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ライター編集者の正社員面接、どこを見ている?【現役編集長語る】

お世話になっております。バレンタインを過ぎましたが皆さまいかがお過ごしでしょうか。僕はひまです。Twitterでいただいた質問にnoteで答える本シリーズ。少し間が空いてしまいましたが、久しぶりにネタをいただきましたので、投稿したいと思います。

採用活動をしている企業の面接官がライターや編集者のどんなところを見ているのか気になります!

ありがとうございます。いいですね。マニアック。

この段階で既に、今回の投稿が万人受けしないことが確定していますが、当事者にとっては非常に重要なテーマかと思いますので、僕自身が面接官になったとき、気をつけていることをお話したいと思います。

▼補足:採用面接官としての僕について

前提としてなのですが、僕はかれこれ10年くらいにわたって編集人材の採用活動を行っており、書類選考や面接を通じ、転職活動中の編集人材の方々の様子を間近で見続けてきました。

と言いつつ、そのときどきで求めていた人物像は様々ですし、「こういう人材が必ず内定を勝ち取る」なんて到底言い切れません

それでも面接官として気をつけていることについて抽象化してお伝えすれば、何かの知見にはなりえるのかなと思うので、応用できそうな範囲で解釈を加えて掘り下げてみたいと思います。あくまで個人の意見としてご笑覧ください。

履歴書・職務経歴書の「超最低条件」

さて、まずは書類選考です。僕が過去に携わってきた採用活動も、「書類選考⇒面接」という超オーソドックスな選考形態がほとんどでしたが、その中でも書類選考でかなりの方がふるいにかけられています。

どんな基準でふるいにかけているか…というと、僕個人が意識しているのは、「履歴書・職務経歴書が一つの『クリエイティブ』として読むに堪えるかどうか」です。

具体的には以下のようなポイントなのですが、特にライター・編集者採用の場合となれば、内容うんぬん以前に「相手(面接官)をターゲットに据えた書き方ができているかどうか」「読みやすさへの工夫が感じられるか」という点を念入りにチェックしています。個別のチェックポイントは正直、記事を読んだり確認したりするときと、大差がないかもしれません。

・誤字脱字がないか
・読みにくい点がないか
・リズム感や抑揚に意識が向かっているか
・相手に自分の強みを分かりやすく伝える工夫が感じられるか など

履歴書や職務経歴書は言うまでもなく、自分を売り込む非常に大事な書類ですし、何より「締め切りがないもの」

その分、本人の文章能力や構成力、相手に何かを伝えようとする思いみたいなものが割とダイレクトに反映されるとみています。そんな書類で誤字や脱字があるというのは製作者として致命的ですし、その人の仕事ぶりを探る一つの試金石になるんじゃないかなと。特に選考フローの中で、履歴書や職務経歴書以外で当人の「文章能力を見る機会」ってなかなか持てないので、素の文章作成能力を探るのにも貴重な資料なんですよね。テストライティングとかしても、なかなかわからなかったりしますし。

「いやいや編集者の履歴書・職務経歴書なんだから、基本的な文章は大丈夫でしょう」と思われる方も多いかもしれません。そうですよね。でも多数の書類選考を行ってきた身からすると以下みたいな凡ミスも多く、ちょっと身構えて読んでしまうところがあります。

・ですます調の混在
・同じ語尾が何度も続き冗長
・文章全体として何が言いたいのかわからない
・単なる箇条書きになっており、強みが伝わってこない
・客観的に物事を伝えられていない など

再度強調しますが、これは特に編集職の場合であり、他の職種については少し様子が違うと思うので、そこは差っ引いてみてください。

▼選考全体で意識するのは「その人が半年後、何か役割を持って活躍する姿がイメージできるか」

少し話がヒートアップしてしまいましたが、書類選考で大きな問題がなかった場合、次は面接へと移ります。

面接で僕が意識的に見ている項目は、「半年後、その人が何らかの役割を持って活躍する姿がイメージできるか」です。

ここを「半年」とするのか「3ヶ月」とするのかは、チームの状態や、求職者側のベテラン度合(伸びしろ)によっても大きく変わってくると思います。もちろん半年と言わず「この人は入ってすぐ活躍できる!」と思ったら万々歳なので、そのぶん面接中に僕の鼻息が荒くなる、という感じです。

たぶんここらで、「じゃあどんな人が活躍できそうだと思えるの?」と無邪気な質問が飛んできそうなので、そこも概念的に考察してみようと思います。やや抽象的ですが、あえて言うとすれば、以下の4点でしょうか。

もしかしたらこの辺りは僕が携わってきた企業だけでなく、いろいろなウェブメディアにも共通しているかもしれない、と思ったりもします。

①  読者目線でコンテンツをつくってきた形跡がある
②  適応力がある
(「文章を書く」ことに拘泥せず、広く挑戦できるか)
③  周囲を巻き込んで何かを成し遂げてきた経験がある
④  面接官(僕)に危機感を抱かせる

特に①~③のどれかで突き抜けていると、「この人にはこういう役割が期待できるのでは?」と、展望が描きやすいように思っています。一つずつ、サックリとではありますが考察してみます。

①  読者目線でコンテンツをつくってきた形跡がある

「当たり前じゃん」「編集人材ならみんなそうでしょ」という声が聞こえてきそうですが、僕も含め、いわゆるニュースを追いかけ続けてきた記者職出身だと、「読者起点で記事をつくる」というより、「事件が起きたら報じる」というスタンスになりがちなので、結構難しかったりもします。

また雑誌やウェブの編集者であっても、知らず知らずのうちに「想定読者≒俺/私」状態になっている人が一定数いるので要注意かなと思ったり。例えば、30代サラリーマン男性相手に記事をつくってきた30代男性編集者がいるとして、たぶん今までは「身の回りの情報を集めるだけ」で「読者目線です(キリ)」が成立したと思うのですが、同じようなやり方が50代のシニア女性向けの記事(仮)ではたして通用するのかというと…そうは思えなかったり。
「自分とは距離感のある相手」にも、「読者目線」が突き通せそうな動き方ができそうかどうかはよくチェックしているように思います。

②  適応力がある
(「文章を書く」ことに拘泥せず、「伝えるプロ」として挑戦できるか)

以前他の投稿(これ)でも記載した通り、特にウェブメディアで編集者をする場合、「記事を書くだけ」だと結構行き詰まりがちですし、日々テクノロジーも進化する中でそれらにキャッチアップする意欲があるかどうかは意識的に見ています。既存のやり方を疑う癖をきちんと持てているか、という感じでしょうか。

ベストな方法を模索し続けようとする試行錯誤の跡があるかなどは、面接時にもよくチェックします。直近の仕事の進め方に対して、「なぜ、なぜ、なぜ‥‥」と掘り下げられて「よくぞ聞いてくれた!!」という人と「いや、そういう風にやるもんだと決まっていたんで…」という人で明らかに差が表れるポイントだったりもして。

③周囲を巻き込んで何かを成し遂げてきた経験がある

①、 ②はプレーヤーとしての強みにかかわってくるところですが、3点目はチームワークの取りやすさというか、いわゆるプロジェクト管理能力の部分です。

企業勤めでライター編集者をする以上、編集職以外の人たちも巻き込みながら、新しい企画を通したり、ゼロイチに挑戦してくれることを求められがち。なので、それができそうな人材かどうか、というところです。

自己完結型の仕事ばかりをえり好んでいないかとか、仮にそうだったとしても、ほかの人に敬意を表したうえでゼロイチができそうかどうか、というのは意識的に見る気がします。

④  面接官(僕)に危機感を抱かせるかどうか

これはちょっと性格の悪い&僕がの器の小ささを示すようでもありますが、上記の①~③のポイントを意識しながら面接をしていると、「この人が入ると多分自分のこの仕事は一瞬で取られるな」とか「多分この人が成長したら自分を食うな」といった危機感を覚えることがあります。

そういう人は、まず通す。

僕以上に編集やコンテンツ制作にバイタリティがあったり、僕とは違う角度でコンテンツに対する情熱を持っている、など。今まで自社になかった価値を付け加えてくれる人材かどうかという点は非常によく意識をしています。新しい人を迎え入れるのはワクワクもあり、怖さもありますが、起爆剤を求めている分、爆破される側の恐ろしさを感覚的に覚えるような相手の方がいいのかなと思ったりもします(これは人によるかもしれません…)。

相性の部分も大きい。あまり気にせず挑戦を


今回もつらつらと申し上げてしまいました。今回挙げた特に①〜③、全てを完璧に満たすというのはなかなか至難の技。どれか一つで強みを持っていれば活躍イメージが持ちやすいので、非常に前向きにことが進む印象があります。とはいえ、もちろんこれらが必ずしも全ての企業に当てはまるわけではないので、参考程度に読んでいただけたら幸いです。

面接官をしていて気付くようになったのは、「人材採用って本当に、その時々の情勢によって大きく変わる」ということです。「優秀な人を取る」というより、その時の組織の状態に対して「適材だと思われた人が採用される」という感じなので、この記事を読んでいる方で「自分にはちょっと合わない…」と思った方も、あまり重く受け止めず、「そういうところもあるのね」くらいの気持ちで、次のバッターボックスへ立っていただけたらいいんじゃないかなと思ったりもします。繰り返しますが、今回僕が話した内容もあくまで一例としてとらえていただければと。

採用側も基本的にはその人の良いところを発揮しを発掘しようと日々質問の角度を考えたり、自社に向いた人材がどんな方なのかを考え続けているのが実情です。そういう意味では肩の力を抜いてお互いがお見合いするような気持ちで挑めるのが、本来あるべきなのかもしれないですね。

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