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神戸に自由港書店を訪ねました

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』著者の舟之川です。

先日関西に帰省した折に、少し足をのばして神戸市須磨区にある自由港書店さんを訪ねました。今年5月にオープンしたときから『きみトリ』を途切れず扱ってくださっている書店さんです。
https://jiyukoh.jp/index.html

神戸の中心地三ノ宮からJRで13分。須磨海浜公園駅から階段下から伸びている、海に続く青い一本道(ほんとうに青い)の途中にあって迷いにくいと聞いていましたが、ほんとうにすぐに見つかりました。めいっぱいにひらいたドアが、「どなたでもどうぞ」と歓迎してくれていたので。

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うなぎの寝床のような細長い店内に一歩足を踏み入れると、本が表紙を見せて次々に出迎えてくれています。「5坪弱の限りあるスペースにこれだけ面出しするのは贅沢ですね、ギャラリーのようですね」と思わず私、言いましたが、店主さんとしては、もっと本を置きたいという気持ちがおありのよう。

そうですよね、お店ですものね。来てくださる方にぴったりの本をお渡ししたり、世の中にあるすばらしい本を紹介したり、これからもいろんなやり方を試しながら、営まれていくんだろうと思います。


自由港書店さんのラインナップはユニーク。
名前の通り「自由」がとても大切なキーワードなのだと感じます。
海、船、港。
旅立つところ、帰ってくるところ。
ただ一人でぼおっといられる空間、自分と二人でいられる場所。

街中の人の往来が活発な場所にある書店とは違って、閑静な住宅地にあるから、話題の本や売れる本ではなく、このまちの人々が求める本、人々の傍らにあってほしい本を、お客さんとやり取りしながら選ばれている。そんな時間を大切に積み重ねる店主さんの姿が棚づくりから見えてきます。

「自分の生い立ちの中に本屋さんがあったことを大切にして、それを受け継ぎ、次代に手渡していきたい。そのためにはお店を継続できるようにせねば」とおっしゃってました。


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私たちの『きみトリ』本も、お一人お一人の手に思いを込めて手渡されていっているんだろうなぁ。ありがたいことです。こちらでは『きみトリ』は大学の先生やコミュニティスペースを営む方などに関心を持っていただいているそうです。


カウンター横には「詩」にまつわる本のコーナー。和歌、短歌、俳句は、店主さんのルーツなのだそうです。競技かるたで百人一首に親しんできた私にはたまりません。

そもそも須磨は、源氏物語の「須磨」「明石」の巻に登場する、光源氏がほぼ追放される形で京から落ちていく先。運命の女性となる明石の君と出会ったり、ライバルであり友人でもある頭中将がはるばる会いに来たりと、物語が急速に展開していく重要な場面です。
http://www.suma-kankokyokai.gr.jp/modules/pico/index.php?content_id=9

自由港書店さんがある衣掛町の名も、光源氏のモデルになった在原行平(在原業平の兄)の衣掛伝説からとられているそうです。店主さんが後日、「衣掛の松」の写真を撮ってきてくださいました。

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百人一首の16番に在原行平(中納言行平)の歌があります。

立ち別れ いなばの山の みねにおふる まつとし聞かば 今帰り来む
訳:これでお別れです。でも因幡の国の山に生える松のように「ここでずっと待っているよ」とあなたが言うならばすぐにでも帰って来ましょう。

まさにここが歌枕(和歌に詠み込まれた名所)なのですね。

自由港書店さんから須磨の浦までは歩いて5分ほどの距離です。「今の時期の日没は美しいのでぜひ」と勧めていただいたので、1時間ほどゆっくりと浜辺で過ごしました。遠くには明石海峡大橋と淡路島が見えます。少しずつ日が沈んでいくのを何もせずにただぼーっと見ている時間。いつぶりだったでしょうか。

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百人一首の78番、源兼昌の歌も思い出しました。

淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に 幾夜寝覚めぬ 須磨の関守
訳:(冬の夜)淡路島から渡ってくる千鳥の鳴き声に、幾夜目を覚まさせられたことだろうか、須磨の関守は。

近くには須磨の関跡との言い伝えのある関守稲荷神社があり、住所もずばり関守町なのだそうです。
http://www.suma-kankokyokai.gr.jp/modules/gnavi/index.php?lid=35

私はちょうどこの日は京都から須磨へ向かったので、「ここに役人として単身赴任したり、友達に会いにいったりしていたんだな。新快速(急行)に乗っても1時間以上かかるところ、平安時代ならもっと大変な道のりだったろうなぁ」とも想像しました。

千年前と今とが、風景や歌で一瞬でつながる地。関西の魅力ってこういうところなのですよね。


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帰りに自由港書店さんの前をもう一度通ったら、灯台のような明かりがともっていました。何人ものお客さんで賑わっていて、その様子を外から見ているのもよかった。暖かな場所が、私の心の地図にピン留めされました。

自由港書店さん、ありがとうございました。
お近くにお住まいの方、須磨に行かれる方、ぜひお訪ねください。

この日買い求めた本たち。上2冊は私、下2冊は我が家の10代のセレクト。

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〈随時更新〉 『きみトリ』取扱店舗一覧
https://note.com/manabi_share/n/na3e56fcdb2b7
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