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紙の上で見かける日本:国際政治を学ぶこと

英語を読んでいるときに、Japanという単語に目を引かれる。East Asiaに引かれることもある(余裕がない時は飛ばす)。その後にくる言説が、良いことなのか悪いことなのかで、テンションが少しだけ上下する。

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自分の専攻の関係で、論文をたくさん読む。政治学・国際関係論がメインの履修だからだ。文系、特に政治や社会学といったような「理論」を作り出そうとする学問においては、経済学や経営学といった数字も扱う学問に比べて、文章と睨めっこする時間が多いと思う。教授が口を揃えていうのは、「講義はあくまで導入だから、学びたいことについては論文を沢山読みなさい」ということだ。Read, read and readと。

だからこそ、授業の前だろうが課題の前だろうが大量の文章を四苦八苦しながら読んでいるわけだが、その中で、「日本」という単語が出てくると、少しドキッとする。英語を操ることができる世界の政治学者達は、日本をどのように捉え、扱うのだろうか?

ショックだったのは、(YouTube上のニュース動画だが)近年のドローン戦法についてである。AIの進化に伴い、今日の戦争ではドローンが多用されることが多く、その中でも自動操縦で敵陣に突っ込む無人型の機種のことを、「Kamikaze Drone」というらしい(DW News 2021)。Kamikazeのことを「神風」であることを理解できる人は、どれくらいいるのだろうか。

皮肉的だな、と思ったのは、今日の中国の影響力の増加に関する論文だ。冷戦の終了及び共産主義の減衰に伴って、アメリカ合衆国は国際貿易のルール作り(GATTとか、WTOとか)上で、強い影響力を持ってきて、アメリカ帝国、とか、パックス・アメリカといったような表現がなされてきた。それが、近年の中国の急成長によって失われる可能性があるのか、という議論は、国際政治学でホットな話題だ。その時に、「中国の経済成長は一過性に過ぎず、米国の強みを削ることにはならない」という論調のエビデンスの一つとして使われるのが、日本の高度経済成長期らしい(Hopewell 2020, p.32)。つまり、日本はあんなに成長したけど、結果として米国を越えることはなかった、だから中国も同じ運命を辿るだろう(意訳)、ということである。これはなかなかショックな論調であるが、確かに米国を越える影響力は持たなかったのだから、あながち違っていないのかもしれない。

地域情勢に目を向けると、インド・オーストラリア・アメリカ・日本の間で2017年に再度締結されたQUAD(Quadrilateral Security Dialogue)である。前述した中国の台頭に対してのアメリカの対応として扱われることが多いような気がしたが(Kim 2018など)、同時に韓国・中国・日本の間の協力関係などを持ってきて、中国の東アジア内での影響力が増していることを強調する人もいる(Foot 2020など)。どちらにしろ、日本は 'US's one of the closest allies'(アメリカの最も深い同盟先の一つ)というふうに表現されることが多くて、「同盟国」なんだなあ、と日本語とは少し違うニュアンスを感じるような気がして不思議な気持ちになる。

英語を話す世界の学者さんは、日本をどう見ているのだろうか。同時に、英語を話さない学者さん達も、日本をどう見ているのだろうか。ちょこちょこと色々なところに顔を出している日本を、授業で、リーディングで、ニュースで、課外活動で、追っていけたらいいな、と思う。

【参考にした情報源】

DW News (2021). 'How AI is driving a future of autonomous warfare | DW Analysis' [Video]. 25 Jun 2021. Available at: https://www.youtube.com/watch?v=NpwHszy7bMk (Accessed on: 10 January 2022).

Foot, R. (2019). ‘China’s rise and US hegemony: Renegotiating hegemonic order in East Asia?’, in International Politics, 57(2), pp.150–165. DOI:10.1057/s41311-019-00189-5. (Accessed on 6 January 2022).

Hopewell, K. (2020). 'The Doha Round Impasse', in Clash of Powers: US-China Ribarly in Global Trade Governance. Cambridge: CUP, pp.30-59. DOI: 10.1017/9781108877015.002. (Accessed on 6 January 2022). 

Kim, M. H. (2019). ‘A real driver of US-China trade conflict’, in International Trade, Politics and Development, 3(1), pp.30–40. DOI 10.1108/ITPD-02-2019-003. (Accessed on 6 January 2022).

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