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「青い文学シリーズ こころ」(日本テレビ)

忙しい先生のための作品紹介。第17弾は……

アニメ「青い文学シリーズ こころ」(日本テレビ 2007)
対応する教材    『こころ』
上映時間      47分
原作・史実の忠実度 ★★☆☆☆
見やすさ      ★★★★★
レベル       ★★★☆☆

作品内容

 日本文学の名作をアニメ化した「青い文学シリーズ」で、夏目漱石『こころ』を扱った作品。主人公の「先生」の声を俳優の堺雅人氏が、キャラクター原案を『バクマン。』などの人気作を手がけた小畑健氏が担当していることからも注目を集めました。

   本作は、原作『こころ』の「下 先生の遺書」のみを取り上げ、下宿先のお嬢さんに恋をした「先生」と、その友人でこうくお嬢さんに心惹かれる「K」の三角関係に焦点を当てています。全体は二つに分かれ、同じストーリーが前半は「先生」視点、後半は「K」視点で描かれています。

おすすめポイント 「向上心のないやつは馬鹿だ。」CV.堺雅人

 『こころ』のストーリーをなぞりつつも、あらゆる点で新解釈を含んだ作品であるため、原作を読んだ際の自分の解釈と比べながら見るのがオススメです。

    例えば、「先生」とはどのような人物だと思いますか。私は、落ち着いていて少しミステリアスな雰囲気をイメージします。そのため、声優を務めた堺雅人氏の声がとても合っているように感じました。また、お嬢さんに恋心を抱きながら、下宿先に親友の「K」を呼び寄せた「先生」。「先生」から見た「K」は、自分の恋の道を脅かす存在でしたが、果たして「K」からは「先生」は、どのように写っていたのでしょうか。

    このアニメーションを機に原作を読み返したり、自分なら後半はこういうストーリーにするな、と考えたりするのも楽しいのではないでしょうか。

授業で使うとしたら

 本作は、『こころ』の下巻の映像化であり、前半の「先生」の視点は教科書掲載箇所のアニメーション、後半の「K」視点は原作と同じ内容を別視点で描いたアナザーストーリーです。そのため、授業で使用するパターンはいくつか考えられます。

 教科書で本文を細かく読んだ後にストーリーの大枠を振り返るのであれば、前半の「先生」の物語のみ視聴すれば良いでしょう。また、後半の「K」視点のストーリーは、一人称視点で書かれた『こころ』を別の視点から見るとどうなるかを考えるきっかけとしても使えそうです。前半後半ともに20分程度で、合わせても45分程度なので、1時間程度授業に余裕ができた場合には両方見てもよいかもしれません。

 ただし、前半後半ともに作者による独自の解釈が多く含まれていることには注意が必要です。「K」を不気味な存在として誇張していることや、「お嬢さん」が「先生」と「K」を翻弄した存在として描かれていることなど、原作では書かれていないことを想像して台詞や場面を補いながら映像化しています。一方、独特な解釈が多いからこそ、原作との差異や共通点に注目することで、原作の読みを深めることにも想像力を膨らませることにも繋げられます。

    以上のように本作を使用した授業例はいくつか考えられますが、『こころ』は本文も長く、授業で扱うことも多い単元です。無理に時間を使って視聴する必要もなく、『こころ』のアニメーション化作品としての紹介にとどめても良いかもしれません。


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