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日本の教育を考える

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他のクリエイターの皆さんの記事も含めて、教育に関する内容をまとめています。具体的な教育方法の提案、オンライン講義について、教育とは何かといったさまざまな議題について議論します。教…
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#科学

教養系コンテンツの正確性はどこまで担保されるべきか

 種々の学術系コンテンツ(動画や記事)をネット検索し、容易に学べるようなったこの時代。その情報の正確性はどのレベルまで求められるのかを考察したい。(小野堅太郎)  オンライン学習を余儀なくされるこの時期。多くの教養系動画コンテンツが上がってきている。中田敦彦さんなど芸能人の動画を見させていただくとレベルの高さに驚かされるが、用語の使い方に間違いもあり、訂正したい衝動に駆られる。ネット記事を見ていたら、こういった間違いが訂正されずに拡散放置されている状況はよろしくないというも

フッ素は毒か薬か:Twitterから学ぶ③

 つい最近、Twitterで「歯科で使われるフッ素は猛毒だ」とのコメントに数千の「いいね」がついたものが流れてきた。マナビ研究室でフォローしている人の半分は歯科関係者なので、反論リツイートしたものが表示されたのだ。面白い。考察してみる。(小野堅太郎)  毒と薬は表裏一体である。健康に被害があれば「毒」で、健康に良ければ「薬」となる。薬は身体の機能に影響を与える物質なので、すべての薬はたくさん摂取すれば毒になる。生存に必要な塩だって過剰に摂りすぎれば死に至る。そのため、医歯薬

科学論文と研究者の信頼性:Twitterから学ぶ①

 Twitterをやり始めて、びっくりしたのは科学論文情報を容易に入手できたことだ。一方で、こういった科学論文を自説の根拠として発言している人が多いのにもびっくりした。それまで、科学論文とは研究者間で議論される成果報告書ぐらいにしか思っていなかったからだ。ちょいと思うところを書き綴ってみる。(小野堅太郎)  マナビ研究室YouTubeは初めて4ヶ月目となる。大学でのオンライン講義開始により講義動画をとることになり、忙しくてとても活動できないなと思っていた。ふと、Twitte

研究者が謎科学に口をつぐむ訳:Twitterから学ぶ②

 前回の記事で、科学論文は何かの根拠にならないという話をした。研究の世界では、数年間の追試により支持する論文が蓄積して、数々の修正が行われながら一つの結論に達する。しかし、社会不安の中では、1つの論文に一喜一憂してしまうのも仕方がない。加えて、蓄積した謎論文が出てきて科学的根拠として紹介される。研究者がなかなか発言しないのには理由があるので、紹介したい。(小野堅太郎)  まず、忖度というか、その研究世界の大御所と言われる人が発言している謎科学には反論できない。お怒りをかった

科学英語の読解力をつけるには

 理系の大学院であれば英語論文を読むのは当たり前だろう。院生持ち回りによる英語論文の抄読会を行う研究室は多い。大学院生の英語力を鍛えるためにやっている私独自の英語教育法を紹介する。(小野堅太郎) 1)訳を書き下したノートを作らない 抄読会になると、院生は英語の文章を日本語にしてノートに書き下す。本番では、それを読みながら論文の説明をする。英語は訳せているのだが、意味を理解していない。行間を読み取れていないため、薄っぺらい話になってしまう。「どうしてそんな結論になるの?」と聞