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オーラルフレイル・歯科治療効果を判定する咀嚼能力検査法:九歯大生理学実習(咀嚼)

動画説明

 歯の機能は「食べ物を咀嚼すること」です。虫歯や歯周病により歯を喪失したり、噛み合わせが悪いと、食物を噛みにくくなります。このような状態は「咀嚼能力が低下した」といいます。
 歯医者の仕事には、虫歯の治療、入れ歯、歯科矯正…など色々ありますが、どの治療も最終的な目標は咀嚼能力の回復です。なので、治療の前後で咀嚼能力を客観的に評価することはとても大切なことなのです。

 そこで、今回の動画では、咀嚼能力を評価する代表的な方法として
①篩分法(しぶんほう)
②グミゼリーを用いた咀嚼能力評価法
の2つを説明しています。

 ①篩分法は、1950年にManlyという研究者が開発した方法です。やり方は、患者さんにピーナッツを咀嚼してもらい、粉砕されたピーナッツが10メッシュの篩を通過する重量%(咀嚼値)を元に、咀嚼換算表を用いて咀嚼能率を計算します。この方法は、咀嚼能力を客観的に評価する大変優れた方法なのですが、咀嚼後にピーナッツを洗浄したり、乾燥させたり…と、手順が煩雑で、実際の臨床ではほとんど利用されることがありませんでした。

そこで登場したのが②グミゼリー法です。
 グルコース含有のグミを被験者に咀嚼してもらい、グミから溶けだしたグルコース量を測定器を用いて計測するという方法です。大変簡便で測定時間も短く、臨床現場で利用しやすいです。グミゼリー法は保険内診療として指定されています。

「噛みやすさ」は非常に主観的なものなので、多くの場合は患者さんに問診して判断せざるを得ないと思います。今回説明した客観的評価方法を活用して治療効果の判定に役立てることができれば、よりよい歯科医療を患者さんに提供できると思います。

追加・訂正

 Manlyは、咀嚼回数を対数変換しy軸にとり、篩上に残ったピーナッツ重量%を確率変換してx軸にとると直線を描き、しかもその傾斜が被験者に関係なく一定の値を示すことを発見しました(Manlyの 対数確率法則といいます)。ちなみに、大豆、銀杏、甘栗などもこの法則に従うらしいです。

編集者から

 とにかく何度も撮りなおしをしました。そのため予定より延長してしまい、生化学の実習が始まってしまい、生化学の先生方には大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。中富先生は、だんだん混乱してきて、料理番組のようになり、乾燥機を「オーブン」と言っていて、編集中、笑わせてもらいました。

 篩分法は今でも研究のゴールドスタンダードですが、動画にあるように結構大変です。グミゼリー法が出てきて、実用レベルになりました。是非、歯科診療所で活用していただきたく思います。

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