング」などという言葉を聞くとかえって手が遠のいてしまう人もいるかもしれませんが、解説は非常に丁寧でわかりやすく、誰にでも読みやすい本です。

活用方法

 本書は基本的には古文(というもの全体)の魅力を紹介する本ですので、授業で扱う教材に合わせて補助教材として使用する、というよりは、古文という科目に興味を持たせるための参考図書として生徒におすすめするのがよいでしょう。

 しかし、本書に登場する作品の場面は、古文にあまり親しんでいない人でも理解できるようにわかりやすく解説されていますので、その箇所を扱う際には、内容理解の補助として、あるいは解釈の一例として提示することも十分考えられます。

著者本人の紹介記事もありますのでぜひ

【本書に登場する場面のうち、教科書教材となっているものの例】
『枕草子』「宮にはじめて参りたるころ」
『紫式部日記』「清少納言批判」
『源氏物語』「いづれの御時にか」
『伊勢物語』「狩の使」
『伊勢物語』「芥川」
『更級日記』「門出」
『更級日記』「源氏の五十余巻」
『万葉集』「あかねさす」「むらさきの」
『古今和歌集』「仮名序」

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