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【随筆】『少年の握りしめた夢』

仕事終わりの夕刻、スーパーのレジに並んでいると、私の隣で分厚い雑誌を不器用に抱えている、丸坊主の小学三年生くらいの男の子が立っていた。
私のレジの番になって、彼はようやくその雑誌をレジのテーブルに置くことができたようだ。子供の頃よく見た某コミック。
彼はその表紙をずっと見つめている。
彼の握りしめた右手に気づいた。
私の会計がはじまった頃合いに、彼はその右拳の中を数えはじめた。
10円玉の茶が多く目立つ、100円玉もあるか……。
たしかなことは、彼はこれを買うためにお金を貯めてきたのだ。
(きっと彼は小銭を握りしめたまま家を飛び出し、その雑誌をなんとか抱えて、このレジの前までようやく来た…。)

数え終わっても、彼はその表紙をずっと見つめている。
今、本の中にある世界を彼は想像している。

「その本の中にはない。」と刹那に思った。

私は彼のために描こう。

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