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『数学する身体』を読んで

会社からの宿題で『数学する身体』という作品を読んだので、覚書を残します。

計算と数学の成り立ちから、主にアラン・チューリング、岡潔という数学者を通じて「数学と人」について語られている書なのですが、とにかく難しい!!
数学が大の苦手だった私は、おそらく10%程度しか内容を理解できていないのではないかと。
そんな私がこの作品から辛うじて読み取れたポイントは以下の二点です。

 ①「行為」と「思考」の境界線について
人は数の概念を活用しなければ、個数の差異を認識できない。本書の序盤で説明されて改めて認識させられたが、個数として把握しなければ111本のマッチも120本のマッチも同じく「たくさんマッチがある。」と一絡げにしてしまうに違いない。個数の差異を厳密に把握できるのは、数の助けを借りているおかげであって、生来人間に能力が備わっている訳ではない。
つまり、「数」は人間の認知能力を補完して、それを延長(拡張?)するための道具。
その道具である数を活用していくうちに、紙と鉛筆で計算せずとも、頭の中で数字を操作する(暗算のような?)だけで済むようになる。それを本書では、自分の一部となる、すなわち「身体化」されると表現している。それまでは単に計算という行為だったことが、自分の思考の一部になる。

 ②情操型の発見
これは、本書の主人公と言っても過言ではない岡潔氏が、彼の名を世に知らしめた「不定域イデアル」という理論を生み出した際の感覚なのだそう。
いわゆるインスピレーションではなく、これまで積み上げてきた経験により急に視界が開け「わかった」という状態になる。数学者である岡氏が紙と鉛筆による計算や証明ではない、別の方法で心として「わかった」。別の存在として数学を「理解」しようとしたのではなく、数学と心を通わせひとつになっていきついた境地である。
(おそらく荻生徂徠の「物きたる」のような状態。習熟を重ねることで自分の体でわかるということなのかと推測)

既に先に読んだメンバーに感想をきいても皆一様に口が重かったのですが、読んで納得。数学に対して非常に哲学的にアプローチされた作品でした。
それゆえに、会社から「読め!!!」と命令されなければ一生出会うこともなかった、ましてや読了することもなかったと思います。
申し訳ないことに私は深く理解することができませんでしたが、数学という学問に真摯に向き合い人生を賭して深めている方々がいらっしゃることに単純に感動。
私も自身の仕事に真剣に向き合っていこうと、年始に志を新たにしました!


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