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日々の生活の説明

私たちの住んでいるグループホームは、NPO法人黒川こころの応援団が経営しているところだ。

ここでは就労支援B型事業所とグループホーム4棟を経営しており、多くの利用者はB型作業所で日中活動をしてグループホームに帰る。
しかしそれは強制ではなく、グルホに住みながら一般就労している人、別事業所に通っている人、作業所には来ているがグルホではなく通所の人もいる。

グルホは男性寮の『とも』『かど』、女性寮の『はる』『ひめ』があり、作業所を中心に半径300メートル以内にある。
私と夫は『ひめ』の独立室という他入居メンバーとは会わない構造の部屋に住んでいる。
独立室は『ひめ』に4部屋、『はる』に1部屋あり、一般的なアパートと同じような造りだ。
あくまでマナは男性だが、この仕組みがあるから女性寮でも入居することができる。
入居者は全部のグルホ合わせて30人弱。
それぞれの寮で独自の催しもあり、『はる』『とも』では定期的に"食べる会"という入居メンバーたちが自分たちで食事を作りみんなで食べる、というイベントがある。
基本的に全グルホで朝夕は食事が提供される。
それぞれのホーム内に厨房があり、パートの職員が食事を用意してくれる。
栄養士などではないので、ごく普通の主婦が献立を考えて作っているイメージだ。
そのため味つけに差異があったり、たまに謎の創作料理が出るが、基本的に一汁三菜が揃っており美味しい。
昼食は各自で用意だが、作業所に喫茶店部分があるのでそこで摂る人も多い。

作業所は『喫茶店』『美術館』『アトリエ』のスペースがあり、入ってすぐのところは"街の喫茶店"となっている。
文字通り喫茶店である。
作業所に関係ない一般のお客さんも普通にコーヒーを飲みに来る。
いわく、20年前に設定した価格のまま値上げするタイミングを逃し続け、採算度外視の激安店だ。
コーヒー1杯300円、きのこパスタ350円、ホットサンド100円、フレンチトースト150円、など。
メニュー数もそこそこあり、どれもこれもこのくらいの値段のため、常連客もいる。
作業所に通っている人が作っているのではなく、パートの職員が提供している。
味も普通に美味しい。
この味でこの値段なら安すぎるくらいである。
また、作業所のメンバーは"定食"と呼ばれる日替わりランチを100円で食べることができる。
エビフライ、タコライス、肉うどん、その他様々なメニューが日替わりで出るが、どう考えても100円では提供できないようなボリューミーで食べ応えのある定食だ。
そのため人数制限があり、超過した時はじゃんけんやくじ引きで決める。

『喫茶店』を奥まで進むと『美術館』がある。
文字通り美術館であり、一般客にも無料で公開している。
そこでは主に障害のある画家や特殊な状況で描かれた絵、造形などが展示されている。
先日までは死刑囚の描いた絵を展示されていた。
飾る絵画のテーマはまちまちだが、主に代表が感銘を受けた東京都八王子市にある平川病院の造形教室の繋がりが多い。

そもそも黒川こころの応援団は代表の妻が精神的に調子を崩した時、不安定な状態でも他者との繋がりを感じられるように生まれた自助グループである。
代表は妻を献身的に支えるため長年就いていた教職を辞め、本格的に障害者の支援施設へかじを切った。
その中でアートを通して障害と向き合うというテーマに大きな影響を受けた代表は、全国津々浦々アートと障害をテーマに繋がりを増やしていき今に至る。

さらに奥まで進むと階段があり、2階には『アトリエ』がある。
ここが主な作業スペースである。
利用者のほとんどは"さをり織り"という機織りをして、作った布(さをり)を手芸作家に送りバッグや帽子に加工してもらい、届いたそれを販売する、という形で収益を得ている。
さをりは比較的簡単な織り物で、他の老人施設や障害者施設で作られることも多く、それでいて織り手の味が出る奥が深い布である。
しかしもちろん向き不向きはあるのでさをりが苦手、もしくは興味がない人は別なことをしてもいい。
絵を描いたり、塗り絵をしたり、カラオケ機材で歌を歌ってもいい。
中には美術大学を出ている本格的な画家もおり、個展を開いたこともある。
「何をしてもいい、全て自由」という作業所であり、あまりにも自由度が高すぎてかえってそれが肌に合わず辞める人もいるほどだ。
法律に抵触しなければほとんどなにをしても許される。
いきなり歌い出す人、独語が酷い人、多動が強く常にフラフラしてる人、そのへんで寝てる人もおり、かなりカオスである。
主たる作業はアート活動だが、他に廃品回収、畑で作物をつくる作業もあり、希望者が参加する。
イベントもかなり充実しており、毎週"地域体験"と呼ばれる遠足のようなお出かけイベントがあり、希望者が職員の運転する車であちこちに行く。
四季折々の花見やら紅葉狩りやらはもちろん、ユニクロに行ったり、映画を見たり、美味しいものを食べに行くこともある。
毎シーズン作業所内で全員で何かを作って食べたり、レクリエーションイベントもある。
グループホームのメンバーは3週間に1回夕食でほっともっとの弁当が出たり、どこかに外食に行ったり、"居酒屋"というイベントで酒を飲むこともある。
とにかく催しが多い。
もちろん参加は任意なので自分のペースを守れる。

私と夫はそれぞれ障害年金と生活保護を受給しているが、金銭管理が自力では難しいので職員にやってもらっている。
自室のキッチン、風呂、トイレの掃除も職員に頼んでいる。
できることは頑張る、できないことは頼る、が代表の信条だ。
私は生保だが自家用車を保有しているため、決められた小遣いで出かけることも多い。
人によって金銭面はまちまちで、自力で管理してる人も別事業所に委託してる人もいる。
薬の管理も職員がやってくれる。
病院への通院も職員が車を出してくれる。
場合によっては診察を共に聞いてくれるし、銀行や役場などの煩雑な手続きも手伝ってもらえる。
タイミングが合えば買い物や図書館へ行くことも車を出してくれる。
代表の方針的に利用者だから、職員だから、ではなくひとりの人として誰であっても尊重するという姿勢なので職員ですらも発達障害や精神障害の人もいる。
元々利用者だったが諸事情でパート職員になった人もいる。
お金を貯めて旅行に行くこともでき、その際は希望者がまずどこに行きたいかを大まかに決めて、代表や職員がプランを考え、工賃から積み立てをして準備を進める。
コロナ以前はかなりの頻度で行っていたらしい。
旅行自体も職員が同伴するので安心である。

私と夫の主なお出かけスポットは大きなイオンなど複合商業施設が多い。
フードコートで食事を摂り、ドトールやタリーズでまったりしたり、ウィンドウショッピングを楽しむ。
基本的に毎日のお昼代を2人で1000円としているので、何日分か貯めれば外食もできる。
私にとってドライブがなにより大好きな娯楽なので、あてもなく車を走らせるだけでかなりストレス発散になる。
夫はゲームが一番のストレス発散なので、職員に相談して買って楽しんでいる。
かなりQOLの高い暮らしをしている。
100メートル先に24時間営業のSEIYUがあるので、夜中急に何かが欲しくなってもすぐに行けるところがかなり便利。
地の利もあり、だいぶ楽な生活を送っている。

他のグループホームやB型作業所を知らないが、うちがとてつもなく恵まれた環境であることはわかる。
2人だけで暮らすことは難しいが、ここなら必要な場面で誰かに手伝ってもらいつつも様々なことを挑戦させてもらえるので、心が尊重され自己肯定感が上がっていくのを感じる。
ありがたい限りである……。

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