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萩尾望都 ポーの一族展に行ってみた

 そうか、諸星大二郎が50周年なら、萩尾望都や竹宮惠子も同じくらいとなるため、展覧会が連続して開かれるのも当然か。萩尾望都ポーの一族展は久留米市美術館で6/13, 2021までです。(小野堅太郎)

 諸星大二郎を知ったのは30年前の高校生の時だったが、萩尾望都は母親がファンで親の本棚にある数少ない漫画だったので小学生の頃からキン肉マンや北斗の拳と同時期に読んでいた。「ポーの一族」「トーマの心臓」は不動の傑作少女漫画で、竹宮惠子「風と木の詩」と並んで1970年代に日本少女漫画は最高潮を迎えた。残念ながら、今後、このような作品が漫画界に生まれてくる予兆がないため、本3作品は伝説となっている(内田善美を忘れてはならないが)。現在、腐女子なる言葉があるが、ルーツはほぼこの3作品にあり、秘められた女性たちのロマンス欲求が漫画文学の中に凝集されている。

 19世紀初頭、アメリカに初めて小説だけで生計を立てようとする作家が現れる。エドガー・アラン・ポーである。「モルグ街の殺人」で名探偵デュパン(吉野先生の視覚記事参照)を創出し、後のシャーロック・ホームズ誕生のきっかけを作ったことで有名だが、フランスの詩人ボードレールやSF作家ジュール・ベルヌにも多大なる影響を与えた作家である。日本では超有名な変態推理小説家の江戸川乱歩のペンネームの元名となっている。萩尾望都先生もファンのようで、「ポーの一族」の主人公はエドガー、親密な友人はアラン、そして物語背景の吸血鬼一族がポーな訳です。

 「どんな話なの?」と聞かれると困ってしまう作品です。「永遠の少年となってしまった吸血鬼エドガーのクロニクル」と言っても分かりませんよね。吸血鬼を題材にしたゴシックホラー的な背景の中で、薔薇に囲まれたヨーロッパ憧れ世界観とトーマス・マンの少年愛・少年期の寂しさ、儚さを描いた作品、と言ったら分かりますか?あ、わからない?あまりにもいろんな要素が入り込んでいて、端的に説明できないのか「ポーの一族」です。

 久留米市美術館は薔薇に囲まれた庭園を有していました。最高の時期にポーの一族展を開催しているところがにくいです。毎週末、諸星大二郎展に通い詰める私に妻が「ポーの一族展が始まったから、今日は諸星でなく萩尾望都にしてくれ」と言われて、喜んでついて行ったわけです。

 原画を見てみるとかなり顔にホワイトが入って修正されていました。涙の流れる角度とか、かなり気を使っていたようです。それと、子供の時からコミックスサイズで読んでいたので、原画サイズだと迫力が違うな〜と感じました。売店で原画サイズ版が売っていたので思わず買ってしまいました。「ポーの一族展」となっていたので「トーマの心臓」はないのかと心配していましたが、ちゃんと「トーマの心臓」の原画も展示されていました。萩尾望都先生は全然現役で新作が沢山出ていますので、まだ読んでいないものを売店で買い足しました。ちなみに、ポーの一族は最近続編が出ており、それを読んでいない妻が原画でアランの惨状を知り、ショックを受けていました。

 50年も前の作品です。私もまだ生まれていません。不朽の名作と言われるのには理由があり、普遍的なテーマを取り扱い、面白い演出があります。アン・ライス原作の「インタビュー・ウィズ・バンパイア」のトム・クルーズ映画を見たときには「あれーポーの一族と同じじゃん」と思いましたが、関連はないようです。

 竹宮惠子展も近々あると聞いていますので、そちらにも足を運ぼうと思います。とにかく私は諸星大二郎展を極めます。


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