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出血おじさんと、ああしとけば良かった病の私

お気に入りの「劇団鹿殺し」タオルが
血だらけになった。

片面がプリントされたフラットの
汗は吸いにくいけど滑らかなやつ。
プランクとかやる時しくと、
肘に跡がつかなくて重宝してるやつ。
血だらけになって人の手に渡った。

階段5段目辺りから倒れて頭を強打して
後頭部から血を流すおじさんに。

稽古終わりの終電で、
池袋駅西口から出ようと階段登ったら、
踊り場で男女ペア4人が座って騒いでいた

その騒ぎの中央には、
階段の途中に足をかけた状態で
踊り場にひっくり返ってるおじさん。

頭から出血はしてるけど、
そんだけ人がいりゃ大丈夫だろうし、
救急車も呼んでる最中だから用はないなと
通り過ぎようと思ったら、

「どうしよう、血が止まらない...」
「お水飲みますか?」
「え?場所?分かんないんだけど」
「14番出口!だから14番出口!!」

とオペレーションやや交錯してたので

「西口タクシー乗り場で大丈夫。
 誰かそこに立っててもらえますか。
 止血、代わります。」

と、しゃしゃり出て、
女の子のハンカチ1枚では足りない厚みを
上述の鹿殺しタオルで補い圧迫した。

年齢・名前・バイタル確認し、
居合わせた人に発生状況を聞きつつ
メモってもらう。

時々、意識レベルが落ちるので、
「お酒飲んだ?どれくらい?
 ご家族はいますか?」などと話しかけた。

おじさんは70代後半で、
オシャレなテーラードジャケットに
ケミカルブラザーズのTシャツを着ていた。

家族は、、と言って少し考えた後、
誰もいないんだと返答し、
何度も情けないと呟いては私達に謝った。

ほどなくして無事に救急車が到着し、
救急隊員の方に引き継いでメモを渡し、
するりとその場を後にしたけれど、

こういう場面に遭遇すると
ほとんどいつも、
もっとああしとけば良かった病が発症する。

謝ってきた時に
「大丈夫、酔ったら私もやるかも知んない」
なんて寄り添ったつもりだったけど、
ケミブラの話のが気が紛れたかもな...とか、

家族がいないって言った時、
飲み行く友達はいるんでしょ?とか
うまい返しがあったでしょうよ...

挙げ句の果てに、
問診から診察、会計までって
全部1人でやるのって心細いんだよな。
誰か知り合いが来てくれるまで、
救急車、乗っていけば良かったかな..とか、

後から後から湧いてやまない。

学校に勤務時代はこの振り返りで
常に常にアップデートされて
対応の精度を上げるのに役立ったけど
もうそんなのいらないのに。

心底私は、

誰かの心細さや切なさに弱いらしい。

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