『虞美人−新たなる伝説−〜長与善郎作「項羽と劉邦」より〜』(宝塚歌劇団花組 2010年)
忙しい先生のための作品紹介。第48弾は……
『虞美人−新たなる伝説−〜長与善郎作「項羽と劉邦」より〜』(宝塚歌劇団花組 2010年)
対応する教材 「鴻門之会」「四面楚歌」(『史記』)
上映時間 2:36’00”
原作・史実の忠実度 ★★★☆☆
見やすさ ★★★☆☆
レベル ★★☆☆☆
生徒へのおすすめ度 ★★☆☆☆
教員へのおすすめ度 ★★☆☆☆
作品内容
秦の始皇帝の死後、覇権を争った二人の将軍・項羽と劉邦の物語を描いたミュージカル作品です。
楚の国の将軍である項羽は、武勇に秀で、叔父とともに兵をあげて天下を目指していました。その頃、劉邦も仲間と共に天下を目指し始めます。
先に咸陽に入った方がその地の王になれるという約束の下、項羽は北へ、劉邦は西へと向かいます。戦いの道中、項羽には范増、劉邦には張良を軍師に迎え、武力と知力を持って兵を進めて行きます。最終的に天下を取るのは、項羽と劉邦のどちらなのでしょうか。
おすすめポイント 項羽と劉邦、強いのはどちらだろう
本作では、項羽と劉邦の戦いだけではなく、項羽と虞美人の恋も色濃く描かれています。虞美人は『史記』では「四面楚歌」でしか登場しませんが、本作では項羽との馴れ初めや関係性も取り上げられているのが特徴的です。戦いにおいては容赦のない項羽が妻の虞美人だけに見せる優しい姿から、大事なものを守り抜くという強さが見受けられます。この姿勢はどんなに厳しい戦局になっても貫かれており、有名な「四面楚歌」の場面(2:01’15”〜2:03’30”)では、自分の生まれ故郷でさえも敵に回ってしまった中で「虞よ、あなたをどうしようか」と呟きます。
対する劉邦は、持ち前の明るさで多くの人を味方につけながら突き進む人徳を持ちつつも、妻や家族に対しては冷たい人物として描かれています。人前では気丈に振る舞い、戦を勝ち進めて行く劉邦ですが、その心は虚しいものだと独白します。
覇権を争う中では、両者の「強さ」が競われます。圧倒的な武力と、相手の行動を先読みできる知力。そして一人の人間を長年大事に想う力と、多くの人に愛される力。どのような力を持つ人が、人として「強い」のかを考えさせられる作品です。
活用方法
漢文の定番教材である「鴻門之会」と「四面楚歌」を学ぶ前に、項羽と劉邦に関する大まかな物語を理解するのに適した作品です。
作品を全編見ると2時間以上あるため、授業で扱う場合は、教材に対応した場面のみ視聴させることをお勧めします。「鴻門の会」の場面(1:04’00”〜1:13’00”)では、范増が玉玦を示すところがあることなど、漢文を読んだ時にもイメージが浮かびやすくなるような作りになっています。
授業時間で本編全体を見るのは難しいとは思いますが、登場人物の内面を鮮やかに描いた本作を見れば、漢文を学ぶ際にも心情を想像しながら楽しんで読めるようになるのではないでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?