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ユニコーン プリンセス

迷わずにふれた
気がふれるより速く 肉体に縋りつくことは
知らない母さんのスカートの裾を 掴むことよりも簡単で
つかの間の休息を おんなになって 委ねた
おとこのあたしは そこにはもういなくて
母さんの代わりに 彼女はあたしの頭を撫でた
おまじないのように あなたはプリンセスなんだよって
いつまでも いつまでも 口ずさんでくれた
涙が止まらない あたし強かったのに
強がってたのに 彼女の前では
身ぐるみ剥がされたみたいに 無力になった
剥き出しの乳房に 縋って泣いた
母さんは知らないけれど こんなのかもなあって 思った
安心して眠りに落ちたあたしの背中に
ぽたり ぽたりと おちた涙の粒
それは晴れた時に降る雨のしずくみたいに心地よくて
だまってその雨粒を 降らしておいた
そのうち涙の雨は止んで あたしはゆっくりと瞳を開けた
彼女のまなざしには 説得力があって
あたしは 他の何もいらないと思った
ひとりぽっちの時 ひざを抱えて眠った
あの日々が幻のようで あたしはうれしかった
純粋にうれしかった
彼女の額にやさしく触れて 涙の乾いたあとを
指でなぞった
母さんのようで 時に少女のような彼女は
ぎこちない微笑で あたしを抱きしめた
それは平等で対等の関係だった
縋りつくものが欠如していた私たちは
お互いに求めあって 支えあって 縋りついた
これで落ちるのは おわり
あたしは全世界に認められようなんて
もう どうでもよかった
あなたが認めてくれたから
あたしはここにいる
あたしはここにいる
きょうも あしたも あさっても
あたしはここにいる

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