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0007 《煌びやかな街で.》

 ハッとした。出逢ったばかりの彼に心の中を読まれてしまったのだ。

 ロサンゼルスに来てちょうどひと月。正確には多くの人がイメージする”LA”から、バスで一時間半ほどの小さな街に。

 「世界は広いよ!」と彼は言った。七福神の布袋さまのような風貌をした彼は、ロサンゼルス中央図書館の警備員。本を借りようと辺りを見渡していたときに助けてくれたのだ。今日は勇気を振り絞って、大都会”LA"へやってきた。高層ビルに、人々の熱気、お洒落なレストラン...どこも煌びやか。でもふと気づいたのだ。「自分を狭い囲いの中に閉じ込めていたのは、私自身だった。その外はこんなにもワクワクすることで溢れている。」囲いなんてもともとなかったと知ったときの、彼の言葉だった。

 「毎日書いているのなら、君はプロの物書きだよ。」と初めて書く人と認めてくれた彼のことを綴る約束をした。この旅の、これから先の人生の万福を祈ってもらったお礼に。

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