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こどもの大切な玉ねぎのたまちゃん

私の母は、捨てるのが苦手な人でした。

何度、すっぱい牛乳を吐き出したことでしょう。そして、ヨーグルトと姿を変えたかつての牛乳が、ドボドボとグラスに落下していくのを何度目撃したことでしょう。。

食材管理がザルだったので、我が家の窓辺に立派な青葉を付けた里芋が飾られていることもよくありました。

余談ですが、母は年の近い自分の姉(私にとっての叔母)と、よくいろんなことで張り合っていました。

キチントさんな叔母は、水耕栽培となった里芋に花を咲かせ、それを母に自慢し、悔しい母は里芋をさらに日当たりの良い場所に移動させていました。

どっちもどっちですが、姉妹っていいなと思ったのを覚えています。

さて、そんな似なくてもいいところをしっかりと受け継いだ娘の私です。

私も、食材管理がザル。

しかし、ある出来事をきっかけに食材管理が前よりましになったような、、。

そのきっかけとは、子どもが芽の生えた玉ねぎに名前を付けてかわいがり始めたことです。

アメリカのスーパーで里芋は、EDDOと呼ばれて売られています。正式名は、EDDOEらしいが、密かに「江戸、、!」と、日本の影響すごいなと喜んでいました。まったくの勘違いですが。なぜか、こちらの里芋は根が出るとすぐに腐ってしまうので、まだ水耕栽培まで到達したことはありません。

以前から、玉ねぎやジャガイモに根が生えることはありました。しかし今回は、私の料理熱が冷めたスキをねらって、素晴らしい成長を遂げた玉ねぎがあったのです。

根っこだけでなく、にょっきと立派に生えた芽には生命力がみなぎっており、感動しました。

そこで、その感動を子供にもおすそ分けしようとご披露したら、、、

「かわいいい、、、育てよう!」

と。子供(11歳)の隠れた母性本能みたいなものを刺激してしまったらしいのです。

そこから、

「何にいれればいい?土はどこ?」

と、要求の嵐。。 メンドクサイ、、、。

植木鉢とか土を用意するのが面倒だったので、

「ヒヤシンスみたいに、水耕栽培でいいんじゃない?」

と、適当な案を提案しました。

そこで、直射日光の当たらない場所で保管されていた玉ねぎは、水の入ったグラスに乗っけられ、窓辺へと住まいを変えたのでした。

どっぷり水につかってはいけないと、爪楊枝とテープで玉ねぎの受け皿を作り、グラスの横には紙で作られた小さな看板が置いてありました。

「たまちゃん」


こどもお手製の名札

ひな人形に置かれる名前札のような立て看板を横に置き、玉ねぎのたまちゃんは、しばらく水耕栽培で我が家の窓辺に置かれていました。

こどもは、毎日たまちゃんの成長を楽しみにしていました。

「根っこが伸びたよ!たまちゃん、えらいねえ」

えらいかわいがりようです。

その愛に応えるように、たまちゃんもニョキニョキと成長していきました。

しかし、やはり水耕栽培には限界があるのでしょう、今までの勢いがだんだんとしぼんでいき、ピンと伸びていた茎の部分が横に倒れてきました。

それを見て、子供がパニックになりました。

「だめだ、水じゃダメだ。たまちゃん死んじゃう」

そんな子供の悲しみを見たら、土を用意しないわけにはいきませんよね。

家にあった園芸用のカサカサ土の入った植木鉢に住まいを広げた、たまちゃん。

これでたまちゃんは、近い未来の我が家の食材を支える金の玉ねぎとなるかと、私もちょっと期待し始めたものでした。。

しかし、

「ママ、この土おかしいよ。水を吸わない。。」

土にも、消費期限というものがあるのですね。知りませんでした。

まるで砂漠の土のようです。まったく水を吸いません。。

「ママ、、たまちゃん元気ないよ。。死んじゃう。。」

たしかに細く伸びた葉は、恨めしそうな柳の枝みたいになっています。

しかし、ちょっと腐り始めているのか玉ねぎ臭のするたまちゃん。(そりゃ玉ねぎですからね)

土を新たに購入する気になれません。でも、たまちゃんを愛しちゃってるわが子を悲しませたくもありません。

厄介だな、、。

結局、玉ねぎ臭のする部屋より子供の悲しむ顔を見ることの方がしんどいので、土を買いました。

たまちゃん、ワンモアチャンス!

土のパッケージには、「6か月間、栄養保証!」とか書いてあったようで、子供は今から6か月後の心配をしています。

たまちゃん、6か月後には子だくさんになっているか、はたまた土に溶けて消えているか、、、。楽しみだなあ。。。

そんなわけで、私は今、食材管理に気を使っている。

第二のたまちゃんを生み出さないために! 

だって、面倒だったんだもん!!

最後までお付き合いをいただきまして、ありがとうございました。



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