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『5文字で百人一首』(すとうけんたろう)

忙しい先生のための作品紹介。第35弾は……

すとうけんたろう『5文字で百人一首』(講談社 2021年)
対応する教材    『百人一首』
ページ数      226
原作・史実の忠実度 ★★★★☆
読みやすさ     ★★★★★
図・絵の多さ    ★★☆☆☆
レベル       ★☆☆☆☆

作品内容  

 タイトルの通り、 『百人一首』のそれぞれの歌を5文字で表現している のが見どころです。例えば、1番 「秋の田の」であれば 「しけた仮屋」というように、5文字に 和歌の意味が 凝縮されています。

 内容面で特徴的なのは、解説部分が和 歌の解釈に焦点化されているところで、「訳」に関する記述がページの半分以上を占めています。各首見開き1ページの両端に和歌の原文と5文字が書かれており、それらを繋ぐように、原文の逐語訳とそれを簡略化した「意訳」が載っています。  作者や用語などの解説もついていますが、和歌そのものの解釈がとても丁寧にされていることがわかります。

 また、デザインが親しみやすいところも特徴の一つです 。各ページに描かれた猫のイラストやページによって異なる配色、ポップな印象のフォントから、絵本にも近いようなデザインだと言えます。  

おすすめポイント 31字を5文字に凝縮!

 この本の魅力は、何と言っても5文字の訳です。21番「今来むと」であれば「この嘘つき」、38番「忘らるる」であれば「貴方死ぬよ」といったように、なかなか鋭い言葉で書かれたものも 多くなっています。

 和歌は、修辞などを駆使して31文字に多くの内容を読み込んでいます。 それを 5文字で 言い切る本書は、原文の良さが半減してしまうと 思われるかもしれません。しかし、和歌の意味の概略を掴むには、とても面白く 読める1冊だと思います。難しいことは考えずに、まずは『百人一首』 を大喜利のように楽しんでみよう、と気楽に読めるのも良いところです。   

 5文字の訳は、全ページの左側の  縦いっぱいに大きな文字で書かれているので、本をパラパラとめくって気になったページの歌を見てみる、という使い方もできそうです。

授業で使うとしたら

 『百人一首』の解説本は多くありますが、本書は5文字で端的に訳すという面白い試みがされている、珍しい 一冊です。デザイン性にも富んでいて、文章量も少ない ので、古典に苦手意識のある生徒に勧めたい1冊です。
また、『百人一首』 の授業をする際に、本書に出てくる5文字を授業の冒頭で紹介して、どの和歌を表しているかを当てるクイズにも使えるかもしれません。  

 さらに、この本の企画自体を授業で扱って、生徒も和歌を5文字で訳してみるというのも面白いのではないでしょうか。『百人一首』を現代語の5文字で表すためには、和歌に出てくる古文単語や掛詞などの修辞法を理解する必要があるため、原文の勉強にもなるはずです。     

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