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研究室の人々(どんな人が研究室にいるの?):#00042動画解説

00:20 研究室にはどんな人がいるの?
04:38 職位における教育業務の分配
06:24 職位と研究体制
12:00 勤務時間と服装

動画解説

 知らない人は知らないであろう大学研究室の職位構成です。昔は「教授、助教授、講師、助手」でしたが、大学法人化に伴い、「教授、准教授、講師、助教」と変更されました。名前だけではなく、仕事の内容にも変更がありました。(小野堅太郎)

 准教授とは教授に「」じるということですので、教授を「」ける「助教授」ではなく、教授とほぼ同等の地位とされるようになりました。以前のしくみでは研究は教授を頂点とする縦割りでしたが、准教授になると「教授から独立した研究」を当たり前に行えるようになりました。これは、講師と助教も同じです。

 「助手」から「助教」への変更ですが、実は助手が消えたわけではありません。「入れ替わった」というのが正しいです。助手しかない以前は、助手になっても「大学講義」ができませんでした。そこで、昔の九州歯科大学では「学内講師」という名目(職位?ではない)の審査を通ることで、初めて大学助手は講義を担当することができました。「助教」になって学内講師という役職は消えて、助教になれたら大学講義をすることが可能になりました。そのため、「教員の質保証」を兼ねて、法人化後の大学人事では「助教の公募要件」に「博士号取得者」を入れることが多くなっています。これは、助教が教授から独立して研究を行うことも踏まえています。というわけで、「助手」は今でも大学にありますが、他の職位ほど教育・研究に主体的に関われません(大学によって様々です)。

 こういった大学教員の職位は学校教育法(第92条)に定められています。ここにもちゃんと「助手」は残っていますね。教授(⑥)、准教授(⑦)、講師(⑩)、助教(⑧)については同じ内容であるにもかかわらず、助手(⑨)は「教育研究の円滑な実施に必要な業務に従事する」とあります。

<学校教育法>
第九十二条 大学には学長、教授、准教授、助教、助手及び事務職員を置かなければならない。ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。
② 大学には、前項のほか、副学長、学部長、講師、技術職員その他必要な職員を置くことができる。
③ 学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する。
④ 副学長は、学長を助け、命を受けて校務をつかさどる。
⑤ 学部長は、学部に関する校務をつかさどる。
⑥ 教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の特に優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
⑦ 准教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
⑧ 助教は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
⑨ 助手は、その所属する組織における教育研究の円滑な実施に必要な業務に従事する。
⑩ 講師は、教授又は准教授に準ずる職務に従事する。

 この条文を見ると、学長、副学長、学部長というのも出てきますね(③~⑤)。研究室の話からは逸れますが、学長とは大学全体を束ねる一番偉い人です。副学長はそのサポートをする人です。総合大学では多くの学部があり、歯学部長、医学部長とかがいて、学部長とは学部全体を束ねる一番偉い人ということになります。全国で歯学部の一番偉い人が集まるような会議が開かれたとすれば、総合大学からは歯学部長が出席しますが、九州歯科大学のような単学部では(歯)学部長の上の学長が出席することになります。総合大学と単学部大学とでは、学長と学部長の意味合い(権限)が結構違います。

 研究体制については、職名の変更と共に大きく変わったわけですが、学部学生に対する教育体制は以前のまま縦割りです。というのも、教育は各学部で包括的に行われなければならず、研究での分散型と相性が悪いです。学生の成績については、「誰かが責任をとる(決定する)」ことが必要ですので、縦割りの中で「教授(教授会)」が責任を取ることになっています。

 教育の中でも大学院教育は「研究」ですので、分散型です。法人化の際に多くの大学は「大学院大学化」をして研究に力を入れることになりました。よって、大学院生の研究指導の人員確保のためにも、各大学職位における研究独立性は不可欠なものでした。

 学部学生の研究室配属では、研究室に入り研究・実験・調査を行います。その際に「どんな人がいるの?」と疑問に思ったら、ちょっとこの動画を見てくれると嬉しいです。

補足・訂正

 最後に「研究者の勤務時間・服装」について語っています。基本、研究者は自由です。自由といっても常識の範囲内です。勤務時間に関してはスライドで九州歯科大学の勤務時間を書いていましたが、大学教員は基本的にフレックスタイム扱いなので誤解を生むと思い、「自粛」扱いにしました。深い意味はありませんので、あしからず。

 動画解説で少し「教授会」について触れましたが、これも学校教育法第93条に定められています。②と③にあるように「学長や学部長等に意見を述べる」組織です。教授といってもあまり強い権限は持っていません。

<学校教育法>
第九十三条 大学に、教授会を置く。
② 教授会は、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする。
一 学生の入学、卒業及び課程の修了
二 学位の授与
三 前二号に掲げるもののほか、教育研究に関する重要な事項で、教授会の意見を聴くことが必要なものとして学長が定めるもの
③ 教授会は、前項に規定するもののほか、学長及び学部長その他の教授会が置かれる組織の長(以下この項において「学長等」という。)がつかさどる教育研究に関する事項について審議し、及び学長等の求めに応じ、意見を述べることができる。
④ 教授会の組織には、准教授その他の職員を加えることができる。

編集者から

 研究室ってどんなところ?私も研究補助員として働くまであまり想像できなかった世界でしたが、思っていたよりもおもしろい場所でした。
 最初は研究者って固そうな人が多そうなイメージでした。しかし、大学院生や教員と関わってみると、「研究者って普通の人間だな~」と良い意味で期待を裏切られましたw
 『研究に興味はあるけど実際にはどんなことをするんだろう?』と少しでも興味のある方にはぜひ見ていただきたい動画です。『研究者』シリーズは5本ありますので、残り4回もお楽しみに!

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