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不思議なアニメーションMVのお祭りだ!AirにTheAvalanches、そしてトリにはTomTomClubとてんこ盛り(オススメMV #24)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の24回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回はアニメーションのMVの中からオススメの3本を、新旧取り混ぜて紹介します。
アニメーションのMVは以前もSFアニメMVの回で紹介しましたが、ストーリーを主軸にしたMVでしたので、今回はアニメーションの表現力を活かしたMVに絞って紹介します。

さて、最初のMVは、Airの「Sing Sang Sung」です。

不思議なMVですよね。
アニメーションでしかなしえない表現です。
黒いボールが不思議世界を冒険する...という感じでしょうか。
色調を抑えた優しいMVです。

Air(エール)は、フランスの二人組のエレクトロポップのバンドで、1995年に結成後、積極的にアルバムをリリースし、サウンドトラックの制作が多いことも特徴です。
特に、ソフィア・コッポラ(フランシス・フォード・コッポラの娘さん)と組むことが多く、ソフィア初の長編映画である「The Virgin Suicides(ヴァージン・スーサイズ)」のサントラもAirが手掛けています。
優しくオシャレな楽曲が多く、こじゃれた感じのバンドです。

この「Sing Sang Sung」は、2009年リリースのアルバム「Love 2」に入っているのですが、アルバムタイトルをそのまま直訳すると「愛Ⅱ」となるので、なかなか付けれないタイトルですよね。
さすがに「愛の国」と呼ばれるフランスならではです。

楽曲自体はAirらしい優しい曲調で、最初から最後まですっきりまとめられています。
MVも楽曲と見事にマッチした優しい映像で、色調を抑えながらもオシャレ感満載で、主張しないがしっかり印象には残る...という絶妙なころあいの映像になっています。

次に紹介するMVは、この「Sing Sang Sung」の抑えた色調とは違い、ガッツリと主張するMVとなっています。

2本目のMVは、The Avalanchesの「Subways」です。

これまた不思議感満載のMVですよね。
これ以上やるとやりすぎだ...というギリギリの線で抑えてあるところが絶妙です。
最初に観たときは「なんだこれは?」と思ったのですが、不思議と繰り返し観たくなり、観るたびに好きになる...そんなMVです。

The Avalanches(アバランチーズ)は、1997年に結成されたオーストラリアのエレクトリック・ミュージックのグループで、日本ではあまりなじみはないですが本国では有名なようです。
なんと3枚しかアルバムを出していないようですが、アルバムの完成度は高く、いずれも実験的な取り組みなのが好感が持てます。

この「Subway」は、2016年リリースのアルバム「Wildflower」に収録されていますが、このアルバム「Wildflower」は10年以上の歳月をかけて練りこまれて制作されており、いずれの楽曲もすばらしく聴きごたえがあります。

「Subway」の楽曲も素晴らしいのですが、そのMVも秀逸です。
上にも書きましたが、これ以上やると行き過ぎ...というギリギリのところで押さえているので、すばらしい楽曲が前面に押し出されています。
それでいて、しっかり映像も主張している、という稀有なMVです。
ポップな色調と絵柄ですが、妙にエロティックなところもあり、またブラックな部分もあり、色々な要素を詰め込んでいるのですがバランスがいいのかスッキリと観ることができます。

『このMV、スゲー』と思ってアバランチーズの他のMVを見たのですが、全てのMVが違ったテイストで驚きました。
実験的な楽曲が多いのですが、MVについても同様に実験的な取り組みをしていることに、このアバランチーズというアーティストのチャレンジャブルな姿勢を見ることができます。(といいながら、他のMVは私的にはチョット合わないものばかりだったのですが...)

最後のMVは、上の2本とまたテイストの違うアニメーションMVです。
主張する/しないとかではなく、「とにかく、みんなで楽しくやろうよ!」という賑やか(にぎやか)なMVです。

その賑やかなMVは、Tom Tom Clubの「Genius Of Love」です。

年代を感じさせる古いMVですが、味があってかつ楽しいMVですよね。
「とにかく、みんなで楽しくやろうよ!」というテイスト全開です。
今ではCGで色々な表現ができますが、完全に手書きで表現されているのが逆に新鮮に映ります。

Tom Tom Club(トム・トム、クラブ、以下TTC)は、別に連載しているレコードジャケットの「艶やか、華やか、賑やか。ウタマロにザッパにトムトムクラブだー」の回で簡単に紹介しましたが、再度サラッと解説しましょう。

TTCは、1981年に結成し今もなお活動している長寿のロック・バンドで、エレクトロニック系のダンス音楽が中心です。
アメリカを拠点にしているのですが、レゲエのテイストが入っているのが特徴で、当時このテイストの音楽はTTCだけでした。

なぜ1980年代初頭にこんな斬新な楽曲が生まれたのか、大いに不思議です?
それはTTCの生い立ちにあります。
TTCは、かの有名なTalking Heads(トーキング・ヘッズ、以下TH)から発生したバンドで、当時のTHは様々な実験的な取り組みをしており、TTCもその取り組みのひとつとなります。
「新しいことにどんどん取り組んでいこう!」というTHの活動方針が、TTCの結成につながり、TTCの斬新で先進的な楽曲を生んでいます。
その意味でも、THがのちの音楽に与えた功績は大きいと考えています。

エレクトロニックのダンスミュージックで、レゲエのテイストが入っているというのは今では当たり前にあることですが、これを1980年代の初頭に取り組みそして完成させている、ということは驚愕です。

そして、素晴らしいのはその斬新で実験的な取り組みをしているにもかかわらず、楽曲自体は「みんなを楽しませるためにやってるんだ!」という意識が伝わってくるところです。
取り組み自体が目的ではなく、重要なのは視聴者を楽しませることだというのを分かっているんですね。
そして、メンバー自身も楽しみながら取り組んでいることも想像させます。

レコードのアルバムジャケットも賑やかで楽しいデザインなので、ぜひ上のリンクからレコードジャケットも観てみてください。

今回の3つのアニメーションMVはいかがでしたでしょうか?
最初の2つはタイトル通り「不思議なMV」ですが、最後の1つはMV自体が不思議というより、「なぜこのMVというか楽曲が今から40年も前に生まれ得たのかが不思議...」という意味合いで取り上げました。
いずれのMVも名作ですので、ぜひ視聴してみてください。

ではまた次回に。

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