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【振り返り】ボ教概論Ⅰのつくり方かた⑤場の作用の定義

こんにちは。ボドパパです。

前回は「学びの要素」について、その整理のプロセスを中心にボ教概論Ⅰの中核に触れました。

今回は、ボードゲーム教育の特徴の一つである「場の作用」について、その定義や特徴、また具体性について解説していきます。

ボードゲーム教育の場の作用とは?

私たちボ教協は、ボードゲームの学びの要素の中で「個別のボードゲームに依存しない学びの要素」があることに注目していました。

ボードゲームを教育利用する場において、発生する学び。
例えば自立性や集中力などがそれにあたります。

それはいったいなぜ発生するのか、という問いを議論して、私たちなりに定義した概念が「場の作用」という事になります。

では、早速結論を。

ボ教概論Ⅰの「場の作用」のページを一部引用します。

場の作用とは、ボードゲームをプレイする時間空間がもつ、いくつかの学びの要素獲得を促進する作用のことです。ボードゲームをプレイする場には自律性や集中力、能動性などの獲得・成長を促す作用があると考えられます。

ボードゲームをプレイする場には3つの特徴があります。

①日常生活とは異なる課題(ゴール)
②多様なプレイヤーがルールを共有すること
③ゲームをプレイする集団が形成する外部との境界

ボードゲーム教育概論Ⅰ「場の作用とは」より


場の作用はこの矢印のこと

ここにボ教協の場の作用における議論のすべてを込めているので、読み解くのが難解かもしれません…。
概念を概念で説明するので難しいのかも。

特に、場の作用をもたらすボードゲームをプレイする場の3つの特徴について、より詳しく解説することで場の作用の理解が進むと考えます。

特徴①日常とは異なる課題(ゴール)

日常生活の中ではさまざまな課題に直面することはあると思うのですが、ボードゲームにはその課題の種類とはかなり違う種類の課題やゴールが設定されています。

例えば、

  • 絵を描いて、他の人に見てもらい、お題の単語を当ててもらう

  • 誰よりも早く島の覇権を握る

  • オークションでより安く買い、取り高く売る

  • 自分だけが知っている答えを、知っていることを悟られずに全員に伝える

などなど…日常ではほとんど経験できなさそうなシチュエーションでの課題やゴールが設定されていますよね。

この非日常な課題設定を改めて認識し、課題に集中して取り組むことがボードゲームをプレイする場の特徴として挙げられます。そしてこの特徴が、教育の文脈として「場の作用」をもたらすと考えています。

特徴②多様なプレイヤーがルールを共有すること

多様な子ども達が一つのボードゲームを遊んでいる印象派風の絵画 Powered by Copilot

ボードゲームは複数人で遊ぶことが多く、そこには多様なプレイヤーが含まれます。そしてそのプレイヤー達は一つのルールに則って行動することになります。

こういう状態は日常の中ではあまり起きないことです。

子ども達はよく「遊び」のなかでルールを決め、それを参加者同士で守り合う状態を維持します。

大人になると、そのような遊びではなく、社会的なルールに則った行動をするようになり、その場限りのルールの中で行動することは少なくなります。

子どもと大人が混ざった、多様なプレイヤー同士でルールを守り合うことを要求する「ボードゲームをプレイする場」はその意味でも特殊性が高いと言えます。

特徴③ボードゲームをプレイする集団が形成する外部との境界

ボードゲームをプレイした方はこれも感覚的にわかることだと思うのですが、プレイしている人同士やその場が外部の世界と切り離され、境界線がはっきりする感覚があると思います。

これがなぜ起こるのか、3つの要素で説明したいと思います。

プレイヤー同士の相互作用: ボードゲームをプレイする集団は、プレイヤー同士の相互作用を通じて結びつきを強めます。例えば、競争型のゲームではプレイヤー同士が競い合い、協力型のゲームではチームとして協力し合います。

ルールと枠組みの設定: ボードゲームは、ルールや枠組みのもとで行われます。これにより、プレイヤーと非プレイヤーの間に遊びの境界が設定されます。ルールや枠組みは、プレイヤー同士の間での行動や関係を制約し、ゲームの進行を規定します。

共有される体験とコミュニケーション: ボードゲームのプレイには、プレイヤー同士が共有する体験やコミュニケーションが欠かせません。プレイヤーはゲームを通じて互いの戦略や考え方を知り、共通の目標に向かって行動します。この共有される体験やコミュニケーションは、プレイヤー同士の間に結びつきを生み出し、外部との境界を生成します。

まとめると、ルールと枠組み、相互作用とコミュニケーションなどが組み合わさって、遊びの領域が形成され、その境界が明確になります。

明確になった境界の内側にいる状態が、没頭し、夢中になる状態を引き出し、それが場の作用として学びを要素の獲得を促進していると考えています。

ファシリテーターの存在価値

ボードゲームをファシリテートする一人の大人と4人の子ども達の印象派風の絵画
Powered by Copilot


もう一つ重要な、場の作用にまつわる存在として「ファシリテーター」という存在があります。

ファシリテーターはボードゲーム教室をした場合を想像していただくと、その教室の先生にあたる人を想定します。

ボ教概論Ⅰからファシリテーターについて引用します。

ファシリテーターは、その振る舞いや環境整備によって、ボードゲームをプレイする場を「教育の場」へと昇華させ、場の作用を促進・最大化する役割を担います。

ボードゲーム教育概論Ⅰ「場の作用とは」より

私たちボ教協は、ボードゲームをプレイするだけで場の作用は発生する、と思っていますが、その量や質を高めるためにはファシリテーターの存在が必要となると考えています。

では、ファシリテーターは具体的にどんなふるまいや環境整備をすれば、子ども達の学びの要素の獲得を促進することができるのでしょうか。

ボ教概論Ⅰで紹介している具体例の一部を紹介しますね。

ふるまいの例:プレイ中の学びを促す声掛け
3つの声掛けの種類区分を意識して、学習者の状態に合わせて声掛けを選択すると効果的。
①ファシリテーターの主観的実況
 例えば…
 「そこに置かれると困るなあ」「今のトップは自分から見たら誰々だ」
②プレイヤーへの直接アドバイス
 例えば…
 「今まで出てこなかったカードは何か考えてみよう」
③盤面の状況の認知補助
 例えば…
 「ラウンドが最終回に入ったよ。そろそろ最終局面だね。」

環境整備の例:マジックサークル*の形成に向けた環境整備
できるだけゲームに集中できるように、
①物理的に外部の情報(音や光などのノイズ)から切り離す。
②挨拶などで儀礼的に時間の境界をつくる(この時間からこの時間まではゲームに集中する時間なんだ、という事を明示する)
*マジックサークル:ゲームを始めたり、止めたりする際、プレイヤーが、時間と空間においてゲームを定義している境界もしくは枠のこと
ケイティ・サレン, エリック・ジマーマン(著),山本貴光(訳)(2011)『ルールズ・オブ・プレイ』

このようなふるまいや環境整備は、実践の中でベストプラクティスが生まれ、ボードゲーム教育を目指す方の中で共有されていくことで、世の中のボードゲーム教育全体の質が高まると考えます。

ボ教概論Ⅰでは上記の例のような「教育実践における準備と工夫」という項目で、ふるまいや環境整備に関するノウハウを大量に詰め込んだページがありますので、ぜひお手に取ってご覧いただければと思います。

場の作用の捉え方はさまざま

場の作用の認知の仕方は様々あると思いますが「ボードゲーム教育」の文脈でボ教協が議論し一旦定義したものが「場の作用」であり、これは今後もその概念を深堀していく必要があると思っています。

ご意見、ご感想などありましたらこちらのフォームにどしどしいただければボ教協の議論も深まります。
ぜひよろしくお願いいたします。

ボードゲーム教育概論Ⅰご感想フォーム

WRITTEN BY

ボドパパ
日本ボードゲーム教育協会所属。
流通小売&ITデジタル会社の社長秘書で、ボードゲームと家族が大好きな父親です。息子(5)と娘(2)の子育て真っ最中。
ボードゲームを子育てにどう活かすか、に興味があります。
好きなボドゲは「魔法にかかったみたい」
https://twitter.com/bodopapa

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