見出し画像

李登輝さんのメロン

先日、李登輝さんがお亡くなりになりましたね。

茫洋としながらも、李登輝さんと司馬遼太郎さんの対談が入ってる『街道をゆく 台湾紀行』をもう一度読み直そうと思ったら…無い。本が無い。
A型几帳面なので1、2、3巻〜と並んでないと気が済まない私。でも本が…無い。貸した覚えもあるような無いような。

てことで、買い直しに本屋に行きました。

本屋にいったらいろんなもの買っちゃうよね。あるある。

画像1

唐突だけど、司馬さんって司馬史観って言葉があるぐらい歴史小説としての奥深さ、洞察力みたいなのがよく俎上に載せられるけど、それよりも小説本来の技術が凄いんじゃね!?って思ってるわけです。

その辺は宮城谷昌光さんもエッセイでお話されてますよね。確か司馬さんがお亡くなりになる直前に仕事でご一緒されてたのも宮城谷さんだし。

特に人物を表現するときの比喩表現が好きなんです。

この台湾紀行の中でも当時の総統、李登輝さんのお顔を表現する比喩がわっかりやすい。イメージしやすいんですよね。李登輝さんの顔が。

山から伐りだしたばかりの大木に粗っぽく目鼻を彫ったようで、笑顔になると、木の香りがにおい立つようである。

これだけであの李登輝さんのご尊顔が思い浮かびます。

突然、話は10年前になりますが。

就農して間もないころ、朝の搾乳が終わって家に帰ろうとした時に、李登輝さんっぽいおじいさんがフッと現れました。

そのおじいさん、李登輝さんの顔を万力で縦にぎゅーっと圧縮したような顔だったので覚えています。

その圧縮李登輝さんが言うには、近くの山でクルマがハマったから助けてほしい…とのこと。

新人農家のクセに人生の大先輩に頼られたのがちょっと嬉しくて、なぜかベテランっぽい雰囲気を出しつつ『いいっすよ』っとわざと素っ気なく返事しちゃいました。なんでそんな演技したんだオレ。

でもまあ頼られるってうれしいもんだ。

ベテラン農家っぽい雰囲気を出した以上、ハマったクルマを簡単に救出しないとベテラン農家じゃないとバレちゃう!!って、なんでかわかんないけど自分に変な枷をはめて現地に向かったら、まあ簡単にトラクターで救出できました。

最後までベテラン農家の演技を崩したくないので、「じゃあ仕事に戻りますから」なんて、仕事もないのにすぐ現場から立ち去ってベテラン農家を見事に演じきりました。

その日の夕方、牛舎に戻ると、無造作にメロンが2つ置いてました。

それ以来、圧縮李登輝さんには会ったことはありません。

ただ、この日本昔ばなしのような話を思い出すたびに李登輝さんの顔が浮かぶんです。

もう一度台湾紀行に戻ります。

司馬さんと李登輝さんの会談が終わりかけのころ

「また台湾にきます」と私はいった。(中略)「こんどはどこへいく?」と〝旧制高校生”がきいてくる。(中略)「じゃ、ぼくが案内する」冗談じゃないと思った。こんなえらい人に案内されては、「街道をゆく」もなにも、あったものではないのである。

このやりとりを再読した時に思い出したのが下記の記事です。


「情けは人のためならず」ですな。本当の意味での。

メロンをいただいた後も頼られたり、頼ったりがあります。

自分のトラクターがハマった時も助けてもらったり。

情けは人のためならず。ですね。

今回とりあげた本はコレです。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?