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顧客価値を高めるDX企画の推進体制

コンサルティング会社の起用には注意が必要

DXに疎い大企業の経営者は、一流のコンサルティング会社であれば間違いないとDXの戦略策定を丸投げする傾向があるが、本当だろうか。

近年、DXに関するコンサルティングを提供するコンサルティング会社が増えている。DXの戦略策定についてコンサルティング会社を活用する企業も多い。しかし、委託企業はコンサルティング会社には特徴があり、万能ではないことを理解しておく必要がある。

一流企業を顧客に持つコンサルティング会社は経営管理、社内業務の効率化や最適化に関わるベストプラクティスに詳しい。このような守りのDXについては役立つ。

しかし、商品・サービスの開発のように顧客価値を高める攻めのDXについてはどうだろうか?

大手コンサルティング会社は高額の報酬を要求する代わりに、成果について顧客から不満が出てこないよう、手堅く、勝算がある提案を行う傾向がある。

また、大手コンサルティング会社は、顧客の課題について分析するため、ヒアリングをしっかり行うけれど、コンサルティング期間中に成果が出るかどうかわからないDXのアイディアを、顧客と対話しながら醸成していくようなやり方を一般的には行わない。

攻めのDXの肝となる独自性の高い製品・サービスのアイディアを大手コンサルティング会社に求めても、限られたプロジェクト期間の中で、成果がでるかは不確実であり、リスクの高い案件として捉えるため、よほどの専門分野か重要案件でない限り、積極的に提案は行わないだろう。

本来、攻めのDXは、顧客が優れたアイディアを創発するよう促すファシリテーターの役割が重要になるのだが、ファシリテーションに絞った案件は小さく、大手コンサルティング会社にとって魅力がないのである。

もし、大手コンサルティング会社が引き受けたとしても、特許性のあるアイディアに関わる案件であれば、大手コンサルティング会社は他社にも展開したいはずだ。そのような案件であれば、後になって知的所有権の帰属についてトラブルが発生しないよう、権利の扱いについて予め合意し、戦略的な提携を前提にしておくべきだ。

筆者は、攻めのDXのアイディア出しや企画について、ベンダーやコンサルティング会社に期待し、頼っても、前述のとおり、利害が対立する面が多いので、競争力がある真のDXを実現することは難しと考える。

共同出資するなど戦略的な提携を行うなら別だが、安易に考えると、あとあとトラブルが起こりやすい。

顧客価値を高めるDXは社内人材が自力で企画する

DXは自社の強みとデジタル技術を融合することにより顧客価値を高め、競争優位を築くための取り組みである。

競争力のある真のDXを実現するには、社内人材が主体となって、アイディアを創発し、企画することが肝要である。これがAI時代の社員にとって本当のコア業務と言える。

顧客価値を高める攻めのDXのアイディア出し、企画、戦略策定は事業部門が主担当になり、IT部門がそれをマネジメントの面で支えていく形が望ましい。

DXのアイディア出しについては以下の記事を参考にして頂きたい。


IT部門の新たな役割

特に部門横断的なサービスの開発については、IT部門が複数の事業部門をとりまとめ、プロジェクトを推進していくのが最適だ。

IT部門は、事業部門が主体的かつスムーズに動ける環境作り、プロジェクト管理、全体のプログラム管理という重要な役割を担う。

DXにおいては、DXの企画、戦略策定、事業計画、システム構築、戦略・事業計画の実行管理、社内の啓蒙、普及活動、教育等を推進する。

IT部門がこの重要な役割を担うには、デジタル技術の知見は勿論、自社の事業の理解、企画フェーズでのマネジメント能力が求められる。

また、顧客価値を高めるDXとの親和性の高いアジャイル開発に関するマネジメントスキルも必要だ。

ウォーターフォール型の開発とは異なり、アジャイル開発では、仕様変更に柔軟な代わりに、ユーザーの関与割合を高める必要があるため、この違いを理解しないまま、プロジェクトをスタートさせると、ユーザーの主体性や関与が不十分になり、システム仕様が定まらず、プロジェクトが破綻するリスクが高まる。

また、IT部門はプロジェクトを取りまとめるため、ユーザーへの指導と意識変革を行うためのリーダーシップとコミュニケーション能力が必要になる。

IT部門にとって一番の難題は意識変革

顧客価値を高めるDXの企画や事業推進は、問題に焦点をあてる問題志向アプローチから、解決像に焦点をあてる解決志向アプローチへ転換しなければならない。



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