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【高校物理】波動分野「音波」            <改訂版>

具体的な波(波動)の例として「音波」を扱います。
「音波」も波動の一種なので,
「反射」「屈折」「回折」「干渉」の現象が見られ(聞け)ます。
さらに「ドップラー効果」や「うなり」などの現象についても,
式の導出から行っていきましょう。
(それぞれの一連のポスト(ツイート)の後に,
そのポスト(ツイート)内で取り上げた問題&解答解説をまとめた
PDFファイルを添付しておきました
こちらも是非活用してください。)


【音波 その1】
「弦を伝わる横波の力学的考察」(講義・例題)
 工学院大学(2000年) 過去問解説

弦を伝わる波の速さの導出はさまざまありますが,
この問題は「近似を高める」という方法をとっています。
途中,正確な計算力が求められる問題です。

出題者(大学教員)の方にお願いです。
問題の初めに「目標はこれで,手掛かり(材料)はこれ!」
と示してもらった方が,解く方としてはありがたいです。
途中,どこに向かっているのか分からなくなるので。


【音波 その2】
「弦を伝わる横波の力学的考察」(実戦問題)
 東京工業大学(2014年) 過去問解説

この問題では,弦を伝わる横波の速さを,定常波を使って導出します。
【音波 その1】の工学院大学の問題とはまた違ったアプローチです。


【音波 その3】
「弦の固有振動」(講義1・例題)

音波も波動の一種なので,重ね合わせの原理が成り立ちます。
弦の固有振動は「定常波」です。
両端で固定端反射した波が重ね合わされて生じます。
ただし,定常波となるための条件があります
それを正弦波の式からから確認していきましょう。


【音波 その4】
「弦の固有振動」(講義2・例題)

弦を伝わる横波の速さについては,教科書ではいきなり公式が登場します。
教科書のこの展開は,
なぜ線密度という物理量が必要なのか,比例定数は必要ないのか,
など疑問が生じた人には厳しいと思います。
この講義では「次元解析」をまず紹介し,
力学の知識を使い「弦を伝わる横波の速さ」の式の導出を行います
その後,導いた公式を用いて例題を解いてみましょう。
結局,立てるべき式は「波の基本式」であることが分かります。


【音波 その5】
「弦の固有振動」(実戦問題1・2・3)
 東京工業大学・東京電機大学<改題>
 ・慶應義塾大学工学部(1977年) 過去問解説

弦の固有振動の標準問題を集めました。
繰り返しますが,「𝒏 倍振動の公式」というものはありません。
君たちが立てる式は「波の基本式」だけです。
1波長分の長さ,弦を伝わる波の速さ(張力,線密度),
振動数のいずれかが未知量となっているだけです。
波源として音叉を用いるとき,
音叉が横になっているか縦に立っているかに注意をする必要があります。


【音波 その6】
「気柱の固有振動」(講義・例題)
 同志社大学・横浜国立大学<改題>
 (1985年) 過去問解説

「気柱の固有振動」の扱い方は,基本的には「弦の固有振動」と同じ。
波の基本式を立てるだけです。
ただし,管が閉管か開管かで定常波の描き方が異なります。
また,管が太い場合は「開口端補正」を考える必要も生じます。
考える必要がない場合には,必ずその一文があります。
 一方,考えなければならない場合には,
 その一文がないときがあります…う~ん…)
いずれにしても,閉管でも開管でも「基本振動」(の振動数)を
考えるところから始めましょう。それが一番の近道です。
※ 気柱の固有振動については,YouTube 解説動画もあります。


【音波 その7】
「気柱の固有振動」(実戦問題1・2)
 三重大学(1997年)・東京大学(2010年)
 過去問解説

三重大学の問題(問3)は,
実際に実験をしてみれば「最も注意したこと」は分かります。
逆に言うと,実際に実験をしてみないと分からないと思います。
三重大学はこの実験は必須だととらえているのです。
実験重視の傾向が高まっているので,
このような問題がこれから増えていくと思われます。

東大の問題は,実際に実験をすると分かりますが,
この「クントの実験」では,微粒子が鉛直方向に舞います
その様子を見て,どこが定常波の節でどこが定常波の腹か,
本当に分かるのでしょうか(あとで考察します)。

三重大学の問題文の最後に「実際の問題用紙」を載せました。
そこには解答欄もついているのですが,
問4の解答欄が異様に大きいことが気になります。
問3と問4の解答欄の大きさを間違えたのではないか,
と個人的には想像しています。


【音波 その8】
「クントの実験」(講義・例題)
 新潟大学・東京大学(1993年) 過去問解説

棒を波源とした「クントの実験」は,
さまざまな不可解な箇所があります

これは実際に実験をしてみないと解決しない
(実験をしてみても解決しないこともあります)のですが,
すべての高校にこの装置があるとは思えませんし,
実験を行う時間もないという高校も多いと思います。
私はとりあえず,予備知識なしで生徒にこの問題を解かせ,
疑問点をすべて挙げさせました。
生徒から出てきた疑問点は主に次の3つです。
・ ガラス棒の中点を押さえて縦振動させたら,
 本当に中点は定常波の節になるのか(新潟大学)。
・  ガラス棒では両端が定常波の腹なのに,
 気柱では定常波の節になる理由(新潟大学)。
・ 「激しく動く部分」とはどんなふうに動くのか(新潟大学)。
「管壁から離れて舞い始めた」とはどんなふうに舞うのか(東京大学)。

2つ目のツイートには,「クントの実験における粒子の運動」
(新潟県立堀之内高等学校 笹川民雄さん の論文のPDF)のリンク
をはっておきました。参考にしてください。


【音波 その9】
「クントの実験」(問題のある問題)
 首都大学東京(2013年) 
 (参考問題) 京都大学(2010年)

首都大学東京の問題は,定常波の図を描く時点で手が止まってしまいます。基本振動はどんな形になるのだろう。
開口端にスピーカをピタッとくっつけるタイプの問題では,
常にその疑問がつきまといます。
「それは実験をしてみないと分からない」と言っているのは京都大学です。
(この姿勢は私のものに近いです。)
最後にこの「問題のある問題」への私の対処法を述べてみました。


【音波 その10】
「ドップラー効果の式の導出」(講義・例題)
 富山医科薬科大<改題>・
 福武書店第5回進研客観テスト<改題>
 過去問解説

ドップラー効果は音波に特有の現象ではありませんが,
まずは音波で考えたいですね(具体例が多い)。
最終的には波源(音源)と観測者で起こっていることを
一気に考えて式を立てますが,
まずは,
波源で起こっていること(波長の変化)
観測者で起こっていること(観測する音速の変化)
別々に考えましょう(例題1 富山医科薬科大学)。
次に,
「音源が音波を出した時間」「観測者が音波を受け取った時間」
に注目した方法も紹介しています
(例題2 福武書店第5回進研客観テスト)。
ドップラー効果の式はさまざまな導出法があります。
YouTube 動画も参考にしてください


【音波 その11】
「ドップラー効果の式の導出」
 (実戦問題1・2) 工学院大学(1997年)・
 電気通信大学(1984年)<改題>過去問解説

ドップラー効果の問題は
「公式導出」→「その公式を使って新たな現象を読み解く」パターン
が多いという印象。
<実戦問題1> 一次元でのドップラー効果。
風が吹く(媒質が移動する)場合,および,
壁がある(壁を観測者や音源とみなす)場合
を考えます。
<実戦問題2> 斜め方向に音源が動く場合のドップラー効果。

実戦問題1にはYouTubeの解説動画があります
参考にしてください。


【音波 その12】
「ドップラー効果とうなり」(講義・例題)
 鳥取大学(2004年) 過去問解説

ドップラー効果によって振動数が変化した波と
変化していない(もしくはさらに変化した)波を
同時に受けると「うなり」が観測できます。
この問題では,
(少しだけ)振動数の異なる2つの単振動の式の合成により,
うなりの振動数を導出します。
最後は,うなりの振動数の式とグラフの読み取りから,
音源の振動数と反射板の速さ求めます。


【音波 その13】
「ドップラー効果」(実戦問題1)
 < 血流の速さを測定する原理 >
 近畿大学医学部医学科(2016年) 過去問解説

ドップラー効果を利用して何ができるか。
まず思いつくのが「速さの測定」。
この問題は,医学部入試ではおなじみの「血流の速さの測定」です。
ドップラー効果の原理から公式導出,公式の応用まで,
丁寧な説明,誘導があるので解きやすいと思います。


【音波 その14】
「ドップラー効果」(実戦問題2)
 < コウモリの獲物探知 >
 岐阜大学(2009年) 過去問解説

人の聞こえない音波を超音波といいますが,
具体的には2万Hzより高い振動数の音波です。
何か特別な音波のような感じがしますが,
超音波を聞くことのできる動物は多いです。
いや,むしろ人が聞こえない高い音が聞こえる動物の方が多い
(イヌ,ネコ,ネズミ,ブタ,ウシ,…全部?)
と言ってもいいくらいです。

超音波は指向性が高く,周囲にあまり広がらず,
狭い範囲でビーム状に真っすぐ進む性質

(平面波と特徴が似てますね)があります。
これをうまく利用しているのがコウモリやイルカです。
彼らは超音波が聞けるだけではなく,出すこともできます。


【音波 その15】
「ドップラー効果」(実戦問題3)
 < 正弦波の式 → ドップラー効果 >
 東北大学(2021年) 過去問解説

これまで見たことのない設定の問題が出題されたとき,
受験生はどう対応するか,
という問題に取り組む姿勢を出題者は答案から読み取りたい
と考えています。
正弦波の式(波の式)とドップラー効果,
それぞれが独立していると考えている受験生は多いと思います。
この問題では,
正弦波の式の位相に注目して「ドップラー効果の式」を導きます
いろいろな解法がありますが,私の解法が一番スッキリしています。
是非,他と見比べてください。
【音波 その16】と【音波 その20】も参照してください
関西大学(1995年)の問題(異なる媒質間のドップラー効果)と,
ポスト(ツイート)内でも触れている 早稲田大学(1988年) の問題です。


【音波 その16】
「ドップラー効果」(実戦問題4)
 < 異なる媒質間のドップラー効果・
   等速円運動する観測者 >
 関西大学(1995年)・駿台全国判定模試
 過去問解説

< 異なる媒質間のドップラー効果 >
力学の「単振動」を習う前に波動を習っていた時代,すなわち
「正弦波の式」が[発展・応用]に入っていた2000年代,
「正弦波の式」から「ドップラー効果の式」を導出する入試問題は
考えられませんでした。
しかしそれ以前の入試問題をみると,
そのタイプの問題を見つけることができます。
そして現在,教育課程が変わり,
力学 → 波動 という正常な順番で物理が教えられるようになり,
このタイプの問題が普通に出題できるようになっています。
要注意です!

< 等速円運動する観測者 >
波の伝わる方向の(観測者の)速度成分によって,
観測する波の振動数が変化します。
観測者が観測する波の振動数は時刻 𝒕 とともにどのように変化するのか,
時間変化のグラフを選択させる問題もあります。
「波の数」に注目することは重要です。
ドップラー効果の式の導出や,波の干渉などでも
「波の数」に注目することがあります。練習を積んでおきましょう。

ちなみに,平面波の音波ってどうやって作るのでしょうか
→ 「平面波スピーカ」って知っていますか。
平面波は直進性が高く,広がりにくい性質(指向性が高い)があります。
これ,電車の駅のホームのアナウンスに利用されているそうです。
1つのホームの片側が上りホームで反対側が下りホームのとき,
平面波スピーカならば声が混ざらない
(片側のホームの人にだけ聞こえる)のだとか。
平面波スピーカがなかった時代,
上りが男の人の声で,下りが女の人の声というように分かれていた
(声が混ざっても聞き取れるように)ことが多かったそうです。


【音波 その17】
「ドップラー効果」(実戦問題5)
 < 斜め方向から風が吹くドップラー効果 >
 大阪大学(1988年)・九州大学(1989年)
 過去問解説

風が吹く(媒質が動く)のですが,
その方向が音源の進行方向に対して斜めであることが
この問題を少し複雑にしています。
無風時の音の速度,風の速度,実際に観測者に伝わる音の速度を,
それぞれベクトルで表して関係式を導きます

これは,力学で速度ベクトルを習ったときに必ず解く問題
「流れのある川を岸に直角に渡るには?」に似ています。

大阪大学の問題と九州大学の問題を解けば,
このタイプの問題の対策としては十分だと思います。


【ちょっと物理から離れて】

私は生徒や保護者に対して
「こんな視点はどうですか?」
という話をよくします。
その話の一部を X (旧:Twitter) に投稿することがあります。

<おまけ>(そして物理に戻る…)


【音波 その18】
「ドップラー効果」(実戦問題6)
 < 光のドップラー効果 >
 立命館大学(1989年) 過去問解説

ドップラー効果は音波に特有の現象ではなく,
水面波や光波などの他の波でも起こります。
この立命館大学の問題は,設定が少し複雑なのですが,
動く壁で反射された光がドップラー効果により振動数が小さくなり,
振動数の変化なく届いた光と重ね合わさって「うなり」を生じます。
3つ目のツイートでは「赤方偏移」に関する誤解について述べています。


【音波 その19】
「ドップラー効果」(実戦問題7)
  < 光速を超えるように見える現象 >
 早稲田大学教育学部(1988年) 過去問解説

「光速を超えるように見える現象」を扱った問題です。
1988年当時,この問題は新傾向の問題でしたが,
今でもこの問題は新傾向だと思います(笑)
「考察」では,ドップラー効果の知識を使って,
この現象を読み解いてみました。
合成波が元の波より速さが速くなる(ように見える)現象は,
平面波(水面波)の反射の実験で確認することができます


【音波 その20】
「ドップラー効果」(実戦問題8)
 < マイケルソン干渉計とうなり >
 早稲田大学理工学部(1988年) 過去問解説

ドップラー効果の問題というよりは,マイケルソンの干渉計ですが,
単振動の式の位相部分に注目をして,
(角)振動数に変化が起こることを確認します
(【音波15】も参照してください)。

問題自体は設定が少し複雑で,途中,
疑問に思う箇所がいくつか出てくると思います。
できるだけその疑問を解消できるように解説してみました


以上です。お疲れ様でした!  マナブ



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