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「脇役」にも、人生が見える。

今日で東京公演が無事千穐楽となったレ・ミゼラブル。
「無事に幕が下りること」はいつでも嬉しいことではあるのだけれど、
今年の公演ほど、それを強く意識させられたことはなかった気がします。
まずはキャストの皆様、本当にお疲れ様でした、
10月の松本、大千穐楽まで無事に駆け抜けられますように…!


レミゼは本当に何度見ても飽きない、というのは以前にも書いたのですが、
それはなぜだろう、と考えてみると、一番大きいのはなんといっても舞台上で繰り広げられている群像劇なのだろうなあ、というのが一番の感想です。

多いときだと舞台上に同時に20人以上はキャストが出ていて、
物語を動かすプリンシパルキャストだけでなく、
多くのアンサンブルキャストがそれぞれの役を生きている。

私も最初の数回は、大筋のストーリーを追うだけで精一杯だったのですが、
何度か観劇して大筋の物語は頭に入ってきたところに、
そんな「サイドストーリー」の見方を私に発見させてくれたのが、
ガブローシュとグランテールという2人の登場人物でした。

(*以下、本編の内容に若干言及しております、ご容赦ください)

ごく簡単に説明すると、
ガブローシュというのは、男の子の子役が演じるキャラクターで、
革命を志す学生と行動を共にする浮浪児、という役どころ。
子役ながら、ストーリー展開にも絡むことが多く、見せ場も多い役です。
ストーリー展開上、初見でも否応なく目に入るキャラクターでもあります。

そんなガブローシュが、ストーリー展開に絡んでいない場面では、ほぼ決まった一人と行動を共にしていることに気づいたのは、何度目かの観劇のときのこと。

その人物が、革命を志す学生集団の一員であるグランテールで。
諸々あって学生たちの中でもひとり違う挙動をしていることは多いものの、
大筋のストーリーを追ってるだけでは、「その他大勢」にすぎません。

ところが、ガブローシュと一緒にいるシーンをつぶさに見てみると、
このグランテールにも、すごく人間味が感じられて見えるんですよね…!


革命に意気込む学生の輪に混ざりきれず、舞台上でも隅っこに追いやられるグランテールに、ガブローシュがそっと寄り添って励ましたり。
逆に、ガブローシュが身近な人の死に打ちひしがれる場面では、グランテールがそっと抱きしめたり。
物語終盤には、ガブローシュ自身も銃弾に倒れるのですが、
その亡骸を抱きかかえるグランテールの、悲しみやら怒りやら、あらゆる感情がカンストしたかのような、なんとも言葉では表しづらい佇まい。

公式パンフレットではたった1行、その人物像が紹介されているにすぎない役柄で、セリフもそこまでたくさんあるわけではないですが、
その立ち振舞い、表情を見るだけで、その背景にある物語、人物像が様々に想起されてくる。
見ていて、強く揺さぶられるものがあります。


実際のところ、この二人ってどういう関係性だったんだろう?と、
この投稿を書くにあたりちょっと調べてみたのですが、
なるほど、原作の小説などではもっと緻密に描かれているらしい…。
確かに、3時間のミュージカルでは描ききれない「舞台裏」はたくさんありますもんね。

ひとつの舞台の裏にある、原作の世界観、さらにそのバックボーンにある現実世界の出来事。
いろいろな世界線が絡み合って、語られていること、語られていないこと、
そんなひとつひとつの出来事が重なっていくと、物語の見え方が少しずつ変わっていく。
だからこそ、何度見ても飽きが来ないんだろうなあと思います。

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