海外に日本の利益が流れてるって本当なのか?
一生懸命働いているのにも関わらず、なかなか豊かさを感じられないという人も多いのではないでしょうか?
豊かさを感じられないとすれば理由はいくつもあげられます。
1.そもそも企業として儲からない仕事をしている
2.企業の儲けが一般労働者ではないところに流れている
3.政治や経済政策に問題がある
4.税金を増やし、それを無駄遣いしている
などなど・・・
今回は2について考察してみます。日本が豊かになれないのは労働者の成果が大企業の経営者や海外にお金が流れているからという声も聞きます。
税金を集めて特定の国の業界のために使ったり、海外のODAに使っているという声も聞きますよね?
ここでは陰謀説的な追求ではなく、表に出ている利益の流出について調査します。
代表例としてSONYの利益と配当をみていきましょう。
SONYの財務指標などを調べてみる
ソニーの従業員数を調べておきます。
連結従業員数 111,700名(2020年3月31日)
約11万人です。
つづいて、SONYの2020年3月期の税引き前の利益と当期純利益、さらに株主への配当を調べてみます。
税引き前利益
2020年 799,450(百万円)
2021年 1,192,379(百万円)
2020年は8000億円の利益です。すごいですね。
当期純利益は
2020年 582,191(百万円)
2021年 1,171,776(百万円)
続いて、配当の額です。
2020年 55,111(百万円)
2021年 68,016(百万円)
2020年は配当で550億円を支払ったということです。
そして配当性向は
2020年 9.5%
2021年 5.8%
です。
配当性向というのは、当期純利益のうち配当に回す分です。
日本の上場企業では30%前後となっていますが、それでも海外投資かからは「もっとよこせ」と言われています。
SONYは、かなり低くなっています。株主としては、今の2〜3倍は欲しいと思っているのかもしれません。
最後にSONYの株主情報を調べてみました。
2020年3月31日現在
外国人投資家 1878名 715,481(千株) 持株比率 56.7%
金融機関 163名 303,077(千株) 持株比率 24.4%
個人投資家他 418,817名 161,082(千株) 持株比率 12.8%
その他 2710名 77,198(千株) 持株比率 6.1%
SONYというと日本の会社というイメージですよね?
実際、日本に本社があり、日本人が働いています。
しかし、会社の持ち主は誰でしょうか?
そうです。株主ですね。
その視点からみてみると、すでにSONYは半分以上が海外の会社ということです。ちょっと驚きですね。
海外の投資家1878名で715,481(千株)ですから、1名あたり381(千株)です。大口株主ですね。
SONYの財務情報からわかること
ソニーの配当額は550億円です。
海外投資家へはいくら流れたのでしょうか? 配当の56.7%が海外投資家ですから
550億円 × 56.7% = 312億円です。
こうして見ると、SONYの売上8兆円、税引き前利益5800億円からしたら小さな数字です。
気にならないくらいかもしれません。
しかし
このような考え方もできます。
当期純利益、2020年は5800億円、2021年は1兆1700億円です。
2020年の5800億円の利益を従業員11.17万人で割ると521万円になります。
2021年の1兆1700億円であれば従業員一人当たり1000万円を超えます。
会社には、自社の利益を
1.従業員に回す
2.配当に回す
3.設備投資や研究費に回す
4.将来のために残しておく
5.債務の返済をする
などの選択肢があります。
これだけの利益があれば、決算賞与として一人当たり100万円ほど還元しても良さそうですね?
もしかしたら、会社の持ち主である海外の投資家が、研究費はOKだが「従業員にはお金を回すな」と言っているのかもしれません。
昔と違い、海外の株主の意向が大きくなってきたことは否めません。
製造業が派遣社員を増やし人件費を流動化させたり、賃金を昇給させずに人件費を削減したのは、自社の生き残りのために必要な施策だったと思います。だったら、業績が回復した時に、契約社員を正社員に登用したり、給与として従業員に還元して欲しいものです。
利益がでたら、経営者は(1)従業員に還元する、(2)内部留保する、(3)配当に回す、の選択をします。SONYは配当に回していないので、日本国民にとってはよかったです。
もう一つ
こんな考え方もあります。
投資家にとっては、配当が低くても株価が上がれば、それはそれでキャピタルゲインが得られます。
SONYの決算直後の株価を調べて見ると・・
2019年4月5日の株価は4816円
2020年4月3日の株価は6260円
2021年4月2日の株価は12200円
めちゃ上がっています。ちなみに、2019年3月決算は赤字でした。
海外投資家は平均で38万株を持っていますから、2020年の株価は、約23億8000万円、それが2021年には46億4000万円になっています。
海外投資家全体では、7億1500万株ですから、4兆4800億円が、8兆7200億円に資産が増えたということになります。
ここだけを切り取れば「SONYは海外投資家の資産を1年間で4兆円増やす努力をした」ということになります。
これなら配当が少なくても、文句は出ないでしょう。よくがんばった経営者として株主から褒められますね。
よく日経平均が上がったと聞きますが、日本の企業価値が上がったように見えて、実は海外の投資家の資産が増加したということにもなるのです。
ここまでは、SONYを事例として考察してきました。
次からは一般論になります。
モノをいう株主
物言う株主と、よく聞くと思います。
経営に対して、口を出すことがあるということです。
日本企業の株主は、海外投資の割合が増えてきました。彼らの狙いは、高額配当か、株価の上昇です。
彼らにしてみたら、日本人従業員の給与と株主利益とどちらを優先したいでしょうか? それは明白です。ただ、短期的な配当よりも、長期的な企業成長(による株価上昇)を求める株主もいます。
しかし、決議は株数で決まるわけですから、海外投資家の意向も無視することはできません。
人件費と配当はトレードオフの関係です。経営者がそのバランスを取るのはなかなか難しい問題だと思います。従業員思いの人ほど苦労しそうですね。
このような経営の仕組みは資本主義経済に組み込まれています。資本主義といえば、本場は欧米です。
欧米の資本主義は、日本のイメージする資本主義とは随分違うようです。
(そもそも私たちは、あまり真剣に資本主義について勉強してないですから。共産主義の悪い点を知らされて、資本主義が相対的に良い仕組みだと思っているだけではないでしょうか)
本場の資本主義は資本つまり金がモノをいう主義です。
法律なり、政治の仕組みなり、国際関係のルールなどを作ってきたのは、金を持った人たちです。彼らにとって都合がよい仕組みです。
市民が作った仕組みではなく、金をもった人たちが作った仕組みです。金を持った人は強いのです。
(下克上の余地を残し、多くの人が納得するように設計されています)
そのような考えを持った海外投資家は、ファンドに資産を預けます。ファンドマネジャーは金持ちのために、金持ちの資産を増やすことが仕事です。
株に投資すれば、株価が上がるように、あるいは配当が増えるように、当然口を出したくなります。
このように金があれば、直接的にも、間接的にも企業に口を出すことができます。
もっと言えば、政府にも口が出せます!
ほとんどの政治家は献金を集めることが仕事です。表向きは民主主義ということになっていますが、現実的には政治家は金で釣れます。
このようにすべてが金でコントロールできるのです。日本でも、最近では露骨になってきたと思いませんか?
金持ちが金のために、政府の政策にも、企業の経営にも、口をだすのが資本主義です。
その本場の資本主義バリバリの海外投資家が日本企業の株を買っています。
海外投資家が、すでに過半数を超える企業も出ています。それでも、日本の企業と言えるのでしょうか?
このように日本企業の株式を海外資本に解放した結果、少しずつ少しずつ、日本企業は彼らの持ち物になっていきます。
株式市場、先物市場、環境問題どれをとっても、日本は翻弄されています。世界のお金持ちが作ったルールや圧力でいじめられているようです。
日本の企業は、もともとは日本のものだったのだが・・
日本の企業の株主構成は、関連企業や国内金融機関の持ち分が多いというという特徴がありました。安定株主で長期的に保有してます。
海外投資家が日本企業の株式を買う余地は少なかったのです。
そもそも、会計基準だって日本独自のものがありましたし、日本語の決算報告書では、海外の投資家は読めません。
誰が資本の国際化を進めたのでしょうか?
関連企業が株を持ち合うのを誰がいけないと言ったのでしょうか?
誰が国際会計基準を導入ようとしたのでしょうか?
派遣社員を使って人件費を削減し、その分、利益を上げたほうがよいと誰が言ったのでしょうか?
これらの考え方は、もともとの日本的な精神から生まれたものではありません。
いったい誰の意見だったのでしょうか?
・アメリカかぶれの人?
・一部のアメリカから便宜を受けている人?
・一部のアメリカから脅された人?
よくわかりませんが日本的な考え方ではないのは確かです。
その頃、メディアは世論形成に力を入れていました。
・グローバル化は避けられない
・人口が増加しない日本から海外へ進出しなくては成長はない
・海外資本を日本に呼び込む必要がある
・日本の輸出産業が赤字になったら日本は終わる
・市場の自由化、金融の自由化が求められている
そうやって、少しずつ日本経済、政治が変わっていきました。
それで誰が儲かるのでしょうか?
?
大企業の経営者や海外の資本家たちですね。
若い人はこれが当たり前の社会だと思っているのかもしれません。
しかし
少し前は違いました。
日本人には江戸時代の頃から続く高い精神性があるため、企業(経営者)は従業員を思い、従業員は会社に忠誠を誓うという文化的土壌がありました。
(あえて明治以降ではなく江戸と言っています)
そしてもう一つ
「企業は社会の公器」という考えもありました。
創業者にとって企業は私的なものでありながら、日本のもの、従業員のもの、顧客のもの、関連企業のもの、でもあるという思想です。
この二つは、非常に日本的な、つまり、日本独自の考え方です。
この考え方は日本人の精神性にとてもフィットしていました。
この考え方は欧米の方にはなかなか理解できないようです。
昭和の時代、日本の企業は利益を追求しましたが、同時に従業員も大切に扱ってきました。
「企業は人なり」という言葉もあります。
企業・株主・従業員の願いは一つで、長期的に安定し、みんなが豊かになるような成長でした。
日本人ならではの共生、共栄共存という精神が生きていました。
日本人は総中流などと言われたように、世界的に珍しい、極端な貧富の差がない、世界でも稀な経済を実現していました。
いつからか、海外の投資を呼び込むために、国際会計基準にしていこうという流れになっていきました。
いつからか、貧困層が生まれました。
いくつかの企業は海外資本のものになりました。明らかな買収ではなく、少しずつ、こっそり買われた企業も多いのです。
海外では所有と経営の分離、役割分担がはっきりしています。役割というよりも、力関係というべきでしょうか・・・
支配とコントロール、上か下か、というのが海外の流儀です。
資本主義、そう、金がものをいう世界では、資本家にとって、納得いく経営者でなければ「経営者を自分の都合の良い人、有能な経営者に変えよう」と考えます。
まず、会社ありき、従業員ありき、ではありません。
まず、資本家(株主)で、優秀な経営者に経営させるというスタンスです。
儲からない会社であれば、損切りしてでも、資本を回収します。
従業員も利益のために切ります。
日本も少しずつ、グローバルスタンダードと呼ばれる、資本至上主義に染まっていきました。
企業は利益を追求しますが、それはみんなのためではなく、株主のためになっていったのです。
このままでは、ますます、貧富の差が広がっていくでしょう。
いつしか、日本企業も「共生・共生共存」から「弱肉強食・支配とコントロール」の精神にシフトしていきました。
いや、シフトしたというより、より露骨に、資本家の支配のもとに置かれるようになったというべきかもしれません。
日本企業の資本も、日本人の精神性も、少しずつ海外資本に飲み込まれているようです。
資本主義経済とは
今、日本の経営陣の多くは昭和のバブル世代です。
私も偏差値教育世代だったので、学歴をあげ、良い会社に入り、自分の所得を上げることに関心を持たされ、政治や経済は他人事でした(これも一つの洗脳だったのかもしれません)。
当時の政治や経済が、それほど悪くなかったということもあります。
そのような中で、日本的なものからアメリカ的なものへシフトが進みました。
金がモノをいう、グローバル経済。言われているように、ごく一部の大企業と投資家にお金が流れる仕組みです。国よりも大きなスケールで物事を考えている人たちがいます。
そのものさしでは
超金持ち>グローバル企業>各国政府>ドメスティック企業>国民
です。
この資本主義、もう少し、上手にやってくれれば、多くの人が幸せになれるのに。
最大多数の幸福を目指すものではない資本主義は、幸福な者と不幸な者、豊かな者と貧乏な者などの格差を拡大します。
クリントン政権が中国に投資を促してから、中国のGDPは恐ろしく増加し続けています。
アマゾンは創業からずっと赤字続きでしたが、どんどん投資が集まり巨大な企業になりました。
マイクロソフトのWindowsは世界中のPCに搭載されました。なぜか日本のTRONの技術は広がりませんでした。
それで、誰が儲かりましたか?
裏で、資本主義が働いているような気がします。
それでもまだ残っている日本人の精神性
この記事では日本の利益、お金の流出に書いてきました。
お金の流出、それも問題ですが、日本人の精神性の変化の方が大問題だと思うのです。
昭和の終わりごろ、日本の家電メーカーも自動車メーカーも世界を席巻しました。ものづくりに関しては、アメリカやドイツに負けないところもあったはずです。
しかし、出過ぎた杭は打たれます。プラザ合意、自由貿易など政治、経済の両面から攻められました。
そのあたりの交渉の背景には、国民に知らされていない敗戦国としての裏事情もあったのだと思います。そして、その後、失われた30年間が続いていきます。
金がモノをいう資本主義というルール?の中で、日本は自由に動けなくなりました。私たち国民もなんか自由な感じがしなくなりました。なんか、窮屈な世界になりました。豊かなようで、貧困にあえぐ人もいて、なんともすっきりしない世の中です。
本来であれば、国民の文化や精神性、国民の生活を守るべき政府はあ、海外資本家たちに逆らえなくなってしまったのでしょうか?
それとも、政治家や官僚が取り込まれてしまったのでしょうか?
それでも、まだ、日本人の精神性は残っています。
植物、動物、微生物、鉱物など自然はすべて「共生している」と多くの日本人は本気で感じることができるのです。
動物や植物を見て、弱肉強食の食物連鎖までしか思いつかない民族も多いのです。食物連鎖と言っても日本人のイメージとは少し違って、最上位の階層は死ぬまで徹底的に下の階層を支配、あるいは強奪する弱肉強食という認識です。
共生つまり共に生き、共に栄えるという考え方は、われわれ日本人が代々受け継いできた精神性の上に成り立つものですから、急には変わらないと思います。これは日本人の誇りにすべき思想だと思います。
今でこそ、環境とか持続的とかいう言葉が叫ばれるようになりました。
それって、誰が言っていますか?
そして、誰が儲かりますか。
いつのまにか、二酸化炭素の排出権が売買されるようになり、先進国のお金で中国の工場が近代化されました。
誰が儲かりましたか?
排出権のブローカー、中国企業、そして中国企業に投資している人たちです。
環境問題といっても、公害や環境汚染に声を上げている「市民の声」はかき消され、大きなお金が動く国際的なアジェンダだけが、メディアを賑わします。
なにか、変だと思いませんか?
あなたも気がついていますよね?
気がつくのは、もともとの精神性が何か違和感を感じるからではないでしょうか?
なにかおかしいと気がついている人が、まだまだ、日本人には多いのです。
眠っていた人たちが、あるいは、他に注意を向けられてきた人たちが、覚醒してきたというほうが適切かもしれません。
グローバル化は悪いことではありません。多様性こそ豊かさです。
国家レベルを超えるような利益至上主義という価値観は多くの日本人には合わないのです。
しかし、少しずつその価値観が日本を侵食してきています。
そんなこんなで、なんとなく住みにくくなってしまった日本です。心を病む人も増えました。
共産主義、資本主義と大きく社会の仕組みが分けられますが、「共生と全体調和」というマウントを取らない社会が日本人には向いているようです。事実、総中流という全体調和の社会を実現できた唯一の国かもしれません。
力のあるものが自分たちに都合の良いルールを作るのでなく、上の人には徳が備わっている、という社会の方が理想的ですよね。
でも、それは日本人にしかイメージがわかないようです。
そんな社会をもう一度つくりたい。総中流といっても、お金持ちがいても良いし、それぞれが自分らしく楽しく生きていける社会です。
日本人の精神性が完全に無くなる前になら可能です。
すでに多くの日本人が気がついています。
記事のタイトルから、少しずれたので、最後にまとめます。
日本の利益が海外に流れているのか?
少なくとも、日本の株式市場から配当という形で利益が流れ出しています。上場企業の30%が海外の資本となっています。
しかし、それ以上に、日本の強みである精神性が侵され、国民の幸福度が落ちています。
株式市場も含めて、日本市場が解放されたため、グローバル企業と後進国にマーケットや仕事を奪われ、国民の所得が上がらなくなりました。この利益の喪失のほうが大きなものになっています。
最後に・・・
しかし、日本人は少しずつ目覚めています。
新しい時代に向けて、戦後の復興のように、努力の方向を合わせ、良い時代に進んでいくことができると思います。
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