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塾+学童=「安親班」?歴史ある台湾式ギフテッド教育の今!


郭 麗蘭さんプロフィール
日本へ5年間の留学経験があり、現在は台湾のロケーションコーディネーターとして日本メディアと多く仕事をしている。リサーチのプロであり、多彩な取材経験も持ち、近年は日本人アーティストのアジアツアーを手掛けたり、日本で台湾観光のPR活動なども行っている。

共働きが多い台湾の子どもたちの放課後は?

諸岡:台湾、共働きが多いとなると、小学校に入学してから子どもたちの学童保育みたいなものもあるんですか?

郭さん:日本の学童保育とちょっと違うんですけど、学校の近くに塾みたいなところがありまして、放課後に塾の先生が学校に生徒たちをピックアップしにきて、その放課後から親が来るまで、遊ばせたり、宿題をみたり、英語や算数の勉強をしたり、おやつや夕飯を出すところもありまして。小学生が放課後に1人で家に帰るのではなく、安親班(アンシンバン)という、親が安心できる「安親」のクラス、という所に行けるんです。

諸岡:そうなんですね。

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郭さん:大体1つの小学校の近くに5〜6件ある。みんな行くから。

諸岡:すごいですね!

郭さん:今、子ども、大体(どこの家庭も)1人か2人しかしないから、安親班に行った方が遊ぶ仲間いるので、家に帰るよりはいいと思います。

諸岡:なるほど。

郭さん:もちろん高い所と安い所がありますが、月に2万円くらいの保育料でも、夫婦共に働いているのであれば、保母(シッター)さん雇うよりはいいと思います。

安親班は、日本の学童と塾を合わせたような施設

諸岡:なるほどなるほど。それを使ってる人は多いですか?

郭さん:ほとんどです。

諸岡:ほとんど!そうなんだ。

郭さん:というのは、塾と名乗っているので、宿題以外に明日や来週の授業もやるところが多いんですよ。あと、今日学校で聞いてわからなかったところも先生が補ってくれる。

諸岡:すごい、ちゃんとやっぱり塾なんだ!

郭さん:そう、そういう支えもあるので、入れておいた方が勉強にはいいだろうというところもあるんだと思います。

諸岡:もうじゃあ、日本の学童保育と塾が合体した形なんですね、本当に。
郭さん:多分そな感じなんだろうと思います。

ギフテッド教育について

ギフテッド:
生まれつき突出した知性と精神性を兼ね備えた子ども

諸岡:オードリータンさんの話に戻りたいと思うんですけれども、まあ、彼女は学校はあまり合わなかったっていうことで、中卒。ただ、自分でしっかり勉強されてプログラマーの技術を身につけられたんですけれども、台湾には彼女の様なギフテッド、天才を対象にした様な学校というのはあるんですか?

郭さん:ちょうどたまたま、うちの姪っ子、今は大学3年生なんですけど、彼女の小学校の時にギフテッドのクラスに入っていたんです。話をいろいろ聞いてみると、全ての学校があるわけじゃないんですけど、学校によってギフテッドのクラスが設けられていて。試験ではないんですけど、いろんなテストとか特徴で選ばれる。普通の授業もありながら、特別クラスの時間もある。例えば数学とか物理とか工芸とかアートとか英語とか音楽とか、たくさんの科目がありまして、優秀な子たちが興味のあるレッスンとか授業を選んで、その時間帯になったら行く。

台湾のギフテッド教育は、社会に貢献する人材の育成を目的に、1973年から台湾政府主導で進められてきました。
分野は、記憶や理解などの「知力」、語学や数学などの「学術的才能」「芸術的才能」、発明などの「創造的才能」、 計画力や組織力、コミュニケーション力など「リーダーシップの才能」、 運動能力や楽器の演奏、チェスなど「その他の分野」の6分野です。

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郭さん:小学校、中学校、高校くらいはギフテッドのクラスがありますが、でも特に何を教えるじゃなく。その才能を引き出す目的のクラスになってるんですが、でも「何が違うの?」と聞くと「いや、好きなことをただやらされてるだけです」と言ってました。

諸岡:そうなんですね(笑)。

台湾で繰り返された教育改革

郭さん:今まで台湾の教育でよく非難されているのは、押し詰めの教育が多かった。

諸岡:ああ、詰め込み式の。

郭さん:もっと1人ずつの個性を引き出す様な教育に、何回も教育改革をしてきたんです。だから、今、台湾にあるギフテッドのクラスは、多分すごく物理とか数学がいいから一生懸命もっと上に生かせる様な教育じゃないと思います。

諸岡:うーん。

郭さん:将来良い大学出て、いい会社入って、いい教育をできて・・・という教育を目指してきたんですけれども、でもこれはね、いろんな教育者が言ったのが、今まで台湾は勉強ばかりしてるから美的なセンスが欠けてるとか・・・例えばIT業界で、人がデザインしたものを発注されて、その製作を下請することしかできない。でも、もうちょっと自分の企画とか自分のアイデアとか自分のセンスで、自社ブランドとか自家アイデアのものをもっと生み出せないかと検討されまして。で、今後の教育は、学校で教える科目、今すぐ使わなくても、将来使わない科目でも勉強する様なことしようよ、そういう教養を持つ様な教育科目も取り入れよう、というのが目的でやっているみたいです。

諸岡:へえ。じゃあ、その子どもたちが勉強する科目が増えたということですか?

郭さん:多様化になったということです。

諸岡:なるほど。

変遷とその政治的背景

郭さん:私の時代の時に、例えば、美術とか体育とか音楽の授業なのに、全部、数学・英語・国語に振り替えられた時代だったんですよ。というのは、その当時、高校の進学率の競争が高いから、それに振り替えないと勉強が負けちゃうから。で、振り替えられて勉強をさせられていたんです。
 だから日本の大学に行った時に、私だけではなく、うちの大学その年15人の台湾からの留学生がいたのに、みんな体育の授業で先生に「何ができるんですか?」って聞かれた時に、誰もできない、みんな大体何もできないということで、しょうがないから当時の先生が、私たちのために、ソフトボール2週間、バレーボール2週間、野球2週間、体操2週間みたいにいろいろ体験させてくださって。こういう時代間の教育の違いによって、国によって違いや差が出てくるというのが、すごく記憶にはっきり残っています。

諸岡:へえ。郭さんもそうやって差というか、多様な教育を体験したことでそういうことが大事だなって感じられました?

郭さん:私の小さい頃は、政治的背景でいつか(中国に)統一されるかもしれないから、みんな海外に第2の家とか子供たちを分散させておけば、いつでも逃げられる、という様に準備をしていたんですよ。だからその頃の台湾人は、一生懸命稼いで、苦しい生活から抜け出して、裕福な生活を保ちたいという時代だったんですが、でも、今になって、台湾も豊かになってきて、もっと子どもに「お金以外に何か与えられないか」という反省が出てきているんじゃないかと思います。

編集後記

今回のお話では、台湾の学校教育の歴史や背景に触れることができました。日本にはない種類の危機感、豊かになった現代だからこそ見えてきた新たな課題・・・。どれも興味深いですよね。
STEAM教育やICT利用、語学教育など、今は世界中で同じような教育がされていても、それを学ぶ背景は国によって様々なのかもしれません。
また、ギフテッド教育では先進国でもある台湾。「他国に引けを取らないように」という想いがあったようです。それに関しては、下記の参考文献をご紹介しておきます。私も今回のインタビューの後に読んでみました。単に万能な天才児ではない、凸凹のある子どもたちをどうサポートするかという視点が、まさにタイトル「才能はみだしっ子」に出ていますが、日本にもギフテッドチルドレンが心地よく学べる環境がもっと広がるといいなと、私、諸岡も思った次第です。

才能はみだしっ子の育て方
酒井由紀子 著/ 隅田 学 監修
主婦の友社 出版
マナビモ!みらいしごと図鑑』は、マナビモ!アソベンジャー!がお送りするマナビ系Youtubeチャンネルです。​毎週木曜日午後5時ごろ更新中!

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