間宮淳の辺境暴論

流浪の編集者のエッセイです。偏屈は偏屈なりに意固地な議論をふっかけます。 nippon.com元編集担当理事、中央公論新社「中央公論」元編集長、など転々。1959年大阪府生まれ。ハマと横須賀線沿線生活をこよなく愛す。写真マニア。

間宮淳の辺境暴論

流浪の編集者のエッセイです。偏屈は偏屈なりに意固地な議論をふっかけます。 nippon.com元編集担当理事、中央公論新社「中央公論」元編集長、など転々。1959年大阪府生まれ。ハマと横須賀線沿線生活をこよなく愛す。写真マニア。

最近の記事

いまの日本政治に「蟻地獄」の叫びは届いているか

■総選挙に響きわたった悲鳴の主体  10月27日に行われた総選挙の結果は、ものの見事に、自民・公明連合政権の大敗北に終わりました。与党過半数割れ。しかし、野党も比較第一党をとることはできず、しかも、共闘への動きも見られず、何と、石破茂氏を首班にすえたまま、連合政権継続の見込みとなっています。  なんとも、グズグズの結果ですが、しかし、別な補助線を引けば、この国の長い停滞を破るかもしれない道筋が見えなくもありません。  以前、「この国で世代間闘争が起きないと本当にいえるの

    • 台湾有事の「こころ」と「かたち」

      newleader 2024/9/1を改変 ■10月14日、中国軍が台湾包囲演習を始めました。頼清徳政権の「独立志向」を「強く否定する」目的とのこと。国共内戦以来、軍事的威嚇を続けてきており、これがなぜ、台湾に対する「強い威嚇」になるのか。8月上旬に執筆した記事ですが、台湾有事の本音の係争点は何かを解読してみました。  先日(これを書いている8月上旬)、友人で台湾在住のアメリカ人安全保障研究者からメールがありました。「……明日、東京経由で台湾に戻ります。今日、ばたばたして

      • 右であれ左であれ、我が祖国……であって欲しい

        newleader 20240801より改変 ■今となっては羨ましい大英帝国の気骨 「……その瞬間が来た時に革命からしり込みするのはまさにユニオンジャックを見ても決して心動かされない人々なのだ。戦死する少し前にジョン・コンフォードが書いた詩(「ウエスカの嵐の前に」)とヘンリー・ニューボルト卿の「終末の今宵は息をのむ静寂」を比べてみるといい。たんに時代の問題である技法的な違いを脇に置けば、この二つの詩の感情的な内容はほとんど完全に同じであることが見て取れるだろう。国際旅団で

        • 中国に再び「やって来る」がやって来た

          newleader20240701を元に改変 ■「やって来る」もの  魯迅の「やって来る」というエッセイの中に、こんなエピソードが語られています。    「民国が成立したとき、私の住んでいた小さな県城でも、さっそく白旗を揚げた。ある日、突然、おおぜいの男女がごった返し始めた。城内のものは田舎に逃げるし、田舎のものは城内へ逃げる。何事がおこったのかと訊ねると、かれらのいわく《なんでも、やって来るっていいますぜ》……してみると、誰でもただ「やって来る」を恐れているわけだ。……

          違う! バイデンが不法移民に寛容なことが、日本の抱える問題なのだ

          newleader2024年6月号を元に改変 この川はどこから流れてくるのか  この5月の連休、高校の同窓会やら親戚への用事やらが重なったので、故郷の関西に戻っていました。用のある場所への足の便がいいことから、深く考えずに京都の町中に宿を取ったのですが、いやぁー、すごかったですね。宿代が目玉が飛び出るほど高かったことは覚悟の上でしたが、それより驚いたのが、凄まじい人出。特に外人さん。観光気分を味わおうと先斗町に食事に行ったのですが、四条の入り口から通りを覗いた途端、あきら

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          「超」進歩主義の論理と心理

          newleader 2024/05/01を基に改変 ■ギリシャ哲学者の突っ込み  4月8日から一週間、岸田文雄首相が国賓待遇で訪米、議会演説で日米同盟の深化を謳い上げました。9年前の安倍訪米時に比べ、日本国内では「同盟強化」に否定的な声が明らかに影をひそめました。中国の脅威が無視できないものになってきている中、ウクライナのような有様まで見せつけられると、さすがの戦後日本人も酔いが覚めたようにリアリズムに染まるしかないのでしょうか。  しかし、憲法九条を改変したわけでもな

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          円安がなんだ、忘れるまいデフレ自殺者十数万人の下手人

          newleader 20240401を改変 ■「デフレ死」はなぜ等閑に付されたか  何でもいいです。ウォール・ストリートのマーケット情報を扱うニュース番組を見てください。毎月の月初めに、第一金曜日を「●●はアメリカ雇用統計の発表日です」といった予告ニュースをよく目にします。これだけでニュースとして成立しているのです。発表される失業率に市場が敏感に反応するからです。  実に不思議だと思いませんか。だって日本では雇用統計の発表がこのように扱われることはありません。アメリカで

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          禁酒日記・劣情篇

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          アメリカの自家中毒する民主主義

          20240301 newleader 「もしトラ」から「多分トラ」へ 3月5日はアメリカ大統領選挙予備選のスーパーチューズデー。本稿は2月上旬に書いていますので全くの予想ではありますが、おそらく共和党ではドナルド・トランプが圧勝し、アメリカ国内の支持者以外の全世界の人々が少なからぬ失望を感じていることと思います。共和党の候補指名獲得は確実、バイデンに対しても現時点の調査では優勢だそうです。 なんと言っても、第一期政権では、素人政治家丸出しの立ち居振る舞い。選挙公約ともい

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          禁酒日記・無頼篇

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          戦争は日本人の顔をしていない

          2024/02/01 Newleader 『戦争は女の顔をしていない』  「『……人を殺すってむずかしいことよ。あたしは地下活動をしていたの。半年後に任務をいいつけられたの、ドイツの将校の食堂でウエートレスになれって……若くてきれいだから……採用されたわ。スープに毒を入れて、その日のうちにパルチザンに入れということだったの。あたしは将校たちに親しんでしまっていたわ、そりゃ、敵だけど、毎日会うし、[ダンケシェーン、ダンケシェーン]って言われて。これはむずかしいことよ。殺すの

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          さよならヘンリー・キッシンジャー  或る近視眼の「国際戦略家」への追悼

          2024年1月1日 Newleader 毛沢東でさえ心配するほどに  「日本は毛沢東の協調戦略において、主要な構成要素になることになっていた。一九七一年の秘密会談で、中国の指導者は日米が手を結んでいるという見方に、依然、かなり疑念を抱いていることを表明した。周恩来は日本に気をつけろと警告した。日本が経済復興し米国に挑戦する立場になれば、既存の友好関係は弱まると指摘した。一九七一年一〇月に周は、日本は『翼の羽が厚くなり、今にも飛び立とうとしている』と強調した。私は、日本が米

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          イスラエルがガザでやらかしてしまった200年の歴史の再生

          2023年12月1日 newleader 西欧に対しては何をやっても  「さて今日、二十一世紀の前夜においても、アラブ世界の政治的・宗教的指導者は、相変わらずサラディンやエルサレム陥落およびその奪回を引き合いに出す。イスラエルは、一般大衆の受け取り方においても、またある種の公開演説においても、新たな十字軍国家とされてしまっている。……中東のアラブは西洋のなかにいつも天敵を見ているということだ。  このような敵に対しては、あらゆる敵対行為が、政治的、軍事的、あるいは石油

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          だって経済大失政だから~中国で文化大革命の再来に怯える人たちがいる理由

          20231101  newleader 故曰仁者無敵、王請勿疑  「たった百里四方の小国の君主でさえも、天下の王者となることができます。王様がもし仁政を行なって、刑罰を軽くし、税金の取り立てを少なくし、田地を深く耕して草取りも早めにさせ、若者には農事のひまひまに孝悌忠信の徳を教え込み、家庭ではよく父兄につかえ、社会ではよく目上につかえるようにさせたならば、一旦ことあるときにはただの棍棒だけでも、堅固な甲冑・鋭利な武器で身を固めた秦や楚の精鋭をもうちひしぐことができましょう

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          中国、「甘い汁の循環」が崩れるとき

          2023/10/01 newleader 中国の不思議な権力  「当時、皇帝の正餐では、食卓に百品の料理が並べられた。もちろん、この料理をすべて皇帝が食するわけではない。皇帝が箸をつけるのはせいぜい数品にすぎず、ほとんどが余った。余ったご馳走は宦官や宮女たちが先輩後輩の序列に従って順次食べ尽くす。もちろん、料理ができる前に、厨房の料理人たちも余録をせしめていることはいうまでもない。  ……皇帝の食卓は、中国社会の縮図である。皇帝が、大婚や太寿などの国家的祝賀行事や、宮殿

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          まだまだ終わらない大日本帝国の後始末

          2023/9/1 newleader ルーズベルトの「ピンボケ」が  1964年7月に訪中した日本社会党左派の議員団(佐々木更三団長)に向かって毛沢東は「日本軍国主義は中国に大きな利益をもたらしました。中国人民に政権を奪取させたのですから」と「感謝」の言葉を伝えたといいます。(原剛「運命を変えてしまった知られざる大作戦・一号作戦」)。  日本が何か中国共産党に感謝される「何」をしたというのでしょうか。実は、このことに現在にもつながる東アジアの不安定と緊張を読み解く鍵があ

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