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詩集・小瓶の蝙蝠

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詩をまとめています。
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2017年7月の記事一覧

心地よい錯乱

心地よい錯乱

静かに狂う 彼女の魂
落ちないように受け止める 僕の心臓
相対する 幼い二つの魂
それは 心地よい錯乱
闇の中 静かにこぼれた涙と 血
欲望の中で 搾取された
純粋な心たちよ
闇の中に留まっただけで
浮遊するのをやめてしまった
彼女の魂
僕はそっと落ちて その体を包んだ
二人で落ちると速度は倍になった
流れ込んだ狂気の世界で
僕らはじっと待っていた
舐めあう傷は どんどんと深さを増し
そのうち骨ま

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ユニコーン プリンセス

ユニコーン プリンセス

迷わずにふれた
気がふれるより速く 肉体に縋りつくことは
知らない母さんのスカートの裾を 掴むことよりも簡単で
つかの間の休息を おんなになって 委ねた
おとこのあたしは そこにはもういなくて
母さんの代わりに 彼女はあたしの頭を撫でた
おまじないのように あなたはプリンセスなんだよって
いつまでも いつまでも 口ずさんでくれた
涙が止まらない あたし強かったのに
強がってたのに 彼女の前では

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保つ

保つ

水族館の金魚の夢が サメになることだとしたら
わたしの夢は 小さい
昨日迷い込んだ画廊でみた写真が 知っている場所だったので
小さな期待をもって そこへ車を走らせた
ネオンが美しい 幻想の世界のようなあの場所は
確かに記憶の片隅に存在していたのだけれど
残酷な現実世界では 輝きを失ってしまい
その世界だけ忘れ去られたように
もうそこには存在していなかった
その世界を切り取ったら 私もそこに行けるん

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