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ケイトブッシュは、やっぱりMVも孤高の存在。名曲バブーシュカも嵐が丘も紹介せずにはいられない!(オススメMV #30)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の30回目です。(連載のマガジンはこちら)

いつもは特定テーマに関連付けた違うアーティストのMVを紹介していますが、今回は特定のアーティストの特集です。
そのアーティストは「ケイト・ブッシュ」。

ケイト・ブッシュは、別に連載している「レコードジャケットの楽しみ」の中で第2回のプログレ第7回の女性の顔の2回紹介していますが、このオススメMVの連載では初めての登場となります。

なにはともあれ、まずはMVをご覧ください。
ケイト・ブッシュの「Babooshka(バブーシュカ)」です。

シンプルなMVですね。
しかし、シンプルにもかかわらず映像のインパクトがスゴイです。
それにもまして、楽曲のパワーがすごい!

ケイト・ブッシュ(Kate Bush)は、私が好きな女性のソロアーティストの筆頭で、一番最初にドはまりした女性アーティストでもあります。
昔の記憶をたどると、確か高校時代にこの「Babooshka」が収録されている3rdアルバム「Never for Ever(嵐が丘)」を聴き衝撃を受け、すぐに2ndアルバム「Lionheart(ライオンハート)」、1stアルバム「The Kick Inside(天使と小悪魔)」と遡りました。
その後は、4thアルバム「The Dreaming(ドリーミング)」と続きますが、私が最も好きなアルバムはこの「Never for Ever」で、かつケイト・ブッシュのベストアルバムではないかとも思っています。

ぜひこのMVだけではなく、アルバム「Never for Ever」を聴いていただきたいところです。
「Never for Ever」はまごうことなき名盤で、どれか一曲だけが素晴らしいというのではなく、収録されている全ての楽曲が素晴らしく、最初から最後まで通しで聴いても全くスキがない...という恐ろしいアルバムです。
この「Babooshka」は、アルバム「Never for Ever」の一曲目に収録されている楽曲で、名盤の最初を飾るにふさわしい名曲です。

MVを見てみると、大きく2つの場面に分かれます。
ひとつは、黒い衣装でベールをまとい大きなコントラバスと戯れながら踊るケイト・ブッシュ。
もうひとつは、ライトを背に踊るチョット露出気味のケイト・ブッシュ。

この2つの場面は、楽曲の歌詞とリンクしています。
「Babooshka」の歌詞の意味は、妻が夫の愛情に疑問を持ち、若い女性のふりをして夫の自分への愛情を確かめる...という内容で、黒い衣装でベールをまとったケイト・ブッシュが妻を表現し、大きなコントラバスが夫、チョット露出気味のケイト・ブッシュが若い女性を模した妻を表しています。

映像効果としては、妻と夫の場面では、妻役のケイト・ブッシュが黒い衣装で存在感を消し、夫を際立たせています。
これは夫を中心に考える妻の意識や、負の考えに染まっている妻の状態などを表現していると考えられます。
そして、若い女性を模した妻を演じるケイト・ブッシュは、露出気味の格好で若い女性を表現しています。

最近のMVは、細かいカット割りで躍動感を出したり、印象付けを促したりしていますが、このMVでは場面転換以外でのカット割りはありません。
基本、長回しでの映像になっています。
にもかかわらず、これだけの躍動感と印象付けができているところにも、このMVの素晴らしさがあります。本当に脱帽です。

そして、それを支えるのはケイト・ブッシュの全身を使った表現力です。
目ぢからもスゴイですし、体の隅々まで意識がいきわたっていることがうかがえます。

それもそのはずで、ケイト・ブッシュはデビューまで自分自身で様々な表現方法を学んでおり、パントマイムも専門の学校に通っています。(その学校でデヴィット・ボウイも一緒に学んでいた、というのは有名な話です。)
そこで得た表現力が、このMVでも存分に活かされています。

様々な表現を学びながら楽曲を作り、兄弟とバンドを組んでパブ等で演奏活動もしていたケイト・ブッシュですが、1977年に初登場でいきなり全英4週連続1位のシングルをリリースします。

それが次に紹介する「Wuthering Heights(嵐が丘)」です。

これまたケイト・ブッシュの表現力のみに絞ったMVですね。
上で紹介した「Babooshka」より更にシンプルな表現となっていて、場面転換も無いという珍しいMVとなっています。

この「Wuthering Heights」は、上で書いた通りデビュー作なのですが、デビュー作でこのクオリティというのは驚愕です。
そして、この「Wuthering Heights」が収録されている1stアルバム「The Kick Inside(天使と小悪魔)」の出来もすばらしく、こちらもオススメです。

ちなみに、昔さんまさんが司会を務めていた「恋のから騒ぎ」というテレビ番組があり、そのオープニングでこの「Wuthering Heights」が使われていました。
ケイト・ブッシュの楽曲がバラエティ番組のオープニングで使われることに最初はちょっと抵抗がありましたが、不思議とマッチしていて、かつ多くの方にケイト・ブッシュの楽曲を聴いてもらえるので、これはこれでよかったんだと途中から納得したのを覚えています。
(日本でのケイト・ブッシュの知名度が思った以上に高くないのが、いまだに不思議でなりません)

さて、この「Wuthering Heights」のMVですが、実はもうひとつ違うバージョンが存在しています。
上で紹介したのが「Version 1」ですが、せっかくですので「Version 2」も紹介しましょう。

ケイト・ブッシュの「Wuthering Heights」のMV、「Version 2」です。

「Version 1」がインドアでしたが、この「Version 2」はオールロケ、アウトドアのMVです。
しかし、ケイト・ブッシュの表現力に絞っているのは変わらず、自然の中で自由に踊るケイト・ブッシュのみで構成されています。

しかし、この踊りはケイト・ブッシュが自分自身で考えているものなんでしょうね。多分...
キョンシーばりに両手を前に出して前進しながら踊る...という構図は、普通のプロの振付師では考えないでしょうから(また考えても実際にさせないでしょうから)、ケイト・ブッシュのオリジナルではないかと想像しています。

ケイト・ブッシュは、そのすばらしい楽曲に加えて、他の表現を組み合わせることに最初から(というかデビュー以前から)取り組んでいることも特筆すべきことです。
MVにも早くから取り組んでおり、この「Wuthering Heights」のMVが2バージョンあることからして、力の入れようが分かります。
このMVへの取り組みは、MTVによってMVが音楽表現のひとつとして認知される1980年代の前であることも驚くべきことです。(つまり、先駆者のひとりですね)

ケイト・ブッシュについて語るとキリがないので、この辺でお開きにさせてもらいます。(もっと語りたいのですが...)
もしケイト・ブッシュの楽曲を聴かれたことのない方がおられたら、ぜひ一度でいいので聴いてみてください。
オススメは(しつこいですが)3rdアルバム「Never for Ever(嵐が丘)」、続いてのオススメは1stアルバム「The Kick Inside(天使と小悪魔)」です。
ぜひご賞味を!

ではまた次回に。

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