言葉
「いいな〜まなちゃん。行きつけのバインミー屋さんとか、できちゃうんだろな!」
ベトナム留学へ向かう成田空港のチェックインカウンターで、先輩は言った。
この言葉が、わたしの不安や淋しさを一気にわくわくに変えてくれたのだ。
先輩の予言どおり私は毎日、昼ごはんにバインミーを食べている。学校と家の間にある屋台で、一個8000ドン。約40円でこのボリュームはコスパが良すぎると思う。中には卵焼きやパクチー、大根と人参のピクルスが挟んであり、甘辛いチリソースをかけていただく。パリパリふわふわのフランスパンに具の塩加減、酸っぱさ、辛さ甘さが絶妙なのだ。ソーセージを追加しても2万ドン、約100円である。
先日、バインミーを頼んでしまってから、財布を忘れたことに気がついた。仕方がないので店のお姉さんにそれを言うと、
「明日でいいよ!」
いつもニコッと笑いかけてくれる彼女だが、まともに話したのはこれが初めてだった。
憶えてくれてたんだ、私のこと!
常連認定されたようで、すごく嬉しかった。
クラクションと排気ガスと、小さなプラスチック椅子。ベトナム生活がいつも通りの風景になってきて、でもなんだか、心からの繋がりももうちょっと欲しいな..ちょうどそんなことを考えていた時だった。
“Em ơi! Em ăn gì đấy, xôi hay bánh?”
(キミ!キミは何食べるの、おこわ?それともバインミー?)
すっかり聞きなれた声が耳にこだまする。きっとここのバインミーの味を、私は忘れないだろう。
行きつけのバインミー屋さん、
できたよ 先輩。