公立小風の教室風景

算数の苦手に隠された秘密とその対処法をお教えします

こんにちは、「学びのベーション」編集長の今木です。
今日は算数の苦手を紐解きつつ、その対処法をお伝えしたいと思います。
これまでに発表された調査データと、自分が「RISU算数」というタブレット教材を提供する中で得た学習データをもとに話を進めていきます。

小学校3年生の4割超で算数が苦手科目1位

まず始めに、こちらのグラフを見てみてください。

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(「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」スーパーウェブ(神戸市中央区京町))

3~6年生の苦手科目1位が算数になっています。
さらに、学年が上がるにつれてだんだんと不得意になっていくのではなく、3年生の時点でなんと4割を超える子どもが算数を苦手と捉えているのです。

そもそもの話をすると、「〇〇が苦手」という認識は、様々な要素が絡み合って作られています。

・学校のテストで点が取れないから
・親や先生に「○○はこれが苦手だね」と言われたから
・つまんないし、あんまりやる気がしないから

これに基づいて1つ、上のデータの注意点を挙げるとすれば、「苦手意識」というのはあくまでも主観的なものだということです。客観評価と自己評価がかけ離れていて、実はそれほど算数の成績が悪いわけではない子どももカウントされているという可能性はあります。

ただ、わたしはこのデータを看過できません。その理由は2つ。

・算数の苦手意識が他の教科を巻き込んで「苦手のスパイラル」を作ってしまうリスクがある。
・中学受験の算数は年々難化傾向に。算数の出来が合否を大きく左右するといっても過言ではない。

「計算力」「読解力」「図解力」「空間把握力」……
算数の学習において身に付けるべき力は多岐にわたります。ということは、算数でのちょっとしたつまずきが他の理系科目の苦手意識に繋がってしまうことは容易に想像できますよね。そしてこのようなつまずきの連鎖や苦手意識を突くように、中学受験では毎年算数の応用問題が難化し、「総合力の高い子ども」のみを合格させているのです。

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(今木智隆『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』文響社 2019、p.53)

算数のつまづきを特定する~4つの単元~

ここまでかなりショッキングな事実を並べてきてしまいました。
ここからは、「RISU算数」で実践している苦手をつぶしていくためのポイントをお伝えします。

まず、算数の単元と言われて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?
計算? 図形? 時計? etc…
「RISU算数」では、算数を4つの単元に分けています。

1. 位
2. 形
3. 単位
4. 時刻と時間

この単元分け自体は学習指導要領と相違ありません。
ただ、学校での各単元の学習の進め方は、RISUと大きく違うところがあります。

学校では、たし算とひき算をやったと思ったら、次の授業ではいきなり図形の説明が始まったり、筆算を習得したと思ったら次はリットルとデシリットルの説明が始まったりと、各単元がまぜこぜになっていることが多いです。

このような学習の進め方で子どもの頭の中がどうなるかというと、文字通り「ゴチャゴチャ」になってしまいます。これまで学習してきた内容を一旦置いておいて、さらに新しい概念を習得しなければならないからです。

こちらの表を見てみてください。

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(今木智隆『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』文響社 2019、pp.180-181)

飛び飛びでの学習になりがちな各分野をグループ分けし、どの分野の知識を応用すれば何が習得できるのかをまとめました。

学校では無理やり学年ごとの指導要領で区切られているところを、RISU算数の教材では分野の関連性に基づいてつなげています。
ここが今回伝えたいことのミソです。

本当に意味のある復習でつまずきを減らす

つまり、学習指導要領では学習する単元が飛び飛びになっているため、どの単元でつまずいたかよりも「何年生の何学期につまずいたか」に目がいってしまいがちですよね。そして、「じゃあその1つ前の学期の内容を復習しよう」などと子どもに勧めてしまいます。それが大きな間違いなのです。

例えば4年生で学ぶ「億・兆 およその数」でつまずきが出たとします。さすれば、戻るべきは3年生の内容ではなく、2年生の「大きなかず」です。このように、学年にとらわれず、4つの単元のうちどれでつまずいたのかを特定し、それぞれの基礎固めをすることが重要です。

復習は、「どの単元でつまずいたのか」を見極めてから。
むやみやたらに学校で習った前の内容に戻るのではなく、学年をまたいでも「各単元の基礎固め」を徹底的に行なう。

1. 位
2. 図形
3. 単位
4. 時刻と時間

さらに補足しておくと、「時刻と時間」の単元については、それほど焦ってマスターする必要はありません。

逆に、つまずきが出たからと急いて文章問題や時間の筆算に取り組ませてしまうと、「時間は止まらず経過する」という概念や60進法の計算を飲みこめず、さらに苦手意識を増幅させてしまうこともあります。

まずは日常生活で「今日は何時間寝る?」「明日は何時におでかけする?」などとさりげなく時刻と時間を答えさせるような会話を取り入れ、子どもが自然と時計に目を向けられるようにアシストしてあげてください。

ただし中学受験を検討しているのであれば、早い段階でつまずきをつぶしておきましょう。「時刻と時間」の性質を利用した応用問題は特に難関校において頻出します。まずは日常の中で時間の感覚を身に付けるところから始め、徐々に60進法での計算や少数・分数を用いた時刻と時間の計算にも充分取り組んでおきたいところです。

「苦手意識をなくす」こと

復習にとどまらず、新しい単元の学習に取り組む際にも、なるべく苦手意識を持たせたくはないですよね。苦手意識はどこから生まれるのか、さきほど軽く説明しました。

・学校のテストで点が取れないから
・親や先生に「○○はここが苦手だね」と言われたから
・つまんないし、あんまりやる気がしないから

テストの結果がよくなかったり、塾で上位クラスに入れなかったりすると、子どもはヘコみます。大人でもヘコみます。さらにそれを身近な人に指摘されると、「やっぱりそうなんだ、自分は出来ていないんだ」という認識を強めてしまって、モチベーションをなくしてしまうことも多いです。

単純に興味を持てない分野もありますよね。あとは「なんか見た目が難しそうだから、やりたくないなあ」ということも往々にしてあるわけです。

もちろん人にはそれぞれ得意・不得意があります。ひとくちに算数と言っても、計算はスムーズに出来ていたのに図形で途端に分からなくなってしまう、なんてこともあって当然です。逆もしかりで、「すでにできていることを何回もやらなきゃいけないのはつまらない」と思うのも当然です。

子どもの「わからない」や「つまらない」を否定する必要は一切ありません。「そんなだとこの先勉強続かないよ!」などと叱って脅してしまうのはもってのほかです。

実は、RISU算数を利用している会員からのお問い合わせで一番多いのは「どうやったら子どものモチベーションは上がりますか?」や、「つまずいてしまって学習が止まりました。励ましのメッセージをください。」という内容です。「問題を解説してください。」ではないんですよね。

そのようなメッセージをいただいたときは、チューターの励ましメッセージ動画を送ってあげるだけでなく、必ず「おうちの方からも『ここまでできたんだ、すごいね!』や『RISUを自分からやっててえらいね!』と言葉をかけてあげて下さい」という一文を添えます。

子どもの学習を見守る大人は、多ければ多いほどいいです。
(このあたりのデータもあるので、詳しくは別の機会にお伝えします。)
ただ復習をさせて効率よく算数をマスターさせるだけでなく、ソフト面(感情面)のサポートが「苦手意識」の克服には一番効果的です。

高学年の子どもだと少し嫌がられるかもしれませんが(笑)、おうちの方はぜひ子どもが今どのような単元に取り組んでいて、どういうことが出来て、どういうところでつまずいているのかを把握してあげましょう。

どんなに良い解説を用意しても、本人に吸収する気がなければ意味がありません。まずは出来ていることを褒めてあげて、それから出来ていないところを「お手伝い」してあげてください。

そうすることで、だんだんと子どものモチベーションが上がっていき、今まで避けていた学習のハードルも格段に下がっていくことが期待できます。子どもが学習する気になったらこっちのものです。参考書や教材を使うなり、可能であればおうちの方が解説をするなりして、「わかった!」の楽しさを伝えてあげられるといいですね。

苦手意識をなくすには
・まずは出来ていることを褒める
・出来ていないことは叱らない、過度に指摘しない
・学習のモチベーションをつくってから取り組ませる


今木 智隆(いまき ともたか)
「学びのベーション」編集長。RISU Japan株式会社 代表取締役。
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、デジタルマーケティング専門コンサルティングファームのビービット入社。金融・消費財・小売流通領域のサービスに従事し、2012年から同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した幼児から小学生向け算数教材で、のべ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーでもハイレベル層から、算数やAIの基礎知識を学びたいとオファーが殺到している。

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