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中国が福島処理水問題でまた反日半狂乱、おかげで日本はますます健全化

2023/09/01 Original

世界の「小学生」、中国

 2023年8月24日の福島原発事故処理水の放流の前後から、中国政府の対日批判が過激さを増している。それに合わせ、中国の一般人民の反日行動も過激さを増している。

 IAEA(国際原子力機関)の安全認定を得ているのだから、これ以上の根拠は、日本としては出しようもない。だが、中国は、外交部の報道官が連日対日批判を続け、日本の水産物の禁輸措置。これだけでも非科学的だが、中国からの嫌がらせ電話が頻発するにいたっては、国を挙げて「小学生並み」の精神構造しか持ち合わせていないとしか言いようがない。

 反日のヒートアップで、中国駐在日本人が迫害を受ける、中国進出の日本企業が損失を被る、そしてその日本企業が首相官邸に泣きつく、そこで、「対中関係の改善のため、政府は何らかの努力を」を訳知り顔でしゃべる人々が増えそうだが、いいんじゃないですが、ほっとけば。

 確かに中国の反日ヒステリーで直接的な被害は出るかも知れない。しかし、これがデカップリングの好機と考えれば、日本全体の利害得失では、ますますプラスになると考えられるからだ。

 どうしてこんなことになるのか。それは中国という国の上から下までの精神構造を理解すればよくわかる。

自閉症は人間だけの話じゃない

 自閉症は、大雑把にはアメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル」にある「仲間関係を作れないなどのコミュニケーションや意思伝達面での質的な障害」という定義で言い表せよう。要するに他者という存在の認識がうまく出来ない症状のことと言ってよいようだ。先天的な障害とみられており、幼児の段階から行動や言語に問題が現れる。

 言うまでもなく、これは個別の人間の障害のことである。だが、この症状は国家、しかも大国にも明確に現れるという見方がある。国際政治学者で現在、アメリカの戦略国際問題研究所シニアアドバイザーであるエドワード・ルドワックの主張だ。

 「(その国は)すべての平和的努力を成功裏に進めつつも、取るに足らない小島や浅瀬をめぐる好戦的な主張のための無意味な軍事力強化に夢中になっている限り、……『(関係する)大小の国家を(自分に反対する)同盟という形で団結させてしまい、これからの自分たちの拡大を、わざわざ相手に封じ込めさせるように立ち回ってしまう』という自滅的なプロセス」を取り続けてしまうという。

 そう、この国こそ中国なのである。ルトワックはこの現象を「巨大国家の自閉症」と呼んでいる。中国はこれが自らの戦略の失敗であるという自覚を持つことはなく、自己中心的な言動や行動様式をひたすら反復するだろうと見立てる。

 地理的に周囲から遮断された大陸をほとんど占め続けたため、ヨーロッパのように同等の他国がひしめき合って存在する中で、国際関係の複雑な駆け引きをしながらバランスを取って共存するという経験が欠落しているという。

 こんな歪な歴史を長大に抱えてしまったことから、現在の国際社会では全く通らない戦略文化が、自己認識としては「誇るべき世界史的遺産」として抜きがたく染みついてしまっているのだという。

まさか、あの日本がねえ

 このルトワックの著作『自滅する中国』(奥山真司訳、2013年、原題“The rise of China vs. the logic of strategy”2012)を初めて読んだときには、「中国もそこまでアホじゃないだろう」と感想をもったものだったが、現実はそれ以上のアホさ加減だった。

 中国は尖閣問題だけでなく、南シナ海、ウイグル、香港、台湾と、マンガの展開としか思えないような分かりやすすぎる乱暴に次ぐ乱暴を重ね、全世界的な反発を招いた。

 そして、アメリカ、オーストラリア、インドに日本は、反中同盟「QUAD」を形成。日本はこのとりまとめ役に位置づけられ、まさに西側同盟政策のスター扱いだ

 しかし、ほんの十数年前まで、日本がそうできるとは信じられなかった。例えば故中曽根康弘元首相というと、読者の皆さんは、おおよそ日米同盟の推進者というイメージをお持ちだろう。筆者もそう思っていた。

 実は、民主党政権成立前夜の2008年、中曽根氏にインタビューを行ったことがある。当時、小沢一郎・民主党幹事長がイラク戦争後の対テロ戦争での「イラク特措法」の時限延長阻止に動いていたが、中曽根氏から日米同盟の成果を捨てることに批判がでるものと予想して行ったものだ。

 だが質問した途端、「なにぃ、小沢を叱る?」とにらみつけられたのだ。小沢の奪権闘争は、何かしらの国家像を意図したもので、小泉純一郎のような格好つけではない、というものだった。小泉親米路線への反感は明白だった。

 ルトワックは、中曽根、小沢は、日本の過去と未来を中国的システムの中に見いだすという世界観の中にあったと説明する。たしかにアメリカからの遠心力は保守も含めた冷戦終了後の日本政治の地合であった。

 90年代から「同盟漂流」が続いていた。あまりに長い経済的凋落での自信喪失、敗戦のトラウマ、身勝手なアメリカへの反感、これらのストレスが合理的思考を遠ざけた。

 中国が自閉症というなら、冷戦後、バブル崩壊後の日本は鬱病だ。そしてそのピークでの民主党政権の成立ではっきり中国寄りに舵が切られたかに見えた。中国にとっては、戦後世界での仇敵、日米安全保障条約体制にくさびを打ち込む絶好の機会を得たことになる。

 しかし、それが一変したのが、2009年10月の尖閣諸島沖での海保巡視船への中国漁船衝突事件であった。その船長を逮捕したことに対し中国は、レアアースの禁輸、日本人ビジネスマンの逮捕など子供じみた報復を繰り返した。ルトワックが描くように、この時点で、一気に潮目は変わった。中曽根・小沢的な中国指向は完全に沈黙し、安倍晋三が復活、あとは中国の「後押し」もあって、現在に至った。

 今回の福島処理水の子供じみた反日ヒステリー騒動も、日本を対中デカップリングに押しやるだけの効果しかないし、オーストラリア、台湾など、同様な非科学的ヒステリーによる禁輸措置、恫喝を受けた経験のある国々との接近はさらに増すことになる。
 
 いかなる国も主権の危機を感じたら、戦略が政治、経済より優先し、同じ立場同士で同盟するというルトワックの論理通り。抑鬱よろしく、何も決めれない変われない国だった日本でさえここまで来た。中国は世界戦略上のチャンスを自ら潰したわけだがその自覚はない。

 隣に乱暴で巨大なコミュ障がいるということは、日本にとって少なくとも戦略的判断を間違えなくて済むという効用があるといえる。
 

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