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【高校物理】二次・私大対策 2024

2020年から毎年,共通テスト (旧:センター試験) が終わったあと,
二次・私大対策を 𝕏 (旧:Twitter) 上で行っています。
今年も,入試直前のこの時期に,
・各分野で確認してほしい内容を含んだ問題
・取り組みづらい問題
・分野横断型の問題
を中心に問題を選びました。

今年も
𝕏 でつぶやいたものから,この note に追加していきます。
各問題の後には,
問題と解答・解説を含むPDFファイルを添付しておきました。
活用してください。

マナブ


【二次・私大対策 2024】その1
力学1「移動のさせ方による仕事の変化」
東京大学(2008年) 過去問解説

「定義通りに求める」
これは物理を学ぶ上で大事な姿勢
です。

この東京大学の問題は,その流れの中で,
「仕事と運動エネルギーの関係」という周知の事実を,
仕事を定義通りに求めることで確認させています。
そして,その関係を使ってさらに考察を進めていきます。

わたしたちは,物理の問題を解くだけではなく学んでいます
特に教育者の人には,そのことを忘れないでほしいと願っています。


【二次・私大対策 2024】その2
力学2「物体系,どの系に注目するのか」
東京工業大学(2016年)・東京大学 過去問解説

「物体系」は問題をシンプルにとらえることができるとらえ方です。
「どの系に注目するのか」を考えさせる問題を2問解きましょう。
東京工業大学の問題は,この部分(後半部分)だけでも名作ですが,
前半部分も「束縛条件」を考えさせる問題で,名作です。

物体系に外からはたらく力が「外力」であり,
(物体)系全体の運動を変化させる作用をもちます。
注:系内にはたらく力は「内力」といいます。
 内力は,系全体の運動量は変化させませんが,
 (運動)エネルギーは変化させることがあります。

ポスト内でも紹介していますが,
東京工業大学(2016年)の前半部分の問題も収録された
マナ物理note「特講 束縛条件」は,下のリンクから入れます。是非!


【二次・私大対策 2024】その3
力学3「束縛条件」
岡山大学(2017年)<改題> 過去問解説

束縛条件を考えさせる問題を1問。
問4で束縛条件を立てるのですが,
実際の問題文ではこの条件は予め与えられていました。
しかし過去にこの類題を出題した横浜市立大学(1991年)では
与えられていなかったので,今回はその部分を削除しました。
(岡山大学の出題者は横市の問題を見ている可能性大)
最後の問5は図形的な処理が必要になってきます
必ず図を描いて考えてください。

岡山大学の問題のように,糸などでつながれた2物体の運動を扱った
「特講 連結2物体問題」という特別講義を過去に行っています。
興味深い運動(現象)を多数扱っています。参考にしてください。


【二次・私大対策 2024】その4
力学3「支点が固定されていない振り子運動」
京都大学後期日程(1992年) 過去問解説

力学の最後の問題として,京都大学後期日程の問題を選びました。
視点の移動が必要な問題です。
運動量保存則,力学的エネルギー保存則,はね返り係数,
力学的エネルギーの減少量,重心の運動,相対速度,…
力学全体を俯瞰することができる内容です。
物体系の中で一定の水平速度をもつ点を導出する問題
が個人的には好きです。

2体問題で,片方の物体からもう片方の物体の運動に注目したとき,
現れる質量の次元をもつ物理量があります。
それは「換算質量」とよばれるのですが,
その「換算質量」に関する基本事項,入試問題をまとめた特別講義
「特講 換算質量」を note にまとめています。
下のリンクからどうぞ。


【二次・私大対策 2024】その5
熱力学1「気体の分子運動論 球形容器」
慶應義塾大学理工学部(2017年) 過去問解説

問題文の流れにしたがわずに解いている解答がよく見られます。
その方が楽なのであればそれでいいのですが,
どう見ても思いつきとしかとらえられない解法が意外と多いのです。
熱力学問題の解法は,
① 状態方程式
② 熱力学第1法則
③(準静的断熱変化のとき)ポアソンの式
これが基本です。

是非,他の模範解答と私の解答を見比べてください。
私の解法が最速であることが分かります。


【二次・私大対策 2024】その6
熱力学2「ひも状物体の熱力学」
京都大学(2007年) 過去問解説

2つの温度の等温変化を断熱変化でつないだ熱サイクルを
カルノー・サイクル」とよびます。
これは理論上もっとも熱効率のよいサイクルです。
本問では,理想気体の代わりに「ひも状物体」で,
このカルノー・サイクルを回しています。
張力が絶対温度に比例するということを問題文で与えた上で
問題を解かせているのですが,
その力学的考察は残念ながらありません

(ちなみに,どうでもいい話ですが…)
旺文社「全国大学入試問題正解2008年受験用」の問題文の問1に
「変化量を 𝑻 と表すと」とありますが,
これは「変化量を 𝜟𝐥𝐨𝐠𝑻 と表すと」です。誤植です。
まぁ,それはいいのですが,
吉田弘幸さんの著作に「京大の入試問題で深める高校物理」という本
があります。その第16講に,
この「ひも状物体の熱力学」の問題が取り上げられています。
その問題文を見ると,旺文社と同じミスが…。
どうでもいい話でした。

(注)  この「ひも状物体」は,
 𝑳 が増す(伸びる)ときに仕事をされ,
 𝑳 が減少する(縮む)ときに仕事をするので,
 温度 𝑻₂ で熱を吸収して仕事をするのは,𝐂 → 𝐁 のときです。
 (気体とは逆のふるまいをします) 


2007年の京都大学
は,
力学が換算質量が絡む運動
電磁気が斜面を滑る磁石による電磁誘導
3問目がこの「ひも状物体」で,
解いていて楽しく新たな発見もある問題の連続でお腹いっぱい(笑)
この年の力学・電磁気問題は【二次・私大対策 2023】で扱ってます。
是非!


【二次・私大対策 2024】その7
電磁気1「一見複雑そうに見える回路」
福井大学後期日程(2005年)・
帯広畜産大学(2005年) 過去問解説

電磁気の1問目は,電気回路の問題をどうぞ。
キルヒホッフの法則の立て方,基準点が与えられたときの電位の求め方,
ホイートストンブリッジの平衡条件,対称性の高い回路の合成抵抗など,
電気回路問題の解き方をこの2問で確認しよう。

ホイートストンブリッジの本質的理解については,
講義動画をつくっています。

また,合成抵抗については,
マナ物理note「合成抵抗博士への道」をどうぞ。


【二次・私大対策 2024】その8
電磁気2「コンデンサとコイルと動く導体棒」
九州大学(2012年) 過去問解説

旺文社全国大学入試問題正解で《やや難》と評された問題です。
コンデンサとコイルが導体棒と並列でつながれています。
なので,それぞれに誘導起電力がかかります。
導体棒の加速度を求めるために運動方程式を立てるのですが,
合力の中に,なんと加速度が現れます
私はこの“現象”を「マトリョーシカ現象」とよんでいます(笑)
なかなか良いネーミングだと自負しています。


【二次・私大対策 2024】その9
電磁気3「磁場中のバネつき導体棒の単振動」
東京大学(1997年) 過去問解説

生徒から質問を受けた問題を1問
その質問にこたえる形で【解答・解説】をつくってみました。

運動の様子を記述する式,電気回路のふるまいを記述する式を立て,
未知量について解くだけですが…。
自分で正の向きを設定する作業が難しく感じられるかもしれません。

この問題は,笠原邦彦さんが受験生のときの問題だったようです。

https://twitter.com/ILP_bot/status/1755871912444768476?s=20


【二次・私大対策 2024】その10
電磁気4「コンデンサ充放電の過渡現象」
京都大学(2021年) 過去問解説

近似計算&微小量の扱い方,微分方程式の解の式の扱い方,
グラフの傾きの物理的な解釈(概念)など,
高校数学全般を物理に利用することを前面に押し出した問題です。
(ただし,微分方程式は解けなくて大丈夫です)
エネルギー収支については,問題文に結論は書いてありますが,
解答・解説で確認をしておきました。
ちなみに,外部からの力は,アンペール力とつり合うように加えている
ので,力のつり合いから求められます(作用点を導体棒の中点として)。
(もしくは,点𝐎を軸と考えたときの力のモーメントのつり合いでもOK。
    その場合,力の作用点はどこでも大丈夫です。)
(注:誘導起電力の仕事率とアンペール力の仕事率は常に相殺します)

旺文社「全国大学入試問題正解」では《難》と評価されていましたが…


【二次・私大対策 2024】その11
波動1「音源→観測者の方向に垂直に吹く風」
千葉大学医学部(2011年) 過去問解説

風が吹く場合のドップラー効果の問題。
問3は,医学部医学科と理学部物理学科の受験生のみが解く問題です。
音源から観測者の方向に対して垂直に風が吹きます
このタイプの問題はあまり解いたことがないかもしれません。
問2をヒントにして解き切ろう!
最後,近似式が出てきます。
𝟏 よりも十分小さい数に対して成り立つ式なのですが,
はたして,𝟏/𝟏𝟔 (=𝟎.𝟎𝟔𝟐𝟓) は 𝟏 よりも十分小さい数と言えるのか,
という疑問は残ります。医者ならこの変化は見過ごせないはず。

「ドップラー効果」に関しては,
「マナ物理 note 波動分野『音波』」を参照にしてください。
さまざまなパターンを網羅しています。


【二次・私大対策 2024】その12
波動2「マイケルソン干渉計」
慶應義塾大学理工学部(2016年) 過去問解説

2015年9月14日,
米国のレーザー干渉計重力波検出器 LIGO (ライゴ) が
ブラックホールの合体から発生する重力波の直接検出に成功しました。
レーザー干渉計型重力波検出器の基本となるのがマイケルソン干渉計です。
マイケルソン干渉計は教科書で扱われることはあまりありませんが,
入試問題ではよく見かけるようになりました。
この重力波の直接検出成功が少なからず関係していると思います。


【二次・私大対策 2024】その13
波動3「3スリットを通る光の干渉」
千葉大学理学部後期日程(2021年) 過去問解説

ヤングの干渉実験は2スリットの場合が基本ですが,
3スリットや4スリットの問題も出題されることがあります。
基本的には誘導にのって解けば解けるようにつくられているので,
あまり気にする必要はありませんが,
最後に得られるグラフの解釈は一度は考えておきましょう。
(大きな極大点と小さな極大点が現れます)


【二次・私大対策 2024】その14
原子物理1「水素原子に類似した物理系」
大阪大学(2021年) 過去問解説

原子物理分野については,いわゆる ″難問” はつくりづらいのですが,
実験装置に少し変更を加えたり,複数の現象を組み合わせることで,
取り組みづらくすることはできます

教科書通りではなく,少しずらした設定を用意して,
基本事項が理解できているかどうかを確かめる問題もよく見られます。

原子物理分野は,他分野の知識を利用することもよくあるので,
後期日程に向けて物理全分野を総復習でき,
20世紀当初の最先端の物理を学びつつ進められるので面白い!


【二次・私大対策 2024】その15
原子物理2「レーザー光による原子の冷却」
京都大学後期日程(2005年)

レーザー光による原子の冷却については,京都大学は前期日程で,
1988年にも出題をしています。マナ物理 𝕏 でも過去に扱っています。
(マナ物理noteの【原子物理総復習 その5】を参照)
原子が吸収する光の振動数は,その原子の種類に固有の値となります。
(光子のエネルギーが原子内電子のエネルギー準位の差)
そして,光(光子)を吸収したときのみ,原子は運動量を変化させます
この問題では,光子を放出するときの反動にも注目をして,
到達可能な最低温度の導出も(有効数字1桁ですが)行わせています。


【二次・私大対策 2024】その16
原子物理3「固有𝐗線・原子核反応」
大阪大学(2022年)・香川大学(2021年)
過去問解説

量子条件,振動数条件を使って,
エネルギー準位を求める問題はよく見られますが,
大阪大学の問題では,もう一つ新たな設定を加えています。
問題文を正確に読み取って立式をするのですが,計算力も問われます。
香川大学の記述問題は,
どこまで詳しく述べればいいのかを自分で判断する難しさがあります。
必要ない用語も交じっているので,惑わされないように。


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