オーストラリアのチーズケーキ屋で働いていた時の思い出 ア◯コゴシゴシ

昨日チーズケーキを食べた。美味しかったと同時に、泣きそうになった。

それはチーズケーキが僕の留学生活の苦労を思い出させてくれる一つの要因だから。野球のキャリアを高校で終えた後に、オーストラリアの大学で勉強をして、卒業しました。おめでとう。自分。その一年目の後半にチーズケーキのお店でバイトをしたのですが、
そうです、この僕が、お菓子やケーキなんて人生でほぼ作ったことがない僕がメルボルンでフワッフワのチーズケーキを作っていました。

野球部の友達に、「チーズケーキ屋でバイトしてる」と言ったら死ぬほど笑っていた。僕も笑っていた。今日はそんなチーズケーキ屋での思い出を、当時友達向けに書いていた、はてなブログの内容を再編集して(具体的には過去形で客観視点にして)皆様にシェアさせて頂きます。

当時僕は21歳、仕事を探している最中から話が始まります。
少し長めです。

週末の午後、留学も一年目の後半に入り、僕もそろそろバイトをしなければいけない(遅すぎ)ということで、まずは履歴書作りに取り掛かっていた。

ほほほ、、この前の休日にも軽く作ったが、やはり英語の履歴書は面白いなーと感心する。内容は日本語と同じようなものでも、手渡しがあまりないことから、一回作ればメールを使ってわーって出来るのか!!と思った僕は、

その通りに、わーって、本当にわーって送ってみたところ、返事が来て面接をしてもらえることに!!やっほー!!半端じゃないレスポンスだ。

面接をする会社は、この夏(日本の冬)にオープンする日本チーズケーキ屋と日本のお風呂屋さん。そう、オーストラリアにも、日本のお風呂屋さんがある時代である。それもちゃんとしたお風呂屋さんだ。
ちなみにDAISOなんてそこら辺にある。最後は伊藤園のメルボルンのオフィスだ。

どうなる。と眉を寄せながら、少し背中を丸めながら、でも嬉しくなる感じを楽しんでいた。そんなこんなで時間が経過すると、
チーズケーキ屋さんからメールが届いた。

45人ほど募集したところ100人以上の応募がありました。

ご、ごごご 50%?! パーセント?! … あ、パーセントか。

50!? … あ、50か。ってパーセント?!50パーセント!?

とまぁ自分以外の多くの「出来ない人」の応募が半端なく多いため、集団面接になったのかと、

まぁ俺は二人に一人なんて全然余裕で入るよと、入らせて頂きますよと、強めの意気込みでその日は寝た。

言葉で殴られまくった面接

当日言われた場所へ行くと、秘書のような30代後半(見た目)女性が、僕に声を掛けてくれて、軽く書類を書き、

「それではどうぞ。」と、エレベーターに乗り、オフィスビルの44階の部屋へ。

自分を含めて5人での集団面接、エレベーターの中での長い沈黙の中で、
自分以外皆女性ということに気づき、

少し焦る。

スーツというかすんごいちゃんした企業面接用な服を着ている人が3人、

焦る。

ちなみに僕は黒い少しちゃんとした靴に、黒いズボン(ダボっとはしていない。)と、紺色のシャツ。

ものすごく焦る。

44階に着くとエグいオフィス。社長との面接であった。
(社長とか聞いてないよぉ)
ガラス窓から眺めれるのはメルボルン市内だけでなく、辺りの郊外までもが入り、素晴らしい景色だ。部屋に入った全員がおぉーとなる。

「社長はまだいらしていないので、お座り頂いてお待ちください」
秘書の女性が言った。

100人以上の中の1番最初のグループ。月曜日の朝である。
あの時の光景は今でも覚えている。僕も一度は経験してみたい生活だ。
一つ言えるのは完全にチーズケーキ屋のそれではない。さすがチェーン店として世界に多く店を出すだけある。

少しするとドアが開き、秘書と共に年齢的に社長であろう人が入ってきた。社長は、年は60は超えていて、身長は高くないが、まだまだギンギンしているという表現が合うであろう。雰囲気がすごい。

社長から見て自分は左端に座り、1番右側から話が進行して行くサイクルになった。一つ一つに質問に一人ずつが左から答えていく形式だ。ディスカッションではなかったのが知識不足の僕にとっては救いであった。

かなり静かなスタート。。。少し緊張が走る

秘書「それでは、まずは自己紹介を。」

ということで、左端の女性から。スーツに身を包み、姿勢がよい。
人は自分と他人を比較することが好きだ。全ては比較だ。面接なんて特にそうだ。この左端の人からの自己紹介で自分の見せ方が変わってくる。

「名前はミサキです。オーストラリアには来たばかりです。」

お、これならチャンスがあるぞ。

「フランスでケーキ屋の仕事をしていたのと、
日本の空港で働いていた経験があるので、それを活かしたいです。」

比較の天秤が一気に粉砕された。

石ころみたいな僕に対して木星みたいなものを同時に測るのは
完全にルール違反です。

「英語よりもフランス語が得意ですが、英語も上達して来てます」

私の語学という部分での強みがKOされ、意識が飛んでいる。
もう倒れて何もできない僕を言葉でどんどん殴ってくる。こんな感じある。

画像1

Break! Break! まだ戦えるか?という審判の問いに辛うじて頷き、
力を振り絞り立ち上がる。ガードを固めていこう。。。
もう、絶対受かってるからー!!うん!!もう!❤️ 
だめだよ?やめてね?もうこれ以上は。

社長「フランスのどこ?」
女性「パリです。」

パリ?! どす!おえっ(吐
最後にエッフェル塔が腹の下部に突き刺さった。

次の女性。

"名前は〇〇です。オーストラリアには2年と5ヶ月居ます"

私の大切にしていた「10ヶ月」のオーストラリアの経験が灰になって飛んで行った。「2年と5ヶ月」という不審者にバーナーで炙られたのだ。
さよなら、「10ヶ月」。今までありがとう。

とまぁ、ワーホリの人達なのでこんな俺よりも仕事の経験はたくさんあるのは当たり前!!何億光年輝く星にも寿命はあるのだ!季節ごとに咲く一輪の花にも無限の命があるのだ!切り替えて行くしかないだろ!!頑張れ!
膝の上に拳をもっと強く握り自分を奮い立たせる。

学生として、ワーホリのこんなお下劣ども(僕がお下劣です)と違って、
長期滞在が出来ることと、一番の得意技、謙虚で真面目なフリをする。
という最大の武器を使いこなしつつも、

社長とのアイコンタクト、姿勢、頷き、時折の笑顔、姿勢、優しい声、真っ白い歯、姿勢、などの速攻魔法たちを自分の人生の中の山札が尽きるまでガンガンに使い、なんとか俺も行けるのでは、と思っていたところ。。。

社長が切り出した。

「ワーキングホリデーで来ている人達の課題は、英語が伸びないこと」

おい、おい、おい、おい!!!!

あんたら実は英語出来ないのかぁー!!(僕も全然出来ません)
だめだよー?英語できないのにオーストラリア来ちゃー?

まぁ左端の人は出来そうだけどな!!
あんたわ出来る、うん、もう受かってる。
頼むからもう何も言わないでほしい。

結果的に
なぜかその面接にいた人たちが全員が受かっていた。
全員が受かったことで、他のグループに50%よりも過酷なパーセンテージを課してしまった罪悪感は少しもありません。

珍事件:勤務中にアソコいじるわけないでしょ

面接に受かったあと、(言葉の角でめちゃめちゃぶん殴られたあと)
トレーニングがあり、チーズケーキを作りまくった。
びっくりしたのだ、ここまでブランディングがちゃんとしていると、チーズケーキはオープン直後は、なんと1000個以上も売れるのだ。

10時間ぐらいの営業なので、1時間に70個、オーブンは一つは3段あり、全部で36個。もう一つは2段で、合計で48個作れるので、店全体の一回転は84個。オーブンで焼くのは45分ほどかかる。つまり、オープン前から作り出したら永遠に作ってはパッキングして売っては作っての繰り返しなのだ。

めっちゃめちゃ忙しい。

すごい量のチーズケーキを世界中で届けているお店である。
トレーニングもめちゃくちゃやり、ケーキ作る人、オーブンを管理して出来たらパッキングする、レジをやる人、他のタルトとか、マドレーヌとかを作る人で別れ、
僕は基本はケーキを作るか、オーブン管理であった。

お店の造りも面白く、ちょうど並んでいる人がガラス越しでオーブンの様子を見ることができるようになっており、僕たちがパッキングする様子も僕達の腰の位置ぐらいまで見れるのである。

このパッキングが難しく、めちゃめちゃ熱い。
ケーキが入っていた円形の型からフワフワのケーキを上手く出して、
そこからあっつあつのケーキを紙で包み、箱に入れて、
ケーキの上に焼きを作りブランドの印をケーキに付けて、箱を閉じる。

そしてそのケーキが入っていた型にこびり付いているケーキの角とかを頑張って布巾で取り、ケーキを作るチームに回すのだ。

ある日僕がオーブンの仕事で硝子の前でそのケーキの方を全力で拭き取っていると、インド系の人が硝子越しで異様に僕のことを見てくる。それもすごく心配そうに。僕はそんな人の目線は全然気にせずに尚も完全にこびりついているカスを取ろうと、中腰で円形の型を腿にあてそれを右手で全力でゴシゴシしていた。

多分、本当に多分だが、腰から下は硝子では見えていない状態で僕がものすごい勢いで股間付近をゴシゴシしていた様子が大変心配になったのだろう。どこの誰が鏡越しで人が見えている公共の場で股間をゴシゴシするのか教えてほしい。インドでは普通なのか?

あんまりにその人が心配そうに見てくるので、僕がどうしたの?というようにその型を見せると、

あ、OKというようにOkサインをし、良かったーというような浅い笑顔で去って行った。

いや、俺のアソコゴシゴシだけ注目してたんかい!

チーズケーキ買わんかい!

俺のゴシゴシに何ドルか払わんかい!
実際のところ僕のゴシゴシはかなりの値段はするという全く意味のわからないことをここで読者の皆様に伝えておきます。

ちゃんとした思い出

ちなみに、あの言葉でぶん殴ってきたミサキさんとは、シフトが重なったこともあり仲良くしてもらい、この前東京でも会ったけど変わらずに元気そうで良かった。

そして、僕がなぜ今もチーズケーキを食べて泣きそうになるのかというと、
生活費の節約のために、シフトがあればケーキを二つほどとマドレーヌも大量に持って帰って、一人で夏のメルボルンの夜を過ごしていたのを思い出す。一人でまるまるチーズケーキを頬張りながら、大学の課題をしては、車の音が響く街の中で寝ていた。起きたら朝7時の路面電車で郊外まで行く生活だ。

あの時はまだスロベニア人の男性とルームシェアをしていて、インドネシア人の女の子と付き合っていたが、そんなこともアソコゴシゴシと思い出すと涙が出てくる。


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