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『ときめき百人一首』(小池昌代)

忙しい先生のための作品紹介。第31弾は……

小池昌代『ときめき百人一首』(河出書房 2017年)
対応する教材    『百人一首』
ページ数      236
原作・史実の忠実度 ★★★★★
読みやすさ     ★★★☆☆
図・絵の多さ    ☆☆☆☆☆
レベル       ★★☆☆☆

作品内容

各ページ、歌のあとに現代語訳・語釈 ・解説  が付いており、中でも現代語訳が8行程度の現代詩になっているところが特徴的です   。現代詩独特のリズムと余韻を持たせて訳したことで、元の歌の世界観をうまく現代版に置き換えられています 。

章末には、「和歌のキーワード」、「歌人たちの生活と和歌」、「役職・身分」といったコラムがついており、 和歌を学ぶために必要な知識が簡潔にまとめられています。  

学習のための参考書というよりも、『百人一首』の入門書という印象が強く、各首の文法や表現技法に関する詳しい説明はありません。しかし、わかりやすい言葉で 簡潔に解説されている ことから、「和歌って難しそう」と思う人にも読みやすい1冊です。

おすすめポイント「やさしい百人一首」

本書は、河出書房の「14歳の世渡り術」シリーズのうちの1冊です。中学生を対象としたこの企画にふさわしく、本書 も話し言葉に近い文体で書かれていて、読みやすくなっています。

例えば、  解説の文体では  、和歌の知識があまりなくてもわかりやすいと感じる言葉選びがされています 。ここで、過去に紹介した『百人一首』関連書籍の文体と比べてみ ましょう。以下、表現技法の解説のなかから、「本歌取り」の解説文の1文目を並べてみ ます。

『ときめき百人一首』:古(いにしえ)の歌を元に、その心やことばを借りて、歌を作ることです。
『マンガでわかる百人一首』:有名な古歌の一部を取って、それを連想させて新たなイメージを重ねて感動を深める技巧。
『百人一首解剖図鑑』:本歌取りとは、誰もが知っている古歌を意図的に取り込んで世界を想像する修辞法。

 下の2冊が絵やマンガを用いて視覚的にわかりやすく解説した本であるのに比べて、『ときめき百人一首』は文章だけで構成されています。その分、柔らかい文体で書かれていることで、『百人一首』初心者にも優しい本になっています。

授業で使うとしたら

1首あたり1ページ程度で 簡潔にまとめられていることから、学習したい歌のページのみを印刷して読むには適した長さです。ただ、解説にまとめられているエピソード等は、比較的オーソドックスなものが多いため、学校で配っている『百人一首』の参考書がある場合には、目新しさはあまりないかもしれません。     

これまで書いてきた通り、本書の良さは何と言っても読みやすさだと思います。中学生が1人で読むには、細かい文法の解説付きの本よりも、本書の方が読みやすいのではないかと思うので、授業で紹介したり図書室に置いてもらったりするのが良いのではないかと思います。

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