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久しぶりにパターソンさんにお会いして、パターソン節に酔いしれる…

 昨年暮れから病院通いが続いているが、昨日は行きつけの恵比寿の歯科クリニックで歯のチェック。まだまだ歯医者通いは続きそうだ。人間70近くまで生きてくると何が起きるかわからないというのが、実感だ。

 と、そんなことも言ってられなく、連日ガロアの原稿、そして横浜フェスの準備が続いている。もちろんTWSCも、ほぼすべての出品アイテムが揃い、それらのデータ化、フライト分けが始まっている。昨年を超えることはできなかったが、今回も900本近いアイテムが集まり、これからいよいよ本番を迎える。フライトが決まったら、審査員のグループ分け、そしてフライトと審査員のマッチング、さらにサンプル小瓶詰めの作業が待っている。毎回1万本を超えるサンプル小瓶詰めは、緊張もしいられる大変な作業だ。横浜フェスが終わったら、その作業にとりかかることになる。

 そんな中、昨日は3時から六本木のバー、水楢カスクでウルフクレイグのリチャード・パターソンさんと、ジェイミー・ランさんの2人にインタビュー。次号ガロアの編集長インタビューで、そもそもウルフクレイグという蒸留所には、どんな意味があるのか、そしていつから生産開始になるのか。それに先駆けて、2~3種類のボトルがすでにリリースされているが、それはどういうもので、どんなコンセプトがあるのかを伺った。

 パターソンさんに会うのは、10年ぶりくらい。最初にあったのは1993年頃で、以来ダルモアでもグラスゴーのオフィスでも、そして日本でも何度も会っている。ホワイトマッカイのセミナーで、ご一緒したこともあるし、ウイ文研(スコ文研)のツアーで、ダルモアに行く時は、わざわざ4時間かけてグラスゴーの自宅から、愛車のジャガーに乗って駆けつけてくれたものだ。

 パターソン節…私たちはそう言っていたが、パターソンさんのテイスティングは本当に面白いし、エンターテイメントそのものだ。もちろん26歳という若さで、名門ホワイトマッカイ社のマスターブレンダーに就任した、業界のレジェンドであり、そのノージング力、ブレンド技術は“グレートノーズ”、偉大なる鼻といって業界で称賛されている。

 そんなパターソンさんのテイスティングに久しぶりに聞きほれてしまった。今回リリースしたのはブレンデッドスコッチの30年、そしてブレンデッドグレーンの35年、さらにブレンデッドの14年である。以前からスペインのヘレスのシェリー業者とは深いつながりがあり、ほとんどパターソンさんでしか手に入らない樽も多い。数々の伝説のボトルをつくってきたのも、パターソンさんだ。

そんな氏がつくるブレンデッドが普通のものであるはずがない。30年、35年はもちろんすごいのだが、14年のブレンデッドが、とても14年熟成とは思えない、特別なアロマとフレーバーを有している。ペドロヒメネス、モスカテル、アモンティリャードの3つのシェリー樽を使っているということだったが、まさにパターソン・マジック。シングルモルトではなく、ブレンデッドの新たな可能性を感じさせてくれるものだった。

 パターソンさんは現在75歳。私より5つ年長だが、見ためは以前とほとんど変わらず、お元気だ。父も祖父もブレンダーという、3代続くマスターブレンダーの家系で、皆長生きだったという。ウルフクレイグのシングルモルトがリリースされるのは、早くても2035年頃のこと。最低でも10年、12年寝かせたいといっているので、その時パターソンさんは80代後半、私も80を超えていることになる。つくづくウイスキーは長いと思わざるを得ない。初めてお会いして今年で31年。それを思えば、あと10年は短い…と思いたい。


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