小西大樹「就職したら親戚が増えました」#14 邂逅編 お礼とお詫びと⑥

真っ赤なシャーベットは、ミニトマトとほんの少しの苺だった。

「甘酸っぱいトマトの味がします。え?苺も入っているんですか?」

「隠し味にね。バニラアイスよりも、チーズ風味の方が合うと思うんだけど、どうかな?」

「ホントだわ。ちょっと塩味があって、トマトと合うじゃない。」
「そうですね!俺もそう思います!甘酸っぱいけど塩気のあるアイスがチーズの味してるから、チーズとトマトを食べている感じですね!さっぱりしているのにコクがあるって言うか、こっちのコーヒーもさっきのとは違うみたいで、濃いけどスッキリして……またシャーベット食べたくなり……あ、す、すみませ……ん。」

ひとしきり感想を述べた後、我を忘れた大樹が自ら我に返った。帰れた。

「いや、どんどん話してくれていいよ。感想はどんな事でも助かるからね。」

「アタシはねえ、もうちょっとアイスが欲しいわ。ね、コレ単品デザート?それともセット付きのデザート?シャーベットとアイスの比率もどちらかで変わってくるわよね?シャーベットの量が肝かしら。」

ひとつのメニューで色々有るんだなあ。と大樹は思った。今度外食する時は、考えて食べなくちゃなあ。作っている人の気持ちが有るんだ……。

「そうだな……最初はセットのデザートに少量添えて、野菜不足の為のデザートとして出すか。」
「じゃあ、そこそこ人気が出て来たら単品にする?」
「俺……このかき氷が食べてみたいです……。」
「かき氷?」
葵と基が同時に応えた。

「あ、いえその、なんとなく、すみません勝手に。」
「いいんだよ。案は沢山あった方が良い。かき氷か……ミニトマトと苺のソースに練乳?それともチーズを種類を変えてかけるか……?」

「氷が溶けるとトマトが水っぽいからペースト状よりもざくざく感が欲しいかしら?」

「後で試してみるか。」

「えっ……。」

「どんな所でどんな発想に出会うか分からないから、何でも言って頂戴ね。万人に受けようとは思わないけど、アタシたちが納得いくものをお客様に提供出来て、お客様が満足して下されば最高なのよねえ。」

「はあ……凄いです。」

「凄くはないよ。客商売している人は、普通というか当たり前の事だと思うよ。」
「そうねえ。根底に有るモノは、お客様の満足感ですものね。」

大樹は今までの人生に、少しだけ違う感覚が、光の様に差し込んで来た様に思えた。

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