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【開催報告3】ショートショートミュージアム みんなの言葉の美術館(第三回「作品の講評」)

(一社)学びの文庫・VIVITA JAPAN(株)が企画・運営する「ショートショートミュージアム みんなの言葉の美術館」は、2023年11月、12月にかけて、愛知芸術文化センター内のAICHI OPEN ART ATELIER(以下、AOAA)で、愛知県美術館所蔵の作品をテーマにショートショート(とても短いお話)を作成する全三回の講座です。なお、本講座は、愛知県施設活性化パイロット事業の一環で実施しています。

第一回「アート作品を知る」(2023年11月23日(木曜日・祝))は、愛知県美術館で作品を鑑賞しながら、学芸員からアートの見方を学びます。
第二回「ショートショートを作る」(2023年12月2日 (土曜日))は、作家の太田忠司先生と一緒に、前回鑑賞した作品をテーマにショートショートづくりに挑戦します。
第三回「作品の講評」(2023年12月26日(火曜日))は、太田先生から作品の講評、他の参加者がどんなお話を書いたか分かち合います。
作ったショートショートは、製本して各自にプレゼントし、AOAAにも2024年2月末まで展示されます。


本稿は、第三回「作品の講評」の開催報告です。

最初の開催から約1ヵ月。最終回である第三回は、参加者のショートショートを太田先生が講評し、各ショートショートをまとめて一冊の本にしていきます。

まずは、参加者が自身のショートショートを紹介し、続いて太田先生の講評をみんなで共有しました。

太田先生の講評は、参加者のよいところを明確にしていきます。

「作中の『家族だから』という言葉がいいね」
「風が清らかに吹いているように感じた」
「この話は、長い話のエピソード。今後の展開を読んでみたいと思わせる作品だった」
「民衆の言葉で反省する、かわいい王様が出てきた。これからも話を書いてくれるね」
「戦争等、そんな世の中に向けての物語。感動しました」
「楽しいファンタジー。色々な冒険をこれからも書いてほしい」
「白い服が人の心を柔らかくする。現代アートからの発想」
「人生は小さなきっかけで動いていることを感じる」
「話の展開等、正当なシチュエーション」
「可愛らしいおばあさんと女の子とのやりとり、この先の二人をみていきたい」
「作品を読んで、お話作りが好きな子なんだなと思いました。これからも書いていってほしい」
「語りたいことが一杯あるんだな、というのがわかる」
「夢落ちだけど秀逸。白い谷の風景が目に浮かぶ。題材となったアートを、ある意味もっとも素直に解釈した作品かもしれない」

なお、第三回を参加できなかった方に対しても、太田先生の講評は個別にお届けしています。

また、今回の講座について、参加者の感想も共有しました。

「考えるのが楽しかった」
「学校の勉強と違った。学校の宿題は土日があるけど、今回は、当日やらないといけなかった」
「限られた時間で、いっきに思ったことを書くのは初めての経験だったが、形になって驚いた」
「話作りが好き。将来、作家になりたい」

太田先生からは「今回は短時間での締め切りでしたが、いい経験だったと思います」「大事な道具は言葉。自分の言葉で書くことが重要です。筋トレをするように言葉で表現する鍛練をすることも必要です」とのことでした。

さらに、一冊の本にまとめるにあたって、参加者だけでなく太田先生のショートショート、VIVITA JAPAN㈱による生成AIを用いたショートショートも追加されました。

太田先生のショートショートのタイトルは「惑星生態系探査報告」。参加者からは「この作品は人間についての説明が一切ないですね」等の感想が寄せられ、太田先生は「お話しの中で、全部を説明する必要はないのです」等の解説があり、「(プロでなくても)素晴らしいアイデアがあると、一冊の本になって、どれか1つ選ぶとなった時には、ぼくの作品が選ばれない可能性もあります。だから、本当は怖いです」と正直な気持ちもお話されていました。

また、VIVITA JAPAN㈱による、生成AIを用いたショートショートのタイトルは「顔のない王国」。太田先生からは「生成AIには、これを書きたいという思いがない。人間は小説を書くことを楽しいと思うが、AIはそう思わない。それが大きな違いだと思います」「今はまだ、人間を超えていない」とのことでした。

さて、次は、いよいよ製本です。

まずは、自分だけの本をつくるため、参加者が自由にショートショートの並び替えをしていきます。そのため、あえて本文にページ付けをしていません。

ちなみに、表紙は「愛知の活版【昭和印刷株式会社】」に依頼し、活版印刷で仕上げました。凹凸のある文字は、手触りも楽しめます。

次に、断裁機と製本機のメーカーであるHorizon / ホリゾン様のご協力のもと、機器だけなく、社員の方にも来ていただきました。参加者はその場で教えてもらいながら自分自身で機械を扱っていきます。

本文をずれないよう慎重に束ねた後、のり面を裁断機でカットします。
次に、製本機で、糊付けを行い、表紙をくっつけます。
最後に、のり面以外の三面をカットして終わりです。

最後に、愛知県名古屋市の有松町・鳴海町地域の伝統工芸である「有松絞」の技法で染めた和紙を表紙に貼って、本を仕上げていきます。この和紙は、ひとつとして同じ模様はありません。

今回、完成した本は、これまでの講義の様子をまとめたフォトフレームとともに、AOAAで2024年2月末まで展示し、愛知芸術文化センターに保存されます。

また、題材となったアート作品の許諾関係者にもお配りしています。愛知県の担当者の方からは「みなさんの作品を読んでいただき、新たな作品が生まれるかもしれません」とのことでした。

以上で「ショートショートミュージアム みんなの言葉の美術館」は終了です。参加者の皆様、講師の太田先生、愛知県美術館学芸員の深山様、そして、ご協力いただいたすべてのみなさまに感謝を申し上げます。

関連リンク

【開催報告1】ショートショートミュージアム みんなの言葉の美術館(第一回「アート作品を知る」)

【開催報告2】ショートショートミュージアム みんなの言葉の美術館(第二回「ショートショートを作る」)

講師 太田忠司先生 プロフィール
1959年、名古屋生まれ。
1981年、名古屋工業大学在学中に星新一ショートショート・コンテストに応募した『帰郷』が優秀作に選ばれる。
1990年、初の著作『僕の殺人』刊行。サラリーマン生活を終え作家専業となる。
2005年、『黄金蝶ひとり』で、うつのみやこども賞受賞。
2022年、『麻倉玲一は信頼できない語り手』で、徳間文庫大賞受賞。
著作に『月光亭事件』『ミステリなふたり』『奇談蒐集家』『名古屋駅西 喫茶ユトリロ』他多数。