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『百人一首という感情』(最果タヒ)

忙しい先生のための作品紹介。第20弾は…

最果タヒ『百人一首という感情』(リトルモア 2018)
対応する教材    『百人一首』
ページ数      299ページ
原作・史実の忠実度 ★★★☆☆
読みやすさ     ★★★★☆
図・絵の多さ    ☆☆☆☆☆
レベル       ★★★★☆

作品内容

 現代詩人の最果タヒ氏が、百人一首の100首をテーマに書いたエッセイです。ページ数は見開き1ページから2ページまで、歌によって様々です。それぞれの歌の訳から始まり、最果氏の目線で詠者や歌の背景について考えたことに関するエッセイへと続いていきます。この本の特徴は、1000年前に読まれた歌を、ぐっと現代に引き寄せて考えられていることです。「しのぶれど」では、恋の色が出てしまうなんて少女漫画みたいだ、と書かれています。和歌は難しいと思っていたけれど、確かに今でもこんな表現・感情があるなと気づかされる一冊です。

おすすめポイント 和歌を肴に、想い巡らせよう

 肩肘張らずに千年前の歌を楽しもうと思えるのが、この本の良いところです。百人一首の参考図書では、詠者や古典常識の説明などが書かれ、そのエピソードも似通っている場合が多いです。しかし、この本では、その歌から考えたことが綴られています。例えば「君がため」であれば、ラブストーリーによくある「愛に殉じる」って何だ?という話題を中心に書かれています。『ロミオとジュリエット』で、相手が死んだから生きていけないというのは、本当に愛に生きたと言えるのかという指摘も鋭く、新たな視点に気がつかせてもらえます。話はしっかりと「君がため」の解釈に終着しますが、読み進めるうちに「愛ってなんだ」と考え始めてしまう見開き2ページ。和歌を肴に想いを巡らせる経験ができるので、普段から考えることが好きな方にとてもおすすめです。

授業で使うとしたら

 百人一首を全く知らなくてもエッセイとして十分に面白いのですが、それぞれの歌の解釈を知っている人ならば、新たな視点を楽しめる本です。そこで、授業レベル(星3)よりも習学後の方がより効果的に使えると考え、冒頭のレベルでは「★★★★☆」としました。各首のページはそれほど長くないため、授業で歌の詳しい説明をした後に紹介するというのが良いでしょう。

 また、短いエッセイという特徴を生かして、百人一首以外の授業の例文として使用することも考えられます。漢字テストや文法の問題づくりなどで、国語に関連する題材の短い文章を探している方にもおすすめです。

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