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ダンス系の邦楽MVを三連チャン。やっぱり岡村靖幸も児玉裕一も天才だ!(オススメMV #13)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の13回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回も前回に引き続き邦楽MVを紹介します。
前回は長添雅嗣さんの疾走感のあるMVでしたが、今回はダンス系の邦楽MVを3つまとめて紹介します。

ダンス系のMVといっても、バリバリのダンサーが踊りまくるようなものではなく、チョットひねりのあるMVです。

まず1つ目のMVは、岡村ちゃんこと岡村靖幸とDAOKOがコラボした「ステップアップLOVE」です。

なんといっても、このMVの目玉は岡村靖幸さんのキレッキレのダンスと、素晴らしい楽曲につきます。

岡村靖幸さんは、1986年がデビューなので既に30年以上のキャリアを誇るシンガーソングライターです。
途中何度か戦線離脱されたのですが、その独自の楽曲に満ち溢れる才能がリタイアを許すことが無く、今もなお活躍されています。

なんと1986年にはもう一人、素晴らしいシンガーソングライターがデビューしていて、それはかの有名な久保田利伸さんです。
私の中では、硬派な久保田利伸、軟派な岡村靖幸というカテゴライズになっていて、男子校に通っていた私はもちろん久保田利伸派でした。

しかし、昔はチョット恥ずかしい感じだった岡村靖幸さんの楽曲も、今になって素直に受け入れることができ、今や久保田利伸さんよりヘビーローテーションしているぐらいです。
もし岡村靖幸さんの楽曲を聴かれたことのない方がおられたら、ぜひ一度聞いてみてください。
どのアルバムも素晴らしいのですが、初めて聴かれるのであれば今年リリースされた「操」から順番に遡って聴かれるのがおすすめです。

最新アルバム「操」は、岡村節ともいえるキラキラした恋愛をベースにしながら艶っぽさもあり、ある種、神の領域に到達している感があります。

さて、このMVですが、DAOKOさんと岡村靖幸さんのダンス対決という構図ですが、あまり映像が強くないですよね。
色調も控えめで照度も低い、つまり暗めの映像になっています。
しかし、その分楽曲が前面に出ていて、楽曲のほうが強いMVになっています。
MVの制作側としては映像を前面に出したいでしょうし、例えばフラッシュを入れるとか明るい場面を差し込むなどやろうと思えばできるところをあえてせず、かといって手を抜いているかというとそうではなく、楽曲を引き立てるために細かな工夫がされています。
映像的には、DAOKOさんと岡村靖幸さんを中心に構成されていますが、存在感を出しつつ過度に押し出さないところが絶妙で、もう脱帽です。
「こんなシブイMV、誰が作ったんだろう?」と気になって調べたところ、なんとあの児玉裕一さんでした。

「やっぱり、児玉さんか...」
児玉裕一さんというのは、多くの傑作MVを世に送り出されている映像作家で、MVだけではなく多くのCMも手掛けられています。

児玉裕一さんとの出会いは、あるMVがきっかけです。
それが今回の2つ目の邦楽MV、サカナクションの「ネイティブダンサー」です。

このMVも独特ですよね。
ダンサーの踊るシーンはほとんどなく、スニーカーのステップだけが画面に映る...こんな映像構成、怖くて誰もやりませんが、児玉裕一さんはあえてチャレンジし、そして成功を収めています。

サカナクションは、オルタネイティブ系のグループですが、今や押しも押されぬビッグアーティストです。
しかし、最初はマイナーなグループで、このネイティブダンサーがリリースされた2009年時点ではあまり知られておらず、次の4thアルバムから「アルクアラウンド」や「目が明く藍色」などのヒット作が生まれ、5thアルバムの「アイデンティティ」や「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」で人気が不動のものになりました。

そのサカナクションで一番最初に「これ、いいんじゃない?」と引かれた楽曲が、この「ネイティブダンサー」です。
静かなピアノの旋律から始まり、徐々に音に厚みがましてきて、最後のほうにはキラキラと輝くような(しかし、はかなさも残っている!)楽曲に心を打たれたことが思い出されます。

そして、その楽曲のMVがまだ秀逸で、楽曲自体のすばらしさをより際立たせるMVであり、「こりゃ、なんじゃ!」と驚き、だれが作ったのか調べてみたところ児玉裕一という映像作家が制作されたことが分かった...というのが児玉さんとの出会いです。(話が長くて、申し訳ないです...)

さて、このネイティブダンサーのMVですが、このMVは日本人にしか作れないMVじゃないかと考えています。
このMVではダンサーが躍るところはほとんどなく、そのほとんどはスニーカーのみが画面でステップを踏む映像となっています。
しかし、スニーカーのみを描いてはいるものの、ダンサーはもちろん楽曲が描く風景をその先に見せています。
いわば、表現しないことで、表現している、とでもいうのでしょうか。
これは日本の「わび、さび」に通じる表現ですね。
表現するために、盛り込むのではなく、あえて捨てる。

それだけではありません。
楽曲と完全に映像が連携しています。
しかも、その連携が控えめで、これまた日本的と思わずにいられません。
冒頭のピアノの静かな調べの時には、映像の色使いも少なく抑えめですが、楽曲に厚みが増してくるのとともに色使いも多くなり、徐々に輝きを増してきます。

この児玉裕一さんという方は、多くのMVを手掛けているものの、同じものはないんじゃないかと思うほど、ふり幅の広い映像作家です。
賑やかなMVも手掛けられており、今回最後に紹介するMVは同じダンス系ですが楽しい作品になっています。
水曜日のカンパネラの「一休さん」です。

このMVも、MTVで見つけて「このMV、凝ってるなー。でも、ただ凝っているだけではなく、映像の押し出しはそんなに強くなく、出演者と楽曲を前に出しているな。」と思い、調べてみるとまたまた児玉裕一さんだった、というオチが付いています。

水曜日のカンパネラは、ボーカルのコムアイという女性シンガーが中心のユニットで、私的には「なんでもアリ系」という位置づけです。
いい表現かどうかはわかりませんが、私の中では電気グルーブの女性版で、コムアイさんははピエール瀧さんのような「表現者」ではないかと考えています。

男性の背が高いダンサーは「えんどぅ」という方で、MVではえんどぅ演じる一休さんとコムアイの関係を中心に描かれています。
ちなみに、この水カン(水曜日のカンパネラのこと)がミュージックステーションに登場し「一休さん」を演奏したとき、このMVと同じ内容をステージで表現していて、えんどぅさんも出演されていました。
同じ内容をよくステージで表現したなと思いますが、個人的には以前紹介したマドンナのVogueのように、全く違う内容でやってもらいたかったと残念に思っています。(ミュージックステーションでの一休さんは録画してライブラリ化しており、今でもたまに見返します)

しかし、この「一休さん」のMVも、賑やかではあるものの、全体のトーンは暗めですよね。
児玉裕一さんのMVは暗めのものが多く、逆に言えば暗めのMVのほうがよさを発揮されるのではないかと考えています。
私の好きな映画監督のリドリー・スコットも、「ブレードランナー」を筆頭に暗めの映像の映画のほうが良作が多く、同じテイストを感じます。

さて、今回は児玉裕一さんの秀逸なMVを3つ紹介しました。
「MVは楽曲のためにある」、それを実践されている素晴らしい映像作家で、これからの作品も楽しみです。
また、岡村靖幸さんを皆さんに紹介できたのも、今回のポイントです。
岡村靖幸さんの、他に比するものがない独自かつ素晴らしい楽曲を、もっと多くの方に聴いてもらいたいと切に願っています。

ではまた次回に。

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