見出し画像

フレンチエレクトロの至宝、セバスチャンテリエは出たがり大魔王だ!(オススメMV #84)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の84回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回はアーティスト特集として、セバスチャン・テリエのオススメMVをまとめて紹介します。
セバスチャン・テリエは前回の「キャラ立ちアーティスト」でも取り上げましたが、少ししか紹介できなかったので、もっと伝えたい!ということで今回の特集なりました。

詳しい説明はあとにして、まず最初のオススメMVはコチラとなります。
セバスチャン・テリエの「Roche」です。どうぞ!

きれいな砂浜がメインの映像ですが、不思議な人物や大きな唇が出てきたりして、最後にはピアノが燃えるというワケが分からない世界観のMVです。
しかし、ゆったりとした楽曲と映像の相性がいいのか、違和感なく受け入れることができるから不思議です。

まずはセバスチャン・テリエ(Sébastien Tellier)を紹介しましょう。
フランスのアーティストで、自分で作詞作曲して演奏して歌うといういわゆるシンガーソングライターなのですが、エレクトリックミュージックをベースにしつつもポップスっぽいものも多く、多様な音楽性を持っているアーティストになります。(要は「なんでもアリ!」という感じです)
2001年にファーストアルバムをリリースし、現在まで7枚のアルバムをリリースしています。
同じフランスのアーティスト、エール(Air)やダフト・パンク(Daft Punk)とつながりが深く、デビューした2001年にはエールのUSツアーに参加したり、3rdアルバムのプロデュースをダフト・パンクのギ=マニュエルが務めていますが、フランスの映画監督のソフィア・コッポラと親交もあり、最新の7thアルバムのタイトルの命名をしているのも彼女になります。(ソフィア・コッポラとは、多分エールつながりで親交が始まったと思われます)

この「Roche」は、ダフト・パンクのギ=マニュエルがプロデュースした3rdアルバム「Sexuality」に収録されているのですが、心地よい楽曲に組み合わさせる美しい映像が際立つMVとして仕上がっています。
しかし、その美しい映像の中身が不思議な世界観なのです。

砂浜の上のグランドピアノを弾くセバスチャン・テリエがメインとなりつつも、全身青塗りの女性や赤い服を着た金色の顔の男性、ワンピースの白い水着を着た巨大な女性、そして極めつけは空中に浮かぶ巨大な赤い唇など、普通では考えもつかない組み合わせです。
しかし、それらを違和感なく受け入れることができ、全体として「美しい映像」として認識させているところが、このMVの特徴となります。

では、次のMVに参りましょう。
セバスチャン・テリエの「Pépito Bleu」です。

SF映画っぽい出だしですが、途中から宗教色が強くなり、最後にはワケがわからないまま終わってしまいます。
楽曲も、際立って良いかというとそうでは無いのですが、なぜか聞き入っていしまう不思議な楽曲です。

この「Pépito Bleu」は、2012年リリースの4thアルバム「My God Is Blue」に収録されていますが、このアルバムはタイトル通り「宗教」をベースとしながらも「愛」というか「エロス」のエッセンスが濃厚な作品が多く収録されていることが特徴になっています。
前回の連載で紹介した「Cochon Ville」のMVなどは、まさしく「宗教+エロス」そのままの内容になっていますね。(前回はコチラ⇒「キャラ立ちアーティスト」

この「Pépito Bleu」のMVは、最初は安っぽいSF映画のような映像で私としてはゲンナリなのですが、「このMVは本人が出ないのかなー」と思っていたところ、途中から様相が一変します。
40秒すぎに長髪のオッサンぽい映像が出て「あれっ?」と思いながらも映像はどんどん進んでいき、星が爆発して飛び出した光の玉がワームホールっぽいところを通って地球と思しき星に落ちるところから話が急展開します。
ちょうど半分ぐらいの1分20秒あたりにドーンと現れたのがセバスチャン・テリエそのひとです。
そのあとは、もうセバスチャン・テリエの独壇場で、有無を言わせず独自の世界に引き込んでいきます。

そうです、セバスチャン・テリエは出たがり大魔王なのです。
ほとんどのMVに本人が出演し、しかもメインでドーンと出たり、おいしいところをだけもっていったりと、必ず印象に残すというか我々の脳裏に爪痕を残していくのです。

そんなセバスチャン・テリエの出たがり大魔王を象徴するMVを紹介しましょう。(というか、ほとんどのMVがそうなのですが...)
セバスチャン・テリエの「L'amour naissant」です。

海岸の男女の引きのモノクロ映像にドーンとセバスチャン・テリエが出てくる、という何がメインかわからないMVですが、いつものごとく楽曲とのマッチングがいいのか違和感がないのが不思議なMVです。

この「L'amour naissant」は、前作に続き2013年にリリースされた5thアルバム「Confection」に収録されているのですが、このMVでもセバスチャン・テリエの出たがり大魔王ぶりがさく裂しています。
本来メインであるはずの男女二人がサブキャラのようになり、完全にセバスチャン・テリエがメインキャラとして登場しています。
ちょっとうんざりしてしまいます...

今回のタイトルにもあるとおり、セバスチャン・テリエは「フレンチ・エレクトロ界の至宝」と呼ばれているのですが、至宝というより「鬼才」という表現のほうが適していると思いませんか?(こんなに自己主張の強い「至宝」もないでしょうから)
私としては、「フレンチ・エレクトロの至宝」にふさわしいのは「ジャン・ミッシェル・ジャール」その人ではないかと思っています。
エレクトロというよりシンセサイザーミュージックというほうが正しい表現のような気もしますが、現在のフレンチ・エレクトロの礎を築いたことには間違いはありません。
まあ、ジャンもアルバムジャケットを見ると、自身の顔をドーンと出しているものもあるので、出たがりっぽい要素も無きにしもあらずですが...
ちなみに、ジャン・ミッシェル・ジャールについては、別で連載している「アルバムジャケットの楽しみ」で紹介していますので、ご興味ある方はご覧ください。コチラです⇒「フランスの鬼才、ジャン・ミッシェル・ジャールとは?」(「至宝」ではなく「鬼才」と表現してしまっていますね)

さて、最後に2つMVを紹介します。
今までは実写MVでしたが、最後の2つはアニメーションMVとなります。
最初のアニメーションMVは、最新の7thアルバム「Domesticated」に収録されている楽曲です。
セバスチャン・テリエの「Stuck in a Summer Love」です。どうぞ!

フランスっぽい色遣いのオシャレなMVですが、セバスチャン・テリエらしくエロスの要素もありつつ、観て楽しめるMVとなっています。

最初のほうは本人が登場せず、「このまま最後まで行くのかな」と思ったら全くそうではなく、途中から本人出まくりで、「やっぱり...」と思ってしまうMVとなっています。(もちろん、決してイやな感じではなく、ある種の予定調和のような出演という感じです)

このMVを観ると、以前に連載で紹介したエールのMVが思い出されます。(エールの回はコチラ⇒不思議なアニメーションのお祭りだ!
エールのMVのほうが正統派というかマジメ感があり、逆にセバスチャン・テリエはエロス感が強く、路線の違いが明確ですね。
本人の登場シーンも、エールのほうは最初と最後にチラッと控えめに出るだけですので、その点も大きく違います。

なお、すべてのMVにセバスチャン・テリエ本人が出ているかというと、そうではありません。
中には本人が出ていないMVもあり、その中にもオススメのMVもあります。

最後に紹介するのがそんなMVの中のひとつとなります。
セバスチャン・テリエの「Look」です。

モノクロのアニメーションMVですが、めちゃくちゃオシャレですね。
しかも、セバスチャン・テリエらしくちょっとエッチな感じもあり、秀逸なアニメーションMVです。

セバスチャン・テリエ本人が出ていなくても、メチャクチャいいですよね。
本人がガッツリ出ているMVもセバスチャン・テリエっぽくていいのですが、たまにはこんな感じで本人が登場しないMVもリリースしてもらいたいと切に願う次第です。

さて、今回のセバスチャン・テリエ特集はいかがでしたでしょうか。
他のMVも本人が出まくっているものかりですので、ご興味があれば他のMVもご覧になってください。
「もうセバスチャン・テリエでお腹がいっぱいだ...」と思われること請け合いです。

ではまた次回に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?