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【詩】 おれが良くなかった

仕事を終え
狂おしい飢えとともに
たどりついたのは日高屋

おれは自分を引きずってきた
淀んだガソリンのように
アネモネの種のように

どこか静かな場所で
味噌ラーメンを
むさぼり食いたい

それだけだ

よろよろ歩いて
明るいテーブル席につくと

となりで高校生らしき4人組が
恋バナをバキバキに咲かせて
さんざめいている

おれは落胆した

ああ終わった
家でカップラーメンを食べれば良かった
ティーンのノイズを浴びに来たんじゃねえんだよ

と思ってしまった

しかし彼ら
次々と供される
ニラレバ炒め チャーハン 餃子 中華丼

猛烈な湯気を上げるそれらを

うわあ熱々だ
うますぎる
ニラがみずみずしいね

ひと口ずつ
おどろきの再発見
メシを祝福していくようであり

新たな味わいの環が連鎖していく

おおおラーメンまで来たぞ
ふくよかな旨味がたまらねえ
元気出てきたわ

おれはじっと
ラーメンの到着を待っている
すべて託して

やがて高校生
店員さんへ
ていねいに礼をのべて
颯爽と去っていった

ああ
世界は不毛なカオスとばかり思っていたけど
あんまりねじれたおれが良くなかった

おれは
怒涛のごとく
味噌ラーメンをむさぼり食った

啜りこむスープのひと粒が
さらにまぶしく染みる
舌先から世界へ響いて

吹き荒れる
吹き荒れる

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