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組織論のオープンゼミで大学生と社会人が議論したら…(宇田川ゼミ2018)

社会人勉強会のゲストに来てもらったことがきっかけでお世話になっている組織論の宇田川先生が、学部生ゼミのオープンゼミを開くということで、お邪魔しました。(後半のワークはまとめというよりも、いくつかのトピックで話し合った内容を備忘録的に書いています。)

オープニング:宇田川先生

大学で教えていて一番嫌な言葉は「大学で学んだことは社会人になって役に立たない」と言われること。
研究では、問いを立てて仮説検証し、検証の過程で仮説を直して、また検証をしてを繰り返すというプロセスを経ていく。これは社会人になって働いていく上でもとても大切なことであり、学生の中で学べる機会が大学であり、そのための機会として設定しているのが、このオープンゼミ。
学生も真剣に準備してきてくれているから、聞きにきた社会人はお客さんではなく、メンバーとして関わってほしいし、研究の支えになるようなサポートをしていってほしい。

チーム紹介

マーケティングチーム
1.ガチャガチャ業界はなぜ残っているのか
2.日本の伝統的なモノの良さはどうしたら広まるのか(日本酒)
3.羽振りの悪い飲食店業界で生き残るための戦略

アートチーム(その他1)
1.ビジネス・社会におけるアートの現状について
 -日本人的思考・価値観の再考
 -今の世の中にそれが適したものなのか

マーケティングチーム2
1.少子化と大学受験業界

組織チーム
1.組織はなぜ機能しなくなるのか

組織の中でストレスを感じる(他者への違和感)->モチベーションの低下->組織のために動く人間が少なくなる->最初に戻るという負のサイクルが生まれるのではないか。

2.働く意義、仕事のやりがい

組織における対話によって、外発的動機付けが内面化するアプローチ391名へのアンケートの結果、働く目的はお金という結果が多かったが、インタビューの結果、お金ではないものに価値を感じているという意見をもらった。アンダーマイニング効果(外発的動機付けが増えることによって内発的動機付けが下がってしまうこと。)ではなく、外発的動機付けを内面化さることによって内発的動機付けを減少させるないようにすることはできるのではないか。

3.組織に関する学びから出た新たな悩みと疑問のループ

人間関係にもやもやすることがあり、それが動機になって組織について研究していて、学ぶたびに、理解することは増えつつももやもや(問い)が増えていって解決していない気がして、経営学なのか心理学なのかわからなくなってしまっている。

ワーク(学生and社会人)

※私は組織チーム1の「組織はなぜ機能しなくなるのか」の机にいきました。(学生2名+社会人3名+たまに宇田川先生登場)

1.ストレスが組織内の負のサイクルの始まりだと思っているのですが、働いている上でのストレスって何ですか?

Aさん: 上下関係があって、お互いが十分に納得いくまで話せないことがストレスになる。下は理解されていないと思っているし、上は思うように動いてくれないと思うみたいな状況。なので、双方向で相手を尊重しあえる在り方を取れるようにしたいし、敬意を持って接し合えるようになりたい。
Bさん: 仕事でのストレスは、金銭的な報酬と仲間・同僚と仕事内容のバランスが取れているか否かで変わると思っている。仲間と対話ができていなくても、ゆくゆくやりたいことに結びつく内容に携わることができていたり、納得できる金額報酬があったりすると、ストレスがあっても一定程度活躍はしたりすることもあると思っている。また、ストレスには受けていいストレス(報酬のあるストレス)とよくないストレス(理不尽なことに巻き込まれるとか、逃げたほうがいいこと)があるのではないかと思う。
Cさん: 自分あるいはチームのメンバーが勿体無いなと思う状況がストレスになる。自分の活かし方がもっとあると思うのに上手くできていないときとか、チームのメンバーがそういった状況にあってしんどそうにしているとかがストレス。背景や意図が理解できることは多少辛くてもストレスにならないけど、自分が納得できない状況下でする作業はストレスになるのでは。
ストレスになるならないの分岐って、アイデンティティーが関わっているのでは。Aさんの話でいうと、平等な立場でのコミュニケーションが気持ちいいなという経験があるから、そうじゃないときに嫌だと思う。例えば、性差別とかも生まれてずっと当たり前に差別されている環境だったら、それが差別と気づかないしストレスにもならなくて、逆にそうじゃない世界を知っているからこそ、現実に対してストレスを感じる。だから、同じ事象が起きていても、それが許せなくてイライラする人もいれば、違和感を感じずなんとも思わない人もいる。組織内で関わる人のアイデンティティー(これまでの人生を形成してきたもの、大事にしてきたことや、考えてきたこと)が何なのかを知って理解することで、お互いに理解して納得しながらだったらストレスなく関われるのでは。

ゼミを一つの組織として捉えた時に、このゼミという組織の中でもストレスを減らして、もっと良くしたいと思っている。明確に何か悪い状況やその要因があるというわけではないが、もやもや、悩んでいるところがある。どんな状況になると解決するかというと、ストレスをゼロにはできないとしても、今より下がってきたらいいんじゃないか。

モチベーション研究でいうと、ゴールが遠くにあって未達である状況(=ストレス)がモチベーションになるという説もある。(宇)

モチベーションに繋がる方のストレスはありつつ、受けなくていい方のストレスを減らしたい。

2.ストレスがよく機能したり悪く作用したりすることがあるということは、ストレス自体が原因ではないのでは?

目的が納得のあるものであれば、未達である状況はモチベーションとなるが、目的自体が納得するものになっていない、つまり目的の混乱があるということがモチベーションを下げるという仮説がたつのかもしれない。

目的に対する納得感のあるか否か、がポジティブなストレスかそうじゃないかが分かれていくのかもしれない…

ギャップ(=ストレス)の有無が問題なのではなく、目的(A地点へ行くかB地点に向かうか)に納得しているかがモチベーションを左右するのでは?
企業は理念とかビジョンとかがあるから、共通言語を持って同じ目的に向かいやすいが、逆にゼミの方が難しいかもしれない。
大学の評価は成績だけだし、ゼミではその影響力が大きくはない。企業は金銭的報酬もあるし、組織のメンバーの入れ替わりもあるが、ゼミはそれもない。

3.ゼミという組織の目標とは?

何を目指して頑張ればいいのかわからない。という戸惑いがそれぞれの中にあるのかもしれない。

そのもやもやを話す場を作ってみるというのは?

過去にも話し合っても答えにたどり着かなかった。一般的なゼミは教授が出した課題をゼミ生が調べて発表したりするが、このゼミは降りてくる課題がなくて自分たちで問いを探すから、個々人がやりたいことをやる中でゼミとしての共通の目標ってなんだろう?と思ってしまう。

みんないい人だから、お互い遠慮している部分があったりして、本音の部分が出てきていないのかもしれない。

 3年生が運営して2年生が参加するスタイルの中で、どうしても下だと意見が言い出せなかった。それと同じことが今起きているのでは?

自分たちとして納得のいくゴールは何なのかということを、みんなで話し合えるか。その口火を誰かが切れるか否かで変わるかもしれない。逆に口火を切らなければ変わらないし繰り返しになるのでは。

議論する機会自体は増えてきている気がする。

みんなが自分の思っていることを素直に吐露できるくらい心理的安全性が生まれるまで、喋る機会を作り続けてみるのはどうだろう?本当は少しずつ前進しているのに、自己肯定感が低かったりチーム全体でできたことの認識が足りていないのかもしれない。

企業で働いている中で、何ができるようになったとかどんな変化があったとかって、話し合うタイミングはあるのか。どう話すのか。

KPTとかKJ法とかフレームワークを使うということもあるし、第三者に登場してもらって、あえて外の人からいいところを教えてもらうこともある。
自分達のことを認める・良い所を見つめるって難しいことかもしれない。

ネガティブなマインドになっている組織にどう介入するといいのかを実証実験するといいのでは?

話し合いの仕方という研究もいいのでは?

企業の中でどんな取り組みをしているのか、どんな研修をしたりしているのかを調べてみると、ゼミも含めた組織に活かせるフレームワークのヒントが見つかるかもしれない…

実践している人を呼んで、実際に研修を受けて、いいフレームとその理由を調べていくとかいいかもしれない…



参加者感想(一部抜粋)

組織の話をしながら、自分の就活相談みたいになっていった。社会人も学生も「みんな不安があるんだな」と思った。(学生)
マーケティングについて、なんで売れるのかを知ることは大切で、先行研究はたくさん合ったりするが、幅広い分野だから勉強しなければいけないことが沢山ある。私自身は働いてからその必要性を知ったが、学生のうちの方が時間があるから今のうちからやっていってほしいなと思った。(社会人)

まとめ・感想・次までの自分の宿題

組織内にいる人のストレスのうち、モチベーションを阻害するストレスは目的に対する納得感の有無。モチベーションを促進するストレスは、合意しているかつまだ未達な目的へギャップ。
どんな組織にもやっぱり話し合いとか、お互いの文脈や大切にしていることを知るための相互理解って必要。

研究をする時、仮説の精度をどこまで上げられるかがひとつの鍵になると思うので、経営領域の研究をする学生さんは社会人をうまく活用してよりリアルな声を聞きながら研究できると面白いのではないかと実感した。
学生にとっては、社会人と同列で議論することはハードルが高いかのしれないが、社会人にとって学生と話すことは視点の切り替えや客観性を持つきっかけになるからすごくいい機会かもしれない。

次のオープンゼミまでに
・話し合いのフレームの中で、良いストレスを埋めるものは何か考えて、チームの学生に共有する
・自社以外の良い組織がどんなところか考え、その中の人たちが実践しているコミュニケーションや文化づくりを探る

この記事が参加している募集

シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。