東京都知事選挙2024を振り返ってみる(1)―ひまそらあかね出馬の影響編―
東京都知事選挙が7月7日に終わった。
開票速報開始直後に当確がでるという、あっけない結果であった。
結果は小池百合子氏の三選
小池氏の1位は揺らがなかったが、2位以下はかなり乱戦模様になった。
新人の石丸伸二氏が165万票をとり、蓮舫氏が128万票にとどまるという乱戦ぶりであった。
予想だにされなかった新人「ひまそらあかね」の登場でどよめく立候補受付会場
さて、まずここで時計の針を6月20日に戻そう。
メディアの取材陣が待ち受ける、都知事選の立候補届け出会場に、謎の人物があらわれる。「ひまそらあかね」の代理人だった。
NGワード「暇空茜(ひまそらあかね)」とは?
2022年の夏の終わり、暇空茜はSNS上で、公費助成を受けている女性支援団体Colaboの会計問題を追及し始める。
そして彼はその追及の範囲をWBPCという4団体に広げる。住民監査請求の結果が出る前、2022年11月29日にColabo提訴記者会見――通称リーガルハラスメント会見が衆議院議員会館で行われた。
年明けて東京都で数年ぶりの住民監査請求が通っても…報道されない。
市民団体がなら住民監査請求をした段階でニュースになるケースも多いというのに不思議なことだ。
報道されても、きまって「女性支援団体を攻撃するミソジニーを拗らせたオタク」という印象操作が入っている。
2023年2月には2022年秋に上記Colaboの告訴を受けて書類送検されただけでパトカー写真付きで報道されている。
ひまそらあかねは、なにやらマスコミに嫌がらせをされているきらいがある。
ひまそらあかねの出馬で変わったこと
おそらくまず激震が走ったのは、マスコミと若手候補者ではなかったかと思う。
石丸氏は安芸高田市長在任時に、動画チャンネルで人気を博したことが、都知事選立候補への足掛かりであったろう。
安野氏は、若手AI技術者で、オードリー・タンとも親交(をほのめかすような)、IT技術を政策に活用…というのが売りの人物だ。
二人とも「新時代への政治の変革」「参加する政治へ」を叫ぶ点では同じだが、この二人は得意とするテリトリーが違うので、あまり競合はしない。
だが、ここに暇空茜(ひまそらあかね)が電撃出馬してくると、様相が変わってくる。
ひまそらあかねは、41歳、元ゲームクリエイター(プログラマー)であり、ベンチャーにもかかわっているし、Xで20万超(出馬前)フォロワーをもち、youtubeチャンネルの登録者も20万という、IT系インフルエンサ―である。
そして、個人で住民監査請求⇒住民訴訟をやるという実行力も併せ持つ。
(口が悪い…という難点はあるものの…、かつての「安倍晋三叩き」のような口汚さはないのでもののうちには入らないだろう、ちょっと嫌味が強い程度でしかない)
両方の得意分野にまたがる存在である。
ひまそらの出馬で若手の構図は下記のように、変化した。
丁度ど真ん中にひまそらあかねが入るという構図になる。
「ITに強い」にしろ「メディア配信に強い」にしろ、その話題を持ち出した瞬間に「安野―ひまそら」「石丸-ひまそら」の比較構図が生まれてしまいやすいということにもなる。
全体構図も変化する。
※6位の内海氏は、反ワクチン・反精神医療専門の受け皿であると考え、図には入れていない。
上図にあるように、ひまそらあかねが出馬しなかったら「若手vs旧世代」という比較的キレイな構図になるが、ひまそらあかねが出馬したことで、世代対立の構図は残るものの、若手2氏までもが防戦を余儀なくされる…ということにもなったように思う。
選挙戦アピールの構図にメディアの性質を加味する
もうちょっと解像度をたかくするために図を工夫してみた。
一般へのアピールの場としてどういうメディアをベースにしていたかというのは、結構重要だと思う。
メディアの性質は前世紀と今では大きく変わっている。選挙戦も変わって当然だろう。
ネットを利用して発信できるようになったことは、媒体の性質自体が「双方向性をもつもの」へと広がりを見せているし、画像や動画といったものも個人レベルで編集したり発信したりができるようにもなってきた。
最も双方向性の高いのがSNSで、テレビや新聞が最も一方通行型である。
マスメディアの報道のアドバンテージとしての「広く伝える」「偏らずにつ伝える」ではあるが、こと後者に関しては、最近は偏向がひどいのではないか?といった観点からの批判も多い。
そして、マスメディアの偏向の影響をもろにうけてきた、ひまそらあかねが都知事選に出馬したわけである。
もし、ひまそらあかねが出馬しなかったら。下記のようなかなりキレイな構図だった。
「若い世代vs旧世代」
という構図、
そして
「ネット活用組vs旧メディアべったり組」
という構図がイメージとして理解しやすいだろう。
(実際は、蓮舫陣営は案外SNS活用に長けているし、田母神俊雄氏もSNSに固定ファンがいる(フォロワー40万)ので、SNSをあまり利用しない人にとっての想像しやすいイメージでしかない)
この図式が活用できれば…石丸氏にも安野氏にもかなり優位に働く…
そして、蓮舫氏が共産党とつるんだ時点で、石丸氏のアドバンテージはおおきくなっていた。
石丸氏の黒歴史が拡散する前に選挙戦が終わってれば、石丸氏が知事になってた可能性は十分あった。
石丸・安野の両氏には、アピール領域を左方に伸ばす準備はできていただろう。
実際公示前に、NewsPicksというニュース系動画媒体でも、二人の対談特集が組まれている。
若手3人に発生する比較の構図
#ひまそらあかね が出馬することで
①SNS選挙運動が「ひまそらあかね」の普段の追及と干渉するようになる。 ②下記領域内の比較が自然発生する。
③石丸氏の黒歴史暴露が加速する。
といった影響は不可避なのである。
この構図になることで、発生する比較は
リベサヨマインド度比較
わかりやすさ比較
おポエム度比較
公金チューチュー度比較
SNS・ネット活用度比較
などである。
これがなければ、安野氏も石丸氏ももっと票を伸ばしやすかった可能性はあったと思う。
ひまそらあかねが出馬してなければ
1位 石丸
2位 小池
3位 蓮舫
4位 安野
5位 田母神
は、ありえたラインだったように思う。
石丸氏のバックに、大物経済人が複数いることは選挙中に既に明らかになっているし、資金面の援助もあった模様。(SNSでドトール石丸というあだ名がついてしまった)
なんというかその、候補者本人と直結していたかはとにもかくも。こーいう結果を出したかった人達はいただろうと考えても不思議はない。
そういう人達にしてみれば、石丸氏の敗色濃厚と安野氏の伸び悩みがかぶったら…、全力で安野氏に振り向けても全く不思議じゃない。 上位争いは桁が違うし組織票も絡むので復旧困難だから、先を考えての挙動が起こって当然である。
「若い世代で押す」の青写真を持ってた人達の絶対死守ラインってのは、実は「安野氏の健闘」だったのかもしれない。
安野氏は、デジタル庁のデジタル関係制度改革検討会 デジタル法制ワーキンググループの構成員だったので、IT行政から結構近い場所にいる人だ。
選挙後の、晴れ舞台も用意されていたようだ。
なんというか「デジタル民主主義」とか「ブロードリスニング」のための社会実験として「都知事選」をつかってませんか?と言いたくなる部分もある。
石丸氏の黒歴史暴露の影響と、インフルエンサー変わり身
選挙戦中、石丸氏に関する情報は交錯した。
石丸氏の主張に「政治屋の排除」があったにも関わらず、大物財界人が支援していることが明らかになったり、かなり古くから政治の世界に首を突っ込んでいる歴戦の選挙プランナーが選対委員長を務めていたり…、
どうも言ってることとやってることが違う…というのが日に日に明らかになる。
ひまそらの追及以前から、石丸人気の問題を取材していた取材不足氏のレポート等も注目を浴びることが増えてくる。
石丸支持を表明していたインフルエンサーは結構多い。
古館伊知郎、田村淳、ひろゆき、東国原英夫、トカチョフ・サワ、TAKA、堀江貴文、メンタリストDaiGo
ところが、6月末頃になると、ちょっと様相が変わってくる
堀江貴文とひろゆきが、安野氏と緊急対談を組むなど、安野氏応援乗り換え始める。
上記のキャプチャは7/14に取得している。
表示数に着目すればわかるが…、アレレというくらい表示数が少ない。
SNSの運用はあまり得意でなかったようである。
選挙戦最終局面になると、ひろゆきの奥方の西村ゆか氏まで、謎の応援をしている。
選挙後の光と影
選挙後、テレビも含めて石丸氏批判が炸裂した。
石丸氏は、41歳の若さで2位165万票を獲得したわけで、落選したとはいえ、その善戦っぷりに注目が集まるのは当然なのでであるが、テレビでゲストとして出演したトーク等から、その語り口の問題点が露見してしまった。
独特な論法が「石丸構文」と呼ばれるに至り、笑いのネタにまでなってしまった…。まあ、もちろん石丸氏本人はそれに対しても言い訳をしているが、さらにそれが火に油を注ぐ結果になる…。
安芸高田市長時代の黒歴史も日に日に暴露が進んでいる。
3位の蓮舫氏もまた、選挙後はネガティブな方向で話題を振りまいている。
蓮舫応援団のやり方についての対応をスタートに、無責任ともいえる対応が批判の的となる。
蓮舫氏の敗因分析の論評に食って掛かるなど、20年選手の政治家としてはちょっと考えられない対応が続く。
その一方、安野氏に関しては、ヨイショ報道が相次いでいる。
「TVに1秒もでていないのに15万票集めた男」として売り出し開始といったところのように映る。
そつのない喋りではあるが「マスメディア批判」などは結構きついし、肝心のデジタル民主主義はそれほど良いものか?というとかなり疑問に感じる部分がある。
noteにも「チーム安野」のふりかえり記事が、続々アップされている。
この記事に関してはSNSでちょっとした批判があり、その直後に該当の文言が削除されるといったことがあった。
こういう書き換えは信用問題に繋がると思ったので説明をもとめてみたが、19日現在、返答はないようだ。
セルフブランディングに余念がないといった感じで、ちょっとWoke感が強く、前向きすぎて私などは引いてしまう。
『「無名のエンジニアが「デジタル民主主義」を引っ提げて立候補、ネットでバズって、15万票を獲得』といったきれいな物語にしたいようである。
だが、そこにも疑問がわいてしまう。
2024年6月20日の安野氏の投稿…確かにバズってはいる。(但し取得は7月20日)だが、ここからマニフェストに到達した者は、それほど多くはないような気がする。
「SNSでバズった⇒マニフェストが閲覧された」という路線はかなり無理があるような気がする。
比較のために選挙戦中、バズりつづけた「ひまそらあかね」の公示日のポストを見てみよう。
「ネットで選挙運動」の比較対象として、暇空茜は機能し続けている。
再び全体図を並べてみる。
もしひまそらあかねが出馬しなかったら
石丸・安野氏の健闘いかんでは、石丸伸二氏が当選していた可能性もある。
もし、蓮舫・暇空茜が出馬しなかったら
上図の場合、共産・立憲支持層の票が一気に若手に流れるといったことは起っていた可能性が高い。
実は、蓮舫陣営は、SNS運用は結構うまいのである。
蓮舫勢力がなくなると、圧倒的に石丸・安野両陣営がSNSに「実績」を作りやすくなる。
実際の構図
ひまそらあかねが出馬したことによって、SNS上で起こった可能性の高いものを上げてみよう。
暇空含む若手3人の候補者のダイレクト比較が可能になり、「SNS活用・動画活用」において噓がつきにくくなった。
清水国明の若手推しによる、高齢者の若手への誘導が起こりにくくなった可能性はある。
SNS上では、ひまそらvs石丸、ひまそらvsフェミ勢(蓮舫支持者)の選挙戦前の構図が目立つことになった。
石丸陣営の「対蓮舫」の動きが活発化した可能性がある。
石丸の支援背景、黒歴史暴露が加速した。
ひまそらあかねがバズり続けることによって、マスメディアの信頼度が下がった。
このくらいは言ってもさしつかえないだろう。
「影響」を読み解く際にまぜこぜになりやすいもの
SNSにこの図をアップしたら、案の定「暇空は11万票でしかないので、影響力であるはずがない」といった意見も出てきている。
まあ、ものすごくまぜこぜになりやすい部分なので説明しておこう。
選挙期間中「ひまそらあかね」のやっていたことは…
「ひまそらあかね」の実集票を伸ばす。
石丸陣営の噓を暴くor暴く動きを加速する(⇒運動に牽制を掛ける)
他陣営に実質牽制的な影響を与える。
政治・都知事選に関するメディア報道・インフルエンサーの偏向と、その裏を暴く
東京都火葬場料金問題の調査をする。
(勝手応援団(全く組織化されていない)も動いていたが、ほぼ1に集中したように思う)
1の結果が11万票にとどまったことと、2~4における影響の関連性は薄い。
1.にまず必要だったのは、ひまそらの名前と、氏の実績「公金チューチュー追及」「文化キャンセルと闘ってきた」のリンクと認知度アップが必要であるが、既存メディアに遮断された状態だと、1と2~4は連動しにくくなる。
「そんな影響あるわけない」の人に、ヒント上げておこう。
Web検索→SNS検索は自然な流れなので、Xの検索結果がどう表示されるかは馬鹿にできない。
「候補者名 until:2024-06-25 since:2024-06-24」 あたりでXを検索して見るといろいろわかるだろう。
(だいたい既存メディアの初報が出そろった頃ということで上記の日時を設定した)
タイムラインに流れてきているものは、すでに「自分の嗜好での選択」というフィルターが掛かっているモノなので、選挙のようなケースでは「検索結果」にどういうものが表示されるかのほうが重要だろう。
終わりに
「ひまそらあかね」は、選挙戦をかなり攪乱したであろう。
選挙終了後になっても、あちらこちらで歴史修正まがいのイメージ操作が飛び交っている状態なので、ひとつ記録として見方自体を残しておくことにした。
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