見出し画像

あばれ祭で燃え盛る神輿を目の前に、生きる意味を突きつけられた夜

7年前、初めて能登に足を踏み入れたときから「あばれ祭」の存在は知っていた。3年前に同じ能登町内の「とも旗祭」に参加させてもらって以来、能登町にも何度か足を運んでいたけれど、昨年一昨年とコロナの影響であばれ祭も中止になってしまい、なかなかそのリアルな姿に立ち会うことはできなかった。でも今年の初めに能登での仕事が決まり、祭も3年ぶりの再開、しかもほぼ100%の状態での開催ということを聞き、満を持してあばれ祭に行くことになった。
初めて行く祭。あんなにワクワクしたのは久しぶりだった。「何かに出会ってしまう」、そんな予感があった。祭の前にSNSで流れてくるあばれ祭の情報を見ながら、自分自身のボルテージも高まっていく。そんな状態の中たまたまzoom会議をしたノリさんとも意気投合し、「じゃあ10日後一緒に行きましょう!」となり、結局3人で行くことに。

去年あばれ祭をテーマにしたオンラインイベントに参加をした時のこと。

2021年1月 のと未来会議のと未来会議2020 
VOL.3「能登町のワクワクする人:あばれ祭を支える人びと」より
https://nototown.jp/column/miraikaigi2-2/

あばれ祭の担い手5人の対談を聞いていて、特にこのことが印象に残っていた。あばれ祭りは八坂神社、酒垂神社、白山神社という能登町の宇出津地区の三つの神社が合同でやる祭りの通称で、荒ぶる神である素戔嗚尊(スサノオノミコト)を喜ばせるために、神輿を叩きつけたり、川にぶん投げたり、火をつけたりする少し変わった祭り。しかし、そうやって「あばれる」際にはポイントがあるという。「神輿をただ痛めつけるように扱うんじゃ無くて、ちゃんと神様に対して尊敬の念をもち、丁重に激しくぶん回す感じなんだ」だと。
一瞬「??」が頭の中をよぎったけど、これってすっごい大事な感覚だと思ったのを覚えている。愛を持って丁寧にぶっ壊す。その異常な感じのバランスが、祭における熱狂と一体感をつくり出すのだ。

現場に行った。祭のメインは夜からだったので、夕食を食べてから向かおうと宇出津の町を歩くも、どの店も「あ、祭なんで今日もうおしまいっす」という対応ばかり。「回転寿司ならやってるだろう」と向かったモリモリ寿司も、地域の人たち向けのヨバレ(自宅でご馳走を振る舞う能登の祭の風習)対応なのか、こちらを見向きもしない。普通の観光客だったら文句でも言いたくなるのかもしれないが、自分は「ああ、本気だ。祭だ。」と感じて嬉しくなり、ニヤニヤしてしまった。

いやさか広場に佇むように置かれる大松明。
つくるのには多大な費用がかかるため、これまで外注していたものを
地域の若手が自分たちでつくる未来に向けた取り組みを今年から始めている

あばれ祭1日目のメインは、大松明に火をつけて、キリコがいやさか広場で狂喜乱舞するところ。炎は無条件に人の心を揺さぶってくる。見ている方も「気を抜いたらキリコにぶつかって大怪我をする」という緊張感があり、常にアドレナリンが出ている状態だった。宿に帰ってからも深夜までノリさんたちとお酒を飲みながらその非日常を振り返り「これだけでももう満足だよね」という話になって寝た。

十数基ものキリコが縦横無尽に広場を駆け巡る。
今年はコロナの影響もあり例年に比べ担ぎ手も少なかったのかバランスを崩す場面も多く見られた

あばれ祭2日目のメインは神輿。僕は二基ある神輿のうちの一つ酒垂神輿についていった。結果的に言葉でまとめられない衝撃があった。

八坂神社への宮入り直前、川に神輿を投げ込み、大松明と対峙しながら何分も暴れ続ける。
容赦無く火の粉が飛んできて、写真を撮るだけでも決死の覚悟だ。

宇出津の人のメンタリティーと、祭に対する執念がやばい。
あばれることの本質とは?
暴れることで神様を喜ばす、結果神輿が壊れる、この順番が大事。
(オンラインイベントで言ってた)「愛を持って壊す」の意味がわかった。
最後の宮入り前の松明はもはや意味わからず。言葉が出ない感動。あれは何なんだ?一体どんな意志が働くんだ?
それをさせてしまう素戔嗚尊すごいし、してしまう人間も凄い、凄すぎる。
生きるとは何か、生の解放、野生の解放。
既成概念を破ってく中で、真のクリエイティブが発揮される。
「馬鹿そのものなんだよ、俺らは!(ガハハ)」と言い切れることが美しい。これがまさに事そのもの。
燃えて、嬉しい!熱い!痛い!
最後は言葉にならず、気づくと涙がこぼれ、拍手をしていた。

関東から向かい、現地で一緒に過ごしたADSのノリさんと智子さん

降り注ぐ火の粉の中でも「最前線で祭を見たい感じたい」と夢中になっていた結果、Tシャツと帽子には穴が開き、両腕には未だ火の粉の跡が残っている。

祭りは続く。

あばれ祭に関心持たれた方はこちらの動画やwebサイトも是非ご覧ください

「まつりと」日本の祭探検プロジェクト
https://www.youtube.com/watch?v=tLu-aNvWYWY
今年のあばれ祭の動画(主に二日目)がドキュメンタリー形式でまとまっています。

NOTONOWILD
https://notonowild.com/
能登町の若手有志でつくる、能登の祭や文化を伝えるサイト。祭の前にここのinstgramでボルテージ高めていきました。コロナ禍に祭の意味を問う"EPISODE"シリーズの動画は必見です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?