「買うこと」の話

「モノ消費からコト消費へ」と言われて久しい。
とはいえ、私達は「買う」をするときには最安値を探すし、
一番お得に手に入れられる方法を探すし、値切る場合だってある。
対象がモノなのかコトなのかの違いであって
そこの根本は変わっていないのではないだろうか。

特に、電化製品であれば価格.comで最安値を探した経験がある方も多いだろう。そして、その価格を提示しつつ店頭で値切り交渉をする方もいらっしゃるだろう。

私は、この作業があんまり好きではない。
別に最安値をググって値切り交渉すること自体が億劫なのではない。
「最安値をググって値切り交渉してまで買う自分」が好きではないのだ。
頭では「安く買えるならその方がいい」「無駄遣いする必要ない」というのはわかっているのだが、心が「そこまでして買うものが身の丈に合っているのか」と問いかけてくるのだ。
過激に表現すると、自分が貧民になってしまった気すらする。

また、家電量販店で各メーカーの高級モデル(有機ELテレビとか、ハイレゾオーディオとか)が量販店の「ポイント10倍!」「新製品!」「下取り3000円!」「キャンペーン対象商品!」と叫び続ける毒々しいPOPと騒がしいBGMにまみれているのもなんだか見ていてしんどい。
高級機はスポットライトを浴びて、堂々と文字通り自分を安売りせずに居てほしいと思ってしまうのである。
(そういう意味ではApple storeのMacの展示やソニーストアのBRAVIAの展示、マイクロソフトのSurfaceの展示、蔦屋家電の各展示は本当にツボ。)

私が高級機を買うときには、買うことそのものも楽しんでいて、「高級機を買う私」に酔っているんだと思う。
「今から私は高級モデルを買っちゃうぞー!」という気持ちで。
「今から私は高級レストランでごはんを食べまーす!」という時に、
いかにしてそのレストランのコースメニューを値切るかを考えたくない感覚とほぼ一緒だと思う。
だって高級機を買うんだもの。それくらいふわふわした気持ちだって良いじゃない。

どうして家電量販店はあんなに視覚的にも聴覚的もうるさいのだろうか。
メーカー側がどんなにクールなプロダクトをデザインして、リリースしても
あれじゃ良さが半分以上消えてしまっている気がする。
確かに家電量販店は最新家電が揃っていて、生活に夢が広がる。広がるからこそ、さらに量販店そのもののデザインや展示に凝った上で、より感動させてほしいのだ。
ポイント10倍だって、下取り3000円だって、とても重要な情報だというのはわかっている。それでももっとPRの仕方があるだろうと思ってしまうのである。
値引きだって、ポイント10倍だって、貴重だしありがたいのはわかっている。結構心揺られる。
でもどこか、自分がとても貧乏になったような感覚におとしいれられてしまう。

メーカー直営店舗はBGMガンガンじゃないし、
POPも最低限だ。視覚的にも聴覚的にもうるさくない。
他メーカーとの比較ができないというデメリットはあるけれど、それこそ比較だけならネットででもできる。
価格は若干家電量販店より高いこともあるけれど、実はサポートが手厚かったりアクセサリの割引があったり、金銭面でも悪いことだらけじゃない。
「うるさくない場所で買うための、自己肯定感代」と思うことだってできる。

だから私は、今日もメーカー直営店の方をチェックしてしまう。
これは私がどこか見栄っ張りで空虚なTOKYO GIRLだからだろうか。


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