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日本人でなくなる時

 日本は二重国籍を認めていないので、私が仮にどこかの国の国籍を取得すると、自動的に日本人でなくなってしまう。私の住んでいる国では、二重国籍が認められているので、日本人であると同時にアメリカ人である事が出来る。

 私は結婚によるアメリカ永住権保持者だ。10年物の永住権なので、10年ごとに更新しなくてはいけない。今年その更新がやってくるのだ。私は、前回の更新時、もしかしたら日本に帰るかもなあ、なんて迷いがあったので、永住権の更新をしたわけなのだが、今回は、もう子供も大きくなってきて、日本語もろくにしゃべれないので、私はこの国に骨を埋める覚悟ができた。そして、唯一私だけが外国人であって、なんとなく疎外感がある。いつも感じる漠然とした焦燥感と、何も悪いことなんてしていないのに感じる、不安。自分の存在に安定感がなく、常に先を見据えて生きていかなければいけないことが、心に安息を持たさない。何度も嫌な人間に国へ帰ろ、と言われたことや、連れと喧嘩した時、国に帰るのではないか、とすごく心配されること、そして子供たちが、強制送還されるんじゃないの、って不安がること、そういうのがちょっと堪えて、私は、ここで生きていくんだ、と思えるようになった。

 今、アメリカは混乱で、不安定で、毎日のんびり過ぎているように見えるけれど、人々は大きな不安に脅かされている。不法移民や、移民たち、永住権保持者であっても、不安定だ。子供たちは、学校から家に帰ったら、お母さんがいなくなっているんじゃないかって、学校にも行けない。レイプや、強盗の被害者たちも、裁判所に出頭するとき、ICEと呼ばれる移民管理局の人がいたら、そのまま強制送還されることになるので、被害届けさえ出せない。前年度に比べて、明らかにレイプや、ドメスティックバイオレンスの被害は減っている。

 自分の事をアメリカ人だと信じていた女性は、17歳の時、大学に行くため、出生届を取り寄せようとしたら、両親に告げられた、あなたは不法移民者だという残酷な言葉。英語しかしゃべれない彼女は、オバマ政権の時、労働許可証をもらい、合法的に働けるようになったけれど、それがいつ打ち切られるか、わからない。打ち切りは、彼女の強制送還を意味している。行ったこともない国に、送り返される。そこで、彼女はどうやって生きていくのだろう?そういう人間たちがあふれている。

 私は、恵まれているなあと思う。それなのに、毎日のように、ママ、早く市民権とって、と息子にせかされる。彼は、不安なのだ。きっと彼の友達にもそういう子たちが多くいるのだろう。ほとんどの生徒が移民や、両親が移民の子ばかりだ。

 私の永住権は今年の12月に切れるので、そろそろ本気で市民権を申請しなくてはならない。不法移民にはなりたくない。でもいつも通り、重い腰がなかなか上がらない。私はぎりぎりまで待って行動するバカみたいな癖があるので、こういう時は、そういうのをしないでほしいのだが、今回もダラダラしてしまっている。ただの大馬鹿だ。

 市民権申請に必要なものは、ウェブサイトでダウンロードできる書類と、申請料。それを移民局かなんかに送って、待つ。オバマ政権の時に申請した友達は三ヶ月で連絡がきたらしい。そして、指紋をとりに行き、その後は面接だ。面接ではテストがあり、アメリカの事について聞かれる。それに合格したら、宣誓式に行き、晴れてアメリカ市民になるのだ。ああ、今日用紙をダウンロードして、小切手を送るつもりなのだが、胃がキリキリする。なんでこんなことでキリキリするのかまったくもって謎だが、この期限すれすれのスリルなんかが好きなんだと思う。いや好きなわけではない。嫌いだ。市民権とって、好きなことして、警察に捕まっても、強制送還とか国外追放にならないなら、それのほうがいい。安心したいのだ。なのに先延ばしにしようとする、この心理は一体何なんだろうなあ?

 これから先の記事は、市民権のことが増えるかもしれません。更新も、少なめになるかも。本当は書きたいし、皆さんの書いた記事もたくさん読みたい。でも、子供たちを安心させるために、市民権取得に焦点を置きます。

 あーめんどくさい。もう、アメリカ人と結婚した人は、10年結婚が続いたら、自動的にアメリカ市民になれればいいのに!ぷんすか! 後、今年もLA PRIDE行きますわよ!ラインナップが決まる前にチケットを買うとすごく安いのですよ!奥さん。もう買ってしまいました。誰かと行けたらいいなあ。Xジェンダー・ジェンダークィアーとしての唯一の悩みは仲間が見つかりにくいことですなあ。どこにも所属しない、という、マイノリティーの中のマイノリティーぽくってぼっちっぽい。しかもパンセクシャル。まあ、一人で行っても結構エンジョイできてしまう私。今回は、仲間探しもしてみようと思います。パレードも出たいなあ。

 気になった方は、高くなる前にチケット購入!


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