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心地よい錯乱

静かに狂う 彼女の魂
落ちないように受け止める 僕の心臓
相対する 幼い二つの魂
それは 心地よい錯乱
闇の中 静かにこぼれた涙と 血
欲望の中で 搾取された
純粋な心たちよ
闇の中に留まっただけで
浮遊するのをやめてしまった
彼女の魂
僕はそっと落ちて その体を包んだ
二人で落ちると速度は倍になった
流れ込んだ狂気の世界で
僕らはじっと待っていた
舐めあう傷は どんどんと深さを増し
そのうち骨まで舐めあうようになった
寂しい彼女の魂を 風船のように
見えない糸でつなぎとめた
死んでいたのは 僕の方で
生きようとする彼女を 引き留めた
僕は彼女の自由が 怖かった
それは甘くて苦い 自分勝手な
優しさ
死んでしまったのは 僕の方で
あまりにも長く 彼女の側に居たせいで
僕は彼女を狂わせた
決して死を選ばない彼女は
僕を半狂乱にさせた
突き放された僕は
彼女にぴったり寄り添って
いつまでも 離れなかった
隔離病棟で
彼女が長い生涯を終えた後
浮遊する魂に 僕は見向きもされず
さよならも言えなかった
ひとり錯乱する
寂しい魂
僕は永遠を手に入れた

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